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古本

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 ぼくは、しがない古本屋の書店員。
 販売よりも本の買取がなによりの楽しみだ。
 たまにレジ打ちを疎かにして店長に叱られることもしばしば――そんなことはどうでもいい。

「いらしゃいませ」店にやってきたお客様にあいさつした。「こちらはお売り頂ける本ですか?」
「よ、よろしくたのむ」ドスンと買取カウンターに黒いバックみっつが置かれた。

 こりゃかなりの冊数に違いない。
 ああ、楽しみだな!
 ぼくの胸が高鳴った。
 
「はい、かしこまりました。買取の査定に二十分少々かかりますがよろしいですか?」
「ああ、かまわんよ。店内で待つことにする」
「ありがとうございます」ぼくは深々とお辞儀をした。

 ぼくは知っている。
 ほんとうに価値ある貴重な本は、
 こうして色あせた表紙カバー、天、小口、地が日焼けして茶色になった
 古本に隠されていることを……

 
 
 
 

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