売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果

カイシャイン36

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売れない作家、元相棒と再会する

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 ざわめく公園内、あの不良連中も一瞬で静まった。

 円佳は笑みを携えたままゆっくりしゃべり出す。


「これはいったい何の騒ぎでしょう……失礼、研究者としての好奇心でして」


 こっちを見ながら聴いてくる円佳に俺は辟易する。


(白々しい……どうせ俺がいると耳にして顔出しに来たんだろう)


 こいつは俺をダンジョンに潜らせるためなら、平気でウソをつけるタイプだ。

 細心の注意を払わないと……俺が円佳の言動に警戒している一方、バクテリアの連中はビシッと背筋を正し上官にするような態度を取っていた。なんなんだ?


「お、俺は「バクテリア」の坊田って言います。俺ら、ひだかさんに憧れて……」


 「それは嬉しいですね」と円佳。おい、憧れちゃうダメな人種だぞ。こいつ三日三晩平気で人を振り回すダンジョンマニアだからな。体が持たないぞ。

 と、半眼向ける俺に気がついたのか、円佳は柔らかく微笑んだ。世間じゃ天使の笑みなんて呼ばれちゃいるが俺にとっては悪夢の微笑だ。


「どうして日高さんが?」


 ハルルさんが聞くと日高は――


「なにちょっとしたフィールドワークですよ」


 と即答した。用意していたなこの返事……

 ダンジョンの権威がここにいることは不自然極まりないのだが、有無を言わせないオーラで周囲は圧倒されている。


「あー、すっごい再生数」


 まったく圧倒されていない奴もいるが、本当に大物になるわウチの姪っ子。


「ふむ」


 円佳は大仰に周囲を見回し、唸る。


「なるほど、ハルルさんと坊田君のチームが争っているようですね」


 何がなるほどだ、ずっと様子を見ていて折をみて乱入してきた決まってる。こいつそういう計算ができる女だからな。

 そんな訝しがる俺の方を円佳は向いてくる。


「大体察しはつきます。噂の盾使いさんを信じられないといったところでしょう」
「そうなんですよ絶対嘘ですよ!」


 食いつく坊田君、なんか円佳の舎弟みたいに見えるな。

 円佳はクツクツ笑っている。


「でしょうね、ならばこういうのはどうでしょう?」


 彼女は大仰に手を広げると俺たちにある提案してきた。


「実力を疑うならそれを晴らせば良い。ダンジョンに潜ってあるものを取ってくるという勝負はいかがでしょう?」
「……コイツ」


 これが狙いか、勝負なんて二の次で俺に仕事をさせるつもりだな。


「あるものとは?」
「ちょっとしたモンスターの素材です」と円佳。


 さも当たり前のように人を使いやがって……だが、自分たちがパシリにされているとも知らず、憧れの人を前にしてバクテリアの面々はやる気満々だ。


「おっしゃやったるぜ!」
「「「うぉぉぉ!」」」


 素直な不良たち、なんか段々と好青年に見えたぞ。

 スーツのカリスマ美女にメロメロになっている坊田君率いるバクテリア……俺、こんな奴らと張り合うのか?

 ゲンナリする俺にハルルさんが寄ってくる。


「初コラボで敗北なんてあってはなりません。私たちのチームワーク見せつけましょう」
「……」ギロリ


 おいおい円佳の見る目がなんか怖いぞ。まぁ夢だの何だの言って散々ダンジョンの誘い断っておいてコラボしてんだものなぁ。


「ああ、そうだ。噂の伊達男さん」
「おい、「盾」男な伊達じゃねーよ」
「ふふふ、どうやら実力がおありのようですので難しいアイテムを取ってきてもらいたいですね」
「この野郎」


 人を都合よく利用しやがって。


「そうですね「ホルスの羽根」これを取ってください」


 周囲のギャラリーがこの「ホルス」という単語にざわついた。


「ホルスの羽根だって」
「あ、あのホルスだぞ」


 ホルス――光輝くダンジョンの鳥で中層より下で遭遇するモンスター。

 光っているため発見するのは比較的楽だが、空を飛んでいる性質上、倒すのはちょっと工夫がいる。

 下手したら上空から一方的に攻撃されるため並の冒険者じゃ太刀打ちできない。


「うちの研究員、今手が空いてなくて、やっていただけると助かるのですが」
「要は使いっ走りだろ」
「謝礼は弾みますので、小間使いというやつですよ」
「言い方を古風にに変えただけでパシリには変わりないだろうが」


 このやり取りに美波が口を挟んできた。


「カイ兄、日高円佳と仲いいの?」
「ッ!? そ、そんなわけないだろ!? あ~ホルスの羽根だな! やったろうじゃねーか!」


 鋭い姪の洞察を誤魔化すように声を張り上げるしかない。


「ホルスの羽根を手に入れたら我々のチームを認めてくれますかな?」


 松尾さん、なんかもうマネージャーみたいな振る舞いだぞ。

 坊田君は大きく頷いた。


「もちろんだとも! ……も、もし俺らが先にとったら! 日高さん! あなたの傘下に入れて下さい!」


 ヤクザの申し出みたいな言い方、さすがの円佳も戸惑うがすぐさま取り繕う。


「傘下は良くわかりませんが、うちの研究所で雇ってもいいですよ」
「よっしゃぁぁぁぁ!」


 やれやれ……この様子じゃホルスの恐ろしさを知らないようだ。無鉄砲というかなんというか。

 俺は円佳に小声で文句を言う。


「お前、人を焚きつけるのだけは相変わらず上手いよな」
「若人に現実を知ってもらうのも我々の勤めです」


 しれっと言いやがるぜコイツ。


「彼らがピンチになった時は助けてあげてください。そうすれば実力を認めてもらえますよ」
「認めてられてもなぁ……」


 そんな俺の腕をハルルさんがスッと取ってきた。


「さあ、行きましょうカイ兄さん!」


 結構グイグイ引っ張ってくる……あぁ、きっとハルルさんも円佳の胡散臭さに気が付いたのかな? 人を見る目あるんだなぁこの人。


(しかし、ウチの編集長は人を見る目がない……その眼力を分けて欲しいぐらいだ)
「行きますですぞ!」


 松尾さんは意気揚々と吠え、それを合図に「ホルスの羽根」を巡る勝負が始まったのだった。




※次回は12/23 18:00頃投稿予定です

 ブクマ・評価などをいただけますととっても嬉しいです。励みになります。

 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 

 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。


 この作品の他にも多数エッセイや


・追放されし老学園長の若返り再教育譚 ~元学園長ですが一生徒として自分が創立した魔法学園に入学します~

・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果

・「俺ごとやれ!」魔王と共に封印された騎士ですが、1000年経つ頃にはすっかり仲良くなりまして今では最高の相棒です

 という作品も投稿しております。

 興味がございましたらぜひ!
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