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2章
14話:魔王の恨み
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それから、ルルカはクリスタルをカビ臭い研究所に隠し、ひきこもっていた。
ひきこもって、ひきこもって、身動きもせずに血に汚れた自らの手をじっと見ていた。
ひきこもって、ひきこもって、その虚しさに浸っていた。
……そうしてひきこもり続け、先ほどヤクルにクリスタルを起動されるまで、暗い暗い闇のなかにいたのだった。
『……どうだ! 思い知ったか! これがお前たち人間がアタシに恨まれる理由だ!』
「じゃ、じゃあどうして俺をこんな目に遭わせるの……?」
暗転が晴れ、ヤクルはテーブルのうえで意識を取り戻した。まどろみに浸っている場合ではない。ヤクルは疑問をルルカにぶつけると、彼女は勢いよく返した。
『アタシは人間に復讐するんだ!!! アタシは人間にできないことをしてきた!!! これからも人間にはできないことをする!!! それをわからせるんだ!!!』
ルルカは、自分が人間に勝る能力を有し、人間にはできないことをしているのだと信じていた。それは偏に、彼女の製作者に報いたいという想いゆえだ。それだというのに人間は彼女へ母親を殺させた。ルルカは人間にしてやられたような気持ちを抱いていた。
ルルカは復讐心を抱いていた。特にヤクルはルルカに復讐されるようなことなどなにもしてはいないが、ルルカからすれば、自らの復讐心を誰かにぶつけずにはいられなかった。
『どうせアタシのことをまた利用にしに来たんでしょ! こっちはわかってるんだ!飛んで火にいる夏の虫だあ! はっはっはっは!』
「……ごっ、誤解だああああああああ!」
『うるさい! 今度はアタシが人間に利用された分だけ人間を利用してやるんだ! そして人間のアンタをアタシと同じ目に遭わせてやる! 世界を支配したいならくれてやる! 最後に割の良い方も悪い方もアタシがアンタから奪ってやるんだ! アタシを利用しようとした罰だ! アタシの責任を全部アンタに擦すりつけてやる! これからアンタを改造して、世界最強のゴーレム人間にしてやるよ!』
「そんな滅茶苦茶な世界最強……っ」
『いまラクにしてやるからなぁ……精々暴れまわるがいい! はっはっはっは!』
世界を侵略、滅亡に追いやるように改造された人間をルルカが倒すことで、妖精回路共々自らの人権復帰を果たす。それが彼女のシナリオであった。
……それを聞いたヤクルは、ルルカのことが怖かった。素直に恐怖した。抵抗できるものなら抵抗したいと思っていた。
ただ、同時に彼は「あぁ、だからか」と納得するような気持ちも覚えていた。
普通の捉え方であれば「こんな事態に飲み込まれてはならない」と反発するような気持ちを抱くものだろうが、このときのヤクルは異常なほど達観していて、まったくひるむことなく、寧ろ促すような口調で彼女に告げた。
「なんかさぁ、もういいよ……じゃあ俺諦めるよ。ごめん、暴れて悪かったよ」
ひきこもって、ひきこもって、身動きもせずに血に汚れた自らの手をじっと見ていた。
ひきこもって、ひきこもって、その虚しさに浸っていた。
……そうしてひきこもり続け、先ほどヤクルにクリスタルを起動されるまで、暗い暗い闇のなかにいたのだった。
『……どうだ! 思い知ったか! これがお前たち人間がアタシに恨まれる理由だ!』
「じゃ、じゃあどうして俺をこんな目に遭わせるの……?」
暗転が晴れ、ヤクルはテーブルのうえで意識を取り戻した。まどろみに浸っている場合ではない。ヤクルは疑問をルルカにぶつけると、彼女は勢いよく返した。
『アタシは人間に復讐するんだ!!! アタシは人間にできないことをしてきた!!! これからも人間にはできないことをする!!! それをわからせるんだ!!!』
ルルカは、自分が人間に勝る能力を有し、人間にはできないことをしているのだと信じていた。それは偏に、彼女の製作者に報いたいという想いゆえだ。それだというのに人間は彼女へ母親を殺させた。ルルカは人間にしてやられたような気持ちを抱いていた。
ルルカは復讐心を抱いていた。特にヤクルはルルカに復讐されるようなことなどなにもしてはいないが、ルルカからすれば、自らの復讐心を誰かにぶつけずにはいられなかった。
『どうせアタシのことをまた利用にしに来たんでしょ! こっちはわかってるんだ!飛んで火にいる夏の虫だあ! はっはっはっは!』
「……ごっ、誤解だああああああああ!」
『うるさい! 今度はアタシが人間に利用された分だけ人間を利用してやるんだ! そして人間のアンタをアタシと同じ目に遭わせてやる! 世界を支配したいならくれてやる! 最後に割の良い方も悪い方もアタシがアンタから奪ってやるんだ! アタシを利用しようとした罰だ! アタシの責任を全部アンタに擦すりつけてやる! これからアンタを改造して、世界最強のゴーレム人間にしてやるよ!』
「そんな滅茶苦茶な世界最強……っ」
『いまラクにしてやるからなぁ……精々暴れまわるがいい! はっはっはっは!』
世界を侵略、滅亡に追いやるように改造された人間をルルカが倒すことで、妖精回路共々自らの人権復帰を果たす。それが彼女のシナリオであった。
……それを聞いたヤクルは、ルルカのことが怖かった。素直に恐怖した。抵抗できるものなら抵抗したいと思っていた。
ただ、同時に彼は「あぁ、だからか」と納得するような気持ちも覚えていた。
普通の捉え方であれば「こんな事態に飲み込まれてはならない」と反発するような気持ちを抱くものだろうが、このときのヤクルは異常なほど達観していて、まったくひるむことなく、寧ろ促すような口調で彼女に告げた。
「なんかさぁ、もういいよ……じゃあ俺諦めるよ。ごめん、暴れて悪かったよ」
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