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2章
18話:そのビームはポリシーに違反するため使用できません
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「お、お前! 飛行船で馬鹿騒ぎしてたヤツだろ! 食糧持ってたら全部よこせ! ってかなんで大筒食らって無傷なんだよ!」
「あ、あなたは飛行船でくちばしマスクロボに詰め寄っていた作家の人! あー食糧ですか! 食糧がなくなったら大変ですからね! なにも食べてないとカリカリしますし、新世界を生き抜くためには食糧ですよね! その分俺は人糞燃料でも大丈夫なんでご飯食べ終わったら呼んでください!」
ひとり慌てふためくナナジマ相手にヤクルは冷静であった。ルルカはさらに冷静であった。
『人糞補給を煽るな』
のゐるがヤクルに説明する。
「そ、その方たちは食糧強盗です! ヤクルさんどうにかしてください……っ!」
「食糧強盗!? すいませんあげられるものなにもありません! のゐる先生の靴底を一緒に舐めましょう! それでどうか!」
「ヤクルさん気持ち悪いです! というかお腹の足しにもなりませんよ!」
靴底を舐めたいというのは単なるヤクルの願望であるが、当然そのようなことがなにかの役に立つはずもなく、ただナナジマを怒らせるだけの結果となった。
「なんだお前飛行船のなかでも手垢食べたいとか、訳のわからねぇことデカい声で喋りやがって意味がわからんぞ……というか、食い物があるのはわかってんだ! とっととよこせ!」
大きな黒い鼻でスンスンと香りを吸い込むナナジマは、食糧の匂いを嗅ぎ付けて来たようである。確かにヤクルの固有スキルはゴミとなっていた食糧を大量に呼び寄せていた。しかしヤクルはどうすればいいのかわからず、余計にナナジマを怒らせている。そのようななか、ルルカだけが正しく対処する手立てを考えていた。
『なんだか相手がおかしいことこっちがおかしいように聞こえるなぁ……食糧余ってるんだからあげちゃえばいいのに……』
「な、なんだお前は……ツッコミ要員か? やけにジラジラしてるメイドだな。馬鹿っぽいし」
『あ……ッ、アタシは天才妖精ルルカ様だ! アンタが大筒ぶっ放すからジラジラしてるんでしょうが! アタシの解像度が悪いんじゃない! アタシは悪くない! ってかいう見てわかんない!? すごいキラキラしてないアタシ!? ジラジラじゃなくてキラキラしてない!? 目ェ悪いの!? ちゃんと見て! ほら! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!』
クリスタルが映し出すルルカのホログラムは大筒が巻き上げた粉塵によって乱れていたが、威勢のよさは失われていなかった。
しかしルルカは先ほどヤクルに懐柔されたこともあり、あまりに威勢よくなり過ぎてしまったと反省したのか語気を改める。
『……いけないいけない。天才と名乗ったからには知的なところを見せなければ……ふ、ふん。この天才妖精をコケにするとはいい度胸だ! しかしここは穏便に話し合いといこうじゃないか! どうだアタシは! すぐに暴力に訴えない知的な美少女だろう! はっはっはっはっは!』
「無理あるだろ」
ルルカが話し合いを提案するが男のツッコミが冴えわたった。既にルルカは穏便には済まないほど暴言を吐いていた。
「要はそのクリスタルが実体ってことだろ? 巻き添え喰いたくねぇなら下がってろ。さもないとお前も大筒の巻き添えにしてぶっ殺すぞ」
『……ん? いまなんていった?』
「ぶっ殺すぞ」
『ん?』
「ぶっ殺すぞ」
『あ?』
「ぶっ! こ! ろ! す! ぞ!!!」
『うぅううううううううるせぇ聞こえとるわ!!! 人に殺すとか言っちゃいけないんじゃこんのチクチク言葉吐きのクソオオカミが!!! 人が我慢しようとしてるところにブッ込んで来やがってヤクルの代わりにテメェがそのギザギザの歯で自分の舌も一緒にチクチク噛み切りながら人糞喰っとけ美味そうにィ!!!』
語気を改めてからまだ三十秒も経っていないがルルカは発狂した。
怒りのキャパシティが限界に達し、ブチっと音が聞こえるほど激怒した。
「な、なんだ急にでけぇ声出して……!」
『……アタシはもう誰も殺したくないんだ……っていうかアタシは殺したいと思って殺したことはないんだ! いつも命じられるまま……そんなアタシにぶっ殺すだと……? それもただ、私欲のために……? ふざけんな! お前はアタシの信念に触れた! 許さん!ヤクル! ビームだ!!!』
ヤクルはルルカの合図にあわせて変形した。
「お、お、お、お、俺すげええええええええ!!? のゐる先生見て!!! ほら!!! すごいこれ!!!」
ヤクルの右腕がカラカラと音を鳴らしながらトリオの方へ向き縦に開いた。内部のエネルギー砲台が甲高い音と共に光を集める。
「ヤ、ヤクルさんが変形した!!? ルルカさん! ヤクルさん壊れました!!! 大変です!!!」
『のゐるちゃんアタシがやってんの!!! 壊れとらんわ!!! 出るんだわビームが!!! わかって!!?』
「えっ、ビーム!? あっ、ルルカさんすごい!!! ほんとに光がちょっとだけ溜まってます!!! 薄っ!!! ぜんぜん集まらない!!! たぶんこれ壊れてますよ!!! ルルカさんこれ壊れてます!!! ルルカさんヤクルさん壊れてます!!!」
『いやだからほんとにビーム出るんだって!!! 出るの!!! 薄いとかいうな!!!』
消えかけのランタン程度の光がヤクルの砲台へと集まっていった。
「あ、あなたは飛行船でくちばしマスクロボに詰め寄っていた作家の人! あー食糧ですか! 食糧がなくなったら大変ですからね! なにも食べてないとカリカリしますし、新世界を生き抜くためには食糧ですよね! その分俺は人糞燃料でも大丈夫なんでご飯食べ終わったら呼んでください!」
ひとり慌てふためくナナジマ相手にヤクルは冷静であった。ルルカはさらに冷静であった。
『人糞補給を煽るな』
のゐるがヤクルに説明する。
「そ、その方たちは食糧強盗です! ヤクルさんどうにかしてください……っ!」
「食糧強盗!? すいませんあげられるものなにもありません! のゐる先生の靴底を一緒に舐めましょう! それでどうか!」
「ヤクルさん気持ち悪いです! というかお腹の足しにもなりませんよ!」
靴底を舐めたいというのは単なるヤクルの願望であるが、当然そのようなことがなにかの役に立つはずもなく、ただナナジマを怒らせるだけの結果となった。
「なんだお前飛行船のなかでも手垢食べたいとか、訳のわからねぇことデカい声で喋りやがって意味がわからんぞ……というか、食い物があるのはわかってんだ! とっととよこせ!」
大きな黒い鼻でスンスンと香りを吸い込むナナジマは、食糧の匂いを嗅ぎ付けて来たようである。確かにヤクルの固有スキルはゴミとなっていた食糧を大量に呼び寄せていた。しかしヤクルはどうすればいいのかわからず、余計にナナジマを怒らせている。そのようななか、ルルカだけが正しく対処する手立てを考えていた。
『なんだか相手がおかしいことこっちがおかしいように聞こえるなぁ……食糧余ってるんだからあげちゃえばいいのに……』
「な、なんだお前は……ツッコミ要員か? やけにジラジラしてるメイドだな。馬鹿っぽいし」
『あ……ッ、アタシは天才妖精ルルカ様だ! アンタが大筒ぶっ放すからジラジラしてるんでしょうが! アタシの解像度が悪いんじゃない! アタシは悪くない! ってかいう見てわかんない!? すごいキラキラしてないアタシ!? ジラジラじゃなくてキラキラしてない!? 目ェ悪いの!? ちゃんと見て! ほら! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!』
クリスタルが映し出すルルカのホログラムは大筒が巻き上げた粉塵によって乱れていたが、威勢のよさは失われていなかった。
しかしルルカは先ほどヤクルに懐柔されたこともあり、あまりに威勢よくなり過ぎてしまったと反省したのか語気を改める。
『……いけないいけない。天才と名乗ったからには知的なところを見せなければ……ふ、ふん。この天才妖精をコケにするとはいい度胸だ! しかしここは穏便に話し合いといこうじゃないか! どうだアタシは! すぐに暴力に訴えない知的な美少女だろう! はっはっはっはっは!』
「無理あるだろ」
ルルカが話し合いを提案するが男のツッコミが冴えわたった。既にルルカは穏便には済まないほど暴言を吐いていた。
「要はそのクリスタルが実体ってことだろ? 巻き添え喰いたくねぇなら下がってろ。さもないとお前も大筒の巻き添えにしてぶっ殺すぞ」
『……ん? いまなんていった?』
「ぶっ殺すぞ」
『ん?』
「ぶっ殺すぞ」
『あ?』
「ぶっ! こ! ろ! す! ぞ!!!」
『うぅううううううううるせぇ聞こえとるわ!!! 人に殺すとか言っちゃいけないんじゃこんのチクチク言葉吐きのクソオオカミが!!! 人が我慢しようとしてるところにブッ込んで来やがってヤクルの代わりにテメェがそのギザギザの歯で自分の舌も一緒にチクチク噛み切りながら人糞喰っとけ美味そうにィ!!!』
語気を改めてからまだ三十秒も経っていないがルルカは発狂した。
怒りのキャパシティが限界に達し、ブチっと音が聞こえるほど激怒した。
「な、なんだ急にでけぇ声出して……!」
『……アタシはもう誰も殺したくないんだ……っていうかアタシは殺したいと思って殺したことはないんだ! いつも命じられるまま……そんなアタシにぶっ殺すだと……? それもただ、私欲のために……? ふざけんな! お前はアタシの信念に触れた! 許さん!ヤクル! ビームだ!!!』
ヤクルはルルカの合図にあわせて変形した。
「お、お、お、お、俺すげええええええええ!!? のゐる先生見て!!! ほら!!! すごいこれ!!!」
ヤクルの右腕がカラカラと音を鳴らしながらトリオの方へ向き縦に開いた。内部のエネルギー砲台が甲高い音と共に光を集める。
「ヤ、ヤクルさんが変形した!!? ルルカさん! ヤクルさん壊れました!!! 大変です!!!」
『のゐるちゃんアタシがやってんの!!! 壊れとらんわ!!! 出るんだわビームが!!! わかって!!?』
「えっ、ビーム!? あっ、ルルカさんすごい!!! ほんとに光がちょっとだけ溜まってます!!! 薄っ!!! ぜんぜん集まらない!!! たぶんこれ壊れてますよ!!! ルルカさんこれ壊れてます!!! ルルカさんヤクルさん壊れてます!!!」
『いやだからほんとにビーム出るんだって!!! 出るの!!! 薄いとかいうな!!!』
消えかけのランタン程度の光がヤクルの砲台へと集まっていった。
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