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3章
24話:食卓大爆発自爆御礼
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「それにしてもヤクル様は大したものです。我々ヘミュエル教団をあっという間に懐柔し、一週間で全員分の家を建て、二週間でみなに仕事を分け与えてくれた……ワシらはヘミュエル四世様に従えておりましたが、領主様にはそれを上回るカリスマと神通力を感じまする……」
「神官様がみなさんに好かれていて、みなさんいうことを聞いてくれたからだよ。俺はルルカとこうした方がいいってアドバイスしたのと、掘っ立て小屋を建てただけで、あとの成果はみんなが頑張ったおかげさ」
「うぅぅ、ありがたき幸せです……小麦の絆ですぞ……!」
ヘミュエル教団がヤクルたちの畑に来て二ヶ月、ヤクルの領地は更なる繁栄を遂げていた。教団員が育てていた植物の種が農地に植わり、これまで以上の食材のレパートリーを携えるようになった。
種まき、水やり、収穫はまだヤクルに依存しているが、教団たちは野菜の加工や堆肥の製造に大きく寄与している。ヤクルは頭に植わった思考汚染の話などすっかり忘れて、日々の作業に没頭していた。
『ま、半分以上アタシのおかげだけどね! はっはっはっはっは! まぁでも、カルト的な信心深さで知られたヘミュエル教団が、ここまで人懐っこくなっちゃうとは驚いたよ』
「ルルカ様の仰るように、世間にカルトと呼ばれた時代も確かにありましたが、先の爆発をきっかけに、亡き教組様のお言葉に矛盾を覚える者も多かったのです。そして教祖様が死んで以来みなの信仰心は失墜してしまったのですが、コミューンの絆は切っても切れないものがありましてな。ズルズルと一緒に……」
『人間ってのはなにかに頼らないと生きていけないんだね』
「はい、人間は弱いのです。そして自らの弱さと知ったとき、自分を守りたくなる……そこに付け込んだヘミュエル四世様は、心の守り方を教える建前でワシらをカルトの世界に導きました。少なからずなにかにすがりたいと思ってしまうと、人は盲目になってしまうのでしょうな」
『まぁでも教団の教えは、哲学や道徳の面で学びに繋がったのかもしれないね。みんな勤勉で真面目に働いてくれるし……それにヘミュエル教団が法に触れるようなことに手を出してなくてよかったよ。そんなことがあればヤクルたちに会わせるのは危ないと思ってたんだ』
「えぇ、そうでもなければとてもみなさんの人望を得ることはできなかったですな……カルトではありましたが、今更ながら、教組様にも感謝できることがあったかもしれませぬ」
神官はそうやって遠慮なしに自分が所属していた教団のことをカルトだと言い切ってみせた。ルルカは表層的には人当たりよく振る舞っていたものの、ヘミュエル教団を受け入れることをよしとしたことに責任感を抱いており、彼らの愚直さを垣間見たこのころ、ようやく彼らを認めることができたものであった。
ヤクルと神官は、トタンでできた掘っ立て小屋の扉を開いた。
「遅ぇぞヤクル。ジラジラ娘。呼び出した癖に遅刻するとはどういう了見だ」
『ジ、ジ、ジ、ジラジラしとらんわ大筒!!! 解像度MAXなの!!! これ解像度MAX!!! ほんと一言多いな大筒!!!』
掘っ立て小屋の食卓テーブルには、ナナジマと和久井姉妹、のゐる、ふたりの教団員、そしてヤクルたちの野菜を盗んだ張本人の少女が座っていた。
「つかヤクルお前……どんな恰好してんだよ! 教団員かお前は!」
「えへへ、教団縫製部のみなさんに縫って貰った神官服です。みなさんとても器用なんですよ! やっと毛だまだらけの襟紐シャツを卒業しましたよ。えへへ」
ヤクルはその両手に持っていた麻袋を食卓の隅にどっかと置いた。彼の民族衣装のような装いは神官が着る質素な祭服に比べてやけにハイカラであった。
「まぁいい。で? 今日はなんですかジラジラ娘さんと、ハイカラヤクルさん」
『変なコンビにしないでよ。えと、気を取り直して……みんなに紹介するね。いつもの神官様と教団員代表のクロノス、アカン。それに加えて、この子は教団最年少で小麦泥棒のリルちゃんです。今日はみんなを交えてお話したいと思うよ』
「はい。リルです……あの……はい……この間はどろぼうしてすいませんでした……」
ヤクルの眼前に十歳ほどの幼女が座っていた。彼女は先日ヘミュエル教団が初めてこの小屋を訪れた際、神官の裾を引っ張っていた子どもであった。
「よ、幼女だあああああああああああああああああああああああああどわああああああああああああああああああああ!!!」
ヤクルは発言した瞬間、頭部が爆発しその場に倒れた。食卓はその爆発に納得した。
「神官様がみなさんに好かれていて、みなさんいうことを聞いてくれたからだよ。俺はルルカとこうした方がいいってアドバイスしたのと、掘っ立て小屋を建てただけで、あとの成果はみんなが頑張ったおかげさ」
「うぅぅ、ありがたき幸せです……小麦の絆ですぞ……!」
ヘミュエル教団がヤクルたちの畑に来て二ヶ月、ヤクルの領地は更なる繁栄を遂げていた。教団員が育てていた植物の種が農地に植わり、これまで以上の食材のレパートリーを携えるようになった。
種まき、水やり、収穫はまだヤクルに依存しているが、教団たちは野菜の加工や堆肥の製造に大きく寄与している。ヤクルは頭に植わった思考汚染の話などすっかり忘れて、日々の作業に没頭していた。
『ま、半分以上アタシのおかげだけどね! はっはっはっはっは! まぁでも、カルト的な信心深さで知られたヘミュエル教団が、ここまで人懐っこくなっちゃうとは驚いたよ』
「ルルカ様の仰るように、世間にカルトと呼ばれた時代も確かにありましたが、先の爆発をきっかけに、亡き教組様のお言葉に矛盾を覚える者も多かったのです。そして教祖様が死んで以来みなの信仰心は失墜してしまったのですが、コミューンの絆は切っても切れないものがありましてな。ズルズルと一緒に……」
『人間ってのはなにかに頼らないと生きていけないんだね』
「はい、人間は弱いのです。そして自らの弱さと知ったとき、自分を守りたくなる……そこに付け込んだヘミュエル四世様は、心の守り方を教える建前でワシらをカルトの世界に導きました。少なからずなにかにすがりたいと思ってしまうと、人は盲目になってしまうのでしょうな」
『まぁでも教団の教えは、哲学や道徳の面で学びに繋がったのかもしれないね。みんな勤勉で真面目に働いてくれるし……それにヘミュエル教団が法に触れるようなことに手を出してなくてよかったよ。そんなことがあればヤクルたちに会わせるのは危ないと思ってたんだ』
「えぇ、そうでもなければとてもみなさんの人望を得ることはできなかったですな……カルトではありましたが、今更ながら、教組様にも感謝できることがあったかもしれませぬ」
神官はそうやって遠慮なしに自分が所属していた教団のことをカルトだと言い切ってみせた。ルルカは表層的には人当たりよく振る舞っていたものの、ヘミュエル教団を受け入れることをよしとしたことに責任感を抱いており、彼らの愚直さを垣間見たこのころ、ようやく彼らを認めることができたものであった。
ヤクルと神官は、トタンでできた掘っ立て小屋の扉を開いた。
「遅ぇぞヤクル。ジラジラ娘。呼び出した癖に遅刻するとはどういう了見だ」
『ジ、ジ、ジ、ジラジラしとらんわ大筒!!! 解像度MAXなの!!! これ解像度MAX!!! ほんと一言多いな大筒!!!』
掘っ立て小屋の食卓テーブルには、ナナジマと和久井姉妹、のゐる、ふたりの教団員、そしてヤクルたちの野菜を盗んだ張本人の少女が座っていた。
「つかヤクルお前……どんな恰好してんだよ! 教団員かお前は!」
「えへへ、教団縫製部のみなさんに縫って貰った神官服です。みなさんとても器用なんですよ! やっと毛だまだらけの襟紐シャツを卒業しましたよ。えへへ」
ヤクルはその両手に持っていた麻袋を食卓の隅にどっかと置いた。彼の民族衣装のような装いは神官が着る質素な祭服に比べてやけにハイカラであった。
「まぁいい。で? 今日はなんですかジラジラ娘さんと、ハイカラヤクルさん」
『変なコンビにしないでよ。えと、気を取り直して……みんなに紹介するね。いつもの神官様と教団員代表のクロノス、アカン。それに加えて、この子は教団最年少で小麦泥棒のリルちゃんです。今日はみんなを交えてお話したいと思うよ』
「はい。リルです……あの……はい……この間はどろぼうしてすいませんでした……」
ヤクルの眼前に十歳ほどの幼女が座っていた。彼女は先日ヘミュエル教団が初めてこの小屋を訪れた際、神官の裾を引っ張っていた子どもであった。
「よ、幼女だあああああああああああああああああああああああああどわああああああああああああああああああああ!!!」
ヤクルは発言した瞬間、頭部が爆発しその場に倒れた。食卓はその爆発に納得した。
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