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3章
25話:携行缶から召し上がれ
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「それにしても領主様、領主様の農業計画ですが……どう考えてもこんなにシビアな農作業をする必要はありません! 今月領主様おひとりでどれだけの田畑を開墾するご予定ですか! もっとご自身のお身体をいたわってください! いまだって頭部を爆発されてしまったのですから、どうかご安静になさってください!」
「そうですよ領主様! 我々にお任せください! それにトウガラシ、ゴマに関してはまだ種すら手元にないじゃないですか! そんなものこの新世界でどうやって手にされるおつもりですか! 農業計画見直しにご一考の余地があるかと存じます!」
顔面が飛び散ってしまったヤクルが着座するや否や、シビアな農作業へ意見するクロノスと、農業計画見直しを進言するアカン。二人の男はとても大きな響く声で話す。掘っ立て小屋の薄い建材が今日は一層揺れていた。
「そんなこといってもなぁ……頭部は爆発しても部品を集めれば元に戻るし……開墾については俺ひとりでもできることだから、みんなは気にしないで。自分のできることだけしてくれれば構わないよ」
ふたりの教団員は当たり前のように話すヤクルの顔を見て驚いた。いや、本質的には驚くべき内容なのだが、これまで一年間田畑を開墾してきたヤクルからすれば既に当たり前のことなのであった。ちなみにまだ頭部は復元できていないので、顔があった場所にはリルが以前に描いた似顔絵が貼られている。
「ひ、ひとりで……? ま、まさかひとりで開拓されるおつもりですか! できるはずがない!」
「そうですよ……どうすればあと一週間で二十キロ平方もの種まきが終わるというんですか! そんなもの、ヘミュエル様のご加護があってもできません! 絶対に無理です!」
「いやそういうけど……さっきもう終わったし、別に大丈夫だよ。トウガラシもゴマもさっき植えたたから……」
ヤクルは、固有スキルでその手に集めたトウガラシとゴマの種を二人へ見せた。
「そ、そんな馬鹿な……ま、まさか本当に!? そういえばたしかに……さっき我々が農作業していた先が綺麗に整地されていたような……一日足らずで二十キロ平方の種まきを……!? 領主様が行う農作業の要領は機械族のそれと同等だとでもいうのですか……!」
「一体どこからその種を……! はっ、まさか先ほど領主様が手に持っていた袋の中身は……! こ、こんなにもたくさんの種が……領主様は農業をしながら貿易までされているとでもいうのですか……!」
クロノスとアカンは驚きを隠せない様子でヤクルに詰め寄った。
ヤクルは、自身がルルカの手によって人体改造されたことと、ゴミ拾いの固有スキルを持っていることを話した。
「な、なるほど。ルルカ様によって人体改造を……道理で携行缶からぐびぐびとなにか飲まれているはずです……それでは領主様は人間でありながら、ゴーレム同等、またはそれ以上の力を持ち、なおかつ爆発の影響で亡くなった世界中の人たちの遺産を、自由に呼び寄せられるということですか……」
「……まるでこの世界で生き抜くためのそれではありませんか……しかしレアスキルとはいえ、爆発前の世界では下級スキルとみなされていたゴミ拾いが、このように役に立つとは……」
関心する二人であるが、ルルカはそれを遮るように手を叩き、自分に注目を集めた。
『――はいはい農業とヤクルの話はそこまで。今日はリルちゃんも呼んだんだから彼女も交えて話そうね』
「そうですよ領主様! 我々にお任せください! それにトウガラシ、ゴマに関してはまだ種すら手元にないじゃないですか! そんなものこの新世界でどうやって手にされるおつもりですか! 農業計画見直しにご一考の余地があるかと存じます!」
顔面が飛び散ってしまったヤクルが着座するや否や、シビアな農作業へ意見するクロノスと、農業計画見直しを進言するアカン。二人の男はとても大きな響く声で話す。掘っ立て小屋の薄い建材が今日は一層揺れていた。
「そんなこといってもなぁ……頭部は爆発しても部品を集めれば元に戻るし……開墾については俺ひとりでもできることだから、みんなは気にしないで。自分のできることだけしてくれれば構わないよ」
ふたりの教団員は当たり前のように話すヤクルの顔を見て驚いた。いや、本質的には驚くべき内容なのだが、これまで一年間田畑を開墾してきたヤクルからすれば既に当たり前のことなのであった。ちなみにまだ頭部は復元できていないので、顔があった場所にはリルが以前に描いた似顔絵が貼られている。
「ひ、ひとりで……? ま、まさかひとりで開拓されるおつもりですか! できるはずがない!」
「そうですよ……どうすればあと一週間で二十キロ平方もの種まきが終わるというんですか! そんなもの、ヘミュエル様のご加護があってもできません! 絶対に無理です!」
「いやそういうけど……さっきもう終わったし、別に大丈夫だよ。トウガラシもゴマもさっき植えたたから……」
ヤクルは、固有スキルでその手に集めたトウガラシとゴマの種を二人へ見せた。
「そ、そんな馬鹿な……ま、まさか本当に!? そういえばたしかに……さっき我々が農作業していた先が綺麗に整地されていたような……一日足らずで二十キロ平方の種まきを……!? 領主様が行う農作業の要領は機械族のそれと同等だとでもいうのですか……!」
「一体どこからその種を……! はっ、まさか先ほど領主様が手に持っていた袋の中身は……! こ、こんなにもたくさんの種が……領主様は農業をしながら貿易までされているとでもいうのですか……!」
クロノスとアカンは驚きを隠せない様子でヤクルに詰め寄った。
ヤクルは、自身がルルカの手によって人体改造されたことと、ゴミ拾いの固有スキルを持っていることを話した。
「な、なるほど。ルルカ様によって人体改造を……道理で携行缶からぐびぐびとなにか飲まれているはずです……それでは領主様は人間でありながら、ゴーレム同等、またはそれ以上の力を持ち、なおかつ爆発の影響で亡くなった世界中の人たちの遺産を、自由に呼び寄せられるということですか……」
「……まるでこの世界で生き抜くためのそれではありませんか……しかしレアスキルとはいえ、爆発前の世界では下級スキルとみなされていたゴミ拾いが、このように役に立つとは……」
関心する二人であるが、ルルカはそれを遮るように手を叩き、自分に注目を集めた。
『――はいはい農業とヤクルの話はそこまで。今日はリルちゃんも呼んだんだから彼女も交えて話そうね』
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