魔力を失ってしまった魔法使い

才門宝句

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老人とウニ

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　昼下がりの公園のベンチ。
　あたりはしんと静まり返っていた。
　腰をおろした老人はおいしそうにウニを食べていた。
　北海道産の瓶詰めのウニだ。
　スプーンですくって食べる至福のひととき。
　すると、三人の子供たちがやってきた。
　おそらく、十三か十四だろう。

　いちばん長身の少年が話しかけてきた。「ウニはうまいかい？」

　金属バットを持っている少年たちだった。

「ああ、こいつはうまいよ」老人はいった。「ひとくち食うか？」
「いらねえよ、そんなもの」少年は眉間にしわを寄せて答えた。
「そんな高級なウニを食ってどうするんだ？」いちばん背の低い少年がいった。「おいぼれのクソじじい」
「なんじゃっと」
「おい、口答えすんのかよ、もうろくクソじいい」いちばん太った少年がいった。「もうこの世に未練はねえだろう」
「言葉に気をつけろ」老人は怒鳴った。

　つぎの瞬間だった。

「おらあああああああ」長身の少年は金属バットをフルスイングした。

　手に持っていたウニの瓶が粉々になった。
　老人の顔はウニまみれになってしまった。

「わーい、ざまあみろ」少年たちはキチガイめいた声で笑った。

　すると老人はいったんスプーンをベンチのうえに置き、一枚の硬貨を指でピンっとはじいた。金色に輝く五円玉が高らかに宙を舞い、少年たちがあっけにとられた、その刹那、老人は懐に隠し持っていた物を投げつけた。三人の子供たちの眉間に尖ったウニがグサッと突き刺さり少年たちは意識を失って崩れ落ちた。老人はなにごともなかった顔で、しゅるしゅると落下してきた五円玉を掌につかんだ。キティちゃんのハンカチで顔をぬぐう。

　老人は鼻で笑った。「この愚か者どもめが！」

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