19 / 82
2章
19話:沸点超過
しおりを挟む
特段ヤクルは現状をただ驚くだけで過ごしていたが、ルルカがこうして敵意を剝き出しにするのには訳があった。
それは先ほどの殺すと言う発言。単なる罵倒のひとつであったかもしれないが、これまで自身がやむなく殺しをしてきたことを彼女はコンプレックスとして捉えていた。
そして、この男は争いを望まない。
ルルカはヤクルの信念へ深い共感と尊敬の念を抱いており、不必要な殺生へ強い憤りがあった。
彼女は本気でヤクルに救われていたのだ。
だからこそ彼女もまたヤクルに導かれ、強い決意を抱く。
『アタシは軽はずみに殺すとか言うヤツは許さないんだ!!! そう決めたんだ!!!』
「え、ルルカ、俺殺さないの!!? ってことはやっぱりビーム出ないの!!?」
『いやヤクル……ビームは出るんだ!!!』
「じゃあやっぱり殺すの!!? 俺殺したくないんだけど!!!」
『あーもういいとこなのにめっちゃ説明させようとしてくる!!!』
ルルカが操る砲台の輝きは変わっていなかった。
とはいえエネルギーは集っており、世界大戦で培ってきたその戦績と最強を名乗る由縁をこの新世界に現わそうとしていた。
いまのルルカはこれまでのルルカとは明らかに違う。これまで人を殺すことができると評価され、躊躇いなくそれを実行してきた彼女だが、いまヤクルに魅せられ、変わろうとしている。
だからこそ「殺す」などと軽口を叩く相手が許せなかった。先ほどのヤクルに報いる意味でも、ルルカはどうしてもこの男を殺さずになんとかしてみせたかった。
「うるせぇなぁ……人間じゃないんだから、人間が必要とする食糧くらいさっさと寄越せよ!」
大筒を携えるナナジマが言う台詞に、ルルカはついに爆発した。
『うるせぇ!!! 自分の食い物くらい自分でなんとかしろ!!!』
カッ!
瞬間、ヤクルの砲台が放つ光で、すべての風景が白く光った。
それは、先ほどヤクルたちが飛行船のなかから見ていた爆発を彷彿とさせるほど、巨大な一撃だった。
光はおよそ彼らが目で追うことができないほどの速さと規模を抱いて真っすぐに伸び、地平線の彼方まで飛んだ。
まるでモーゼの海割りかのように、人工物たちは一列に蹂躙された。
瓦礫の工業地帯は、あまりの熱量によって、分解され、整地されていった。
……やがて白い光が落ち着いたころ、その場にいた人たちは、その威力がもたらした結果を目にすることとなった。
光は地面を水平に整地し、瓦礫にまみれて見えなかった地面を剥き出しにさせていた。
光が作ったのは、大きな大きな畑であった。
『耕せぇえええええええええええええええええええっ!!!』
それは先ほどの殺すと言う発言。単なる罵倒のひとつであったかもしれないが、これまで自身がやむなく殺しをしてきたことを彼女はコンプレックスとして捉えていた。
そして、この男は争いを望まない。
ルルカはヤクルの信念へ深い共感と尊敬の念を抱いており、不必要な殺生へ強い憤りがあった。
彼女は本気でヤクルに救われていたのだ。
だからこそ彼女もまたヤクルに導かれ、強い決意を抱く。
『アタシは軽はずみに殺すとか言うヤツは許さないんだ!!! そう決めたんだ!!!』
「え、ルルカ、俺殺さないの!!? ってことはやっぱりビーム出ないの!!?」
『いやヤクル……ビームは出るんだ!!!』
「じゃあやっぱり殺すの!!? 俺殺したくないんだけど!!!」
『あーもういいとこなのにめっちゃ説明させようとしてくる!!!』
ルルカが操る砲台の輝きは変わっていなかった。
とはいえエネルギーは集っており、世界大戦で培ってきたその戦績と最強を名乗る由縁をこの新世界に現わそうとしていた。
いまのルルカはこれまでのルルカとは明らかに違う。これまで人を殺すことができると評価され、躊躇いなくそれを実行してきた彼女だが、いまヤクルに魅せられ、変わろうとしている。
だからこそ「殺す」などと軽口を叩く相手が許せなかった。先ほどのヤクルに報いる意味でも、ルルカはどうしてもこの男を殺さずになんとかしてみせたかった。
「うるせぇなぁ……人間じゃないんだから、人間が必要とする食糧くらいさっさと寄越せよ!」
大筒を携えるナナジマが言う台詞に、ルルカはついに爆発した。
『うるせぇ!!! 自分の食い物くらい自分でなんとかしろ!!!』
カッ!
瞬間、ヤクルの砲台が放つ光で、すべての風景が白く光った。
それは、先ほどヤクルたちが飛行船のなかから見ていた爆発を彷彿とさせるほど、巨大な一撃だった。
光はおよそ彼らが目で追うことができないほどの速さと規模を抱いて真っすぐに伸び、地平線の彼方まで飛んだ。
まるでモーゼの海割りかのように、人工物たちは一列に蹂躙された。
瓦礫の工業地帯は、あまりの熱量によって、分解され、整地されていった。
……やがて白い光が落ち着いたころ、その場にいた人たちは、その威力がもたらした結果を目にすることとなった。
光は地面を水平に整地し、瓦礫にまみれて見えなかった地面を剥き出しにさせていた。
光が作ったのは、大きな大きな畑であった。
『耕せぇえええええええええええええええええええっ!!!』
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
人生フリーフォールの僕が、スキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました
THE TAKE
ファンタジー
落ちて落ちて落ちてばかりな人生を過ごしてきた高校生の僕【大楽 歌(オオラク ウタ)】は、諦めずコツコツと努力に努力を積み重ね、ついに初めての成功を掴み取った。……だったのに、橋から落ちて流されて、気付けば知らない世界の空から落ちてました。
神から与えられしスキル【大落下】を駆使し、落ちっぱなしだった僕の人生を変えるため、そしてかけがえのない人たちを守るため、また一から人生をやり直します!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる