迷宮の星

４話

「やっと終わった…」

　疲れた顔で出て来た地球は、待たせている月を探そうと、普段月がうろついているところへ行こうとしたが、ふと、尋常でない様子の冥王星が目に入った。

　何も無い空間を睨んで、何かを探しているように見えるが、同時に当てもなくフラフラとさまよっているようにも見える。

「冥…？」

　名前を呼ぶと、振り返った。それを見、地球はハッと身を固くした。振り返った冥王星がほんの一瞬だけ見せた眼差し、それはうつろで、表情も生気が抜けており、何かを見ていながら何も見ていない、と思わせた。

「冥ー、おーい、めーいー」

　天王星の、冥王星を呼ぶ声が聞こえると、突然その目に光が宿ったかのように生気のある表情に戻った。

　天王星の呼ぶ方へ走っていく冥王星の背中を見送りながら、さっきのは気のせいだったのだろうか、と地球は考えた。

　いや、気のせいではなかったかもしれない。だが気のせいであって欲しい。そう考えながら天王星と海王星の双子とニコニコしながら会話している冥王星を見ていると、やはり気のせいだったのだと、思わせられた。

「どうかしたのですか？」

　いきなり後ろから聞こえてきた声に驚き、振り向くと、先ほどまでの地球と同じように天王星達の方を見ている月がいた。

「そんな風にいきなり出てくるのは辞めてって…」

　あまり力のない声でいうと、すっと額に手を当てられた。「熱はありませんね…」声に力が入っていなかったためか、心配されてしまったようだ。

　地球に異常がないことを確認すると、月はまた天王星達のいた方に目を向けた。３人は既にその姿を消していたが、月はそこから目を背けるつもりはないようで、睨んでいるかのようにも見える目で見ていた。

　「後でルミナスに聴きましょうか…」小声で月が言うのが聞こえた。なんで？とは聴かないことにした。このような理屈で説明できないことには地球より月の方が詳しい。その上負けず嫌いなところもある月がルミナスに聴くということは、地球が関わったところで何も変わらないだろう。

「帰りますよ」

　そういう月の声に頷くと、進み始めた後を追った。