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1.(奏side)
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はぁ……枕欲しいな……
サボりで寝ると言えば屋上。しかし、この学校は屋上の鍵がかかっていて入れない。
俺は屋上の扉の前にあるデカいマットの上に横になっていた。
今何時間目だっけ……
1人でただ扉から入ってくる風の音を聞いていると意識が遠のいて行った。
授業が終わるチャイムの音で目が覚めた。まだ頭がぼんやりしていて目もあまり見えない。完璧に目が覚めるまでとぼーっとしていると誰かがゆっくり近づいてくる足音が耳に入ってきた。
屋上に用でもあるのか…
しばらくして自分のすぐ側で足音が止まったかと思うと頬と唇に突然の温もりを感じた。
「んんっ?!ん……ふぁ……んっ…」
力強いけど優しいキス。離れたいはずなのに離れたくない、まるでアイスがとけるように全身の力が抜けていった。
「お前、誰……」
やっと離された唇に手を置きながら目を開けた。目の前にはスっと筋の通った鼻に長いまつ毛、全てのパーツが美しいラインで出来た綺麗な顔があった。
あんなことをした後だからか、なんとも言えない色っぽさが男に纏う。
「おはよう、俺はー八神、八神 伊桜」
「や…がみ?…」
男を睨んで名前を聞くと、男はさっきまで無駄に色気を出していた真顔からさわやかな笑顔に変えて何事もなかったように返事を返してきた。
それにしても、八神ってどこかで……
俺はちょこちょこ教室に顔を出すくらいで最近はほとんど学校にいる時間はここで過ごしている。
ここの下の階は移動教室用の部屋が多く、ほとんど生徒の声は入ってこないため、俺は学校の情報は全く知らない。
俺は一瞬でた疑問を頭の隅にしまい込んだ。この後、何が起きるかを知らずに…
「そう言えば、どうして君はこんなところに?授業は?」
「うるせぇな、ここは俺の昼寝スポットなんだよ」
「ふーん」
「お、おい、え…何?!」
「よいしょっと」
突然膝の下に手を入れられ世間で言ういわゆるお姫様抱っこの状態にされマットの奥に移される。男は空いた手前のスペースに体を滑らせてきた。
「確かに、ちょうど風が来ていいなここ」
「おい、出てけ」
「別にいいじゃん、何なら添い寝でもする?」
一瞬自分のお気に入りの場所が褒められて嬉しかったが、自分の陣地を取られたようでちょっとやになった。
男は爽やかな笑顔のまま自分の方に抱き寄せた。
ちょっ…顔近い……
目の前に男の顔が近づいて無意識にドキドキしてくる。
「どけよ、暑い……」
「やだ」
「お、おい…」
男はさっきよりさらに強く抱き寄せて寝息を立て始めた。起きようと思ったが身動きが取れない。だんだんと男の温もりが伝わってきて瞼が重くなってきた。
数分後……
「お……ろ、起きろ」
微かに体が揺らされる。
んー、まだ起きたくない…
揺らされてるうちに目が覚めてきた。目の前にはさっきと変わらぬ体制で男がこちらを見て微笑んだ。
「やっと起きたか、もうそろそろ休み時間終わるぞ」
「あぁ」
「まぁ、それはそうとして、そろそろ離して貰えるかな?」
「えっ」
俺は男のワイシャツを手が白くなるほどぎゅっと握っていることに気がついた。
慌てて手を離すと男はマットから降り、俺を覗き込んでいつの間にか流れていた涙を拭ってくれた。
「大丈夫だ」
俺と目を合わせて男が発したその一言はどこか温もりと優しさがあり、俺を安心させた。緊張で固まっていた体がだんだんと和らいでいく。
「ありがとう」
「どういたしまして、なんか可愛かったからこっちもおいしかったかな」
「は?」
「俺の胸に頭擦り寄せて、ギューってしてきたの、猫みたいで可愛かった」
「なっ…」
俺そんなことしてたのか?!…
一瞬自分がその行動をしていた風景が頭に浮かび、恥ずかしくなった。
でもなんかスッキリしたな。
「次も君はここにいるの?」
「ん?」
「次の時間もここでサボるのか?」
「いや、次は行く!」
次の時間が調理実習なことを思い出した。俺は料理が大好きなのだ。もちろん食べるのも。
こうしては居られない、早く準備をしなければ!
「じゃあな!」
「お、おい!」
俺は男の声にも気づかずに一心不乱に教室に向かった。
サボりで寝ると言えば屋上。しかし、この学校は屋上の鍵がかかっていて入れない。
俺は屋上の扉の前にあるデカいマットの上に横になっていた。
今何時間目だっけ……
1人でただ扉から入ってくる風の音を聞いていると意識が遠のいて行った。
授業が終わるチャイムの音で目が覚めた。まだ頭がぼんやりしていて目もあまり見えない。完璧に目が覚めるまでとぼーっとしていると誰かがゆっくり近づいてくる足音が耳に入ってきた。
屋上に用でもあるのか…
しばらくして自分のすぐ側で足音が止まったかと思うと頬と唇に突然の温もりを感じた。
「んんっ?!ん……ふぁ……んっ…」
力強いけど優しいキス。離れたいはずなのに離れたくない、まるでアイスがとけるように全身の力が抜けていった。
「お前、誰……」
やっと離された唇に手を置きながら目を開けた。目の前にはスっと筋の通った鼻に長いまつ毛、全てのパーツが美しいラインで出来た綺麗な顔があった。
あんなことをした後だからか、なんとも言えない色っぽさが男に纏う。
「おはよう、俺はー八神、八神 伊桜」
「や…がみ?…」
男を睨んで名前を聞くと、男はさっきまで無駄に色気を出していた真顔からさわやかな笑顔に変えて何事もなかったように返事を返してきた。
それにしても、八神ってどこかで……
俺はちょこちょこ教室に顔を出すくらいで最近はほとんど学校にいる時間はここで過ごしている。
ここの下の階は移動教室用の部屋が多く、ほとんど生徒の声は入ってこないため、俺は学校の情報は全く知らない。
俺は一瞬でた疑問を頭の隅にしまい込んだ。この後、何が起きるかを知らずに…
「そう言えば、どうして君はこんなところに?授業は?」
「うるせぇな、ここは俺の昼寝スポットなんだよ」
「ふーん」
「お、おい、え…何?!」
「よいしょっと」
突然膝の下に手を入れられ世間で言ういわゆるお姫様抱っこの状態にされマットの奥に移される。男は空いた手前のスペースに体を滑らせてきた。
「確かに、ちょうど風が来ていいなここ」
「おい、出てけ」
「別にいいじゃん、何なら添い寝でもする?」
一瞬自分のお気に入りの場所が褒められて嬉しかったが、自分の陣地を取られたようでちょっとやになった。
男は爽やかな笑顔のまま自分の方に抱き寄せた。
ちょっ…顔近い……
目の前に男の顔が近づいて無意識にドキドキしてくる。
「どけよ、暑い……」
「やだ」
「お、おい…」
男はさっきよりさらに強く抱き寄せて寝息を立て始めた。起きようと思ったが身動きが取れない。だんだんと男の温もりが伝わってきて瞼が重くなってきた。
数分後……
「お……ろ、起きろ」
微かに体が揺らされる。
んー、まだ起きたくない…
揺らされてるうちに目が覚めてきた。目の前にはさっきと変わらぬ体制で男がこちらを見て微笑んだ。
「やっと起きたか、もうそろそろ休み時間終わるぞ」
「あぁ」
「まぁ、それはそうとして、そろそろ離して貰えるかな?」
「えっ」
俺は男のワイシャツを手が白くなるほどぎゅっと握っていることに気がついた。
慌てて手を離すと男はマットから降り、俺を覗き込んでいつの間にか流れていた涙を拭ってくれた。
「大丈夫だ」
俺と目を合わせて男が発したその一言はどこか温もりと優しさがあり、俺を安心させた。緊張で固まっていた体がだんだんと和らいでいく。
「ありがとう」
「どういたしまして、なんか可愛かったからこっちもおいしかったかな」
「は?」
「俺の胸に頭擦り寄せて、ギューってしてきたの、猫みたいで可愛かった」
「なっ…」
俺そんなことしてたのか?!…
一瞬自分がその行動をしていた風景が頭に浮かび、恥ずかしくなった。
でもなんかスッキリしたな。
「次も君はここにいるの?」
「ん?」
「次の時間もここでサボるのか?」
「いや、次は行く!」
次の時間が調理実習なことを思い出した。俺は料理が大好きなのだ。もちろん食べるのも。
こうしては居られない、早く準備をしなければ!
「じゃあな!」
「お、おい!」
俺は男の声にも気づかずに一心不乱に教室に向かった。
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