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稽古再開 8
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「その理由は昨日見せたのが空手の形だった、ということから考えることになる。四方拝が儀礼形であり、祝い事の席で演じられる、ということを話したね。武術だから直接的にこの形で何か神様にお願いしたりするものではない。というより武の要素も持っているわけだから、その力で魔を祓う、と考えれば理解できるだろう。神様や仏様の中にもその力で魔を祓うということを行なう方がいらっしゃるが、武にはその力をそういう風に活用するところがある。神事で宝剣を用いることがあるが、それにより場を清めるわけだ。四方拝ではあえて正規の方向ではなく逆回りで動くことでその役目を果たしているのだ」
「そうか。だから左回りなんだね」
「うむ。しかし、もう一度、形の流れの全体を思い出して見なさい。今の話に関わることで何か気付くことは無いか?」
祖父のこの問いかけに颯玄は考えた。颯玄が四方拝を見たのはたった1回だ。こういう問い掛けがあっても、すぐに答えることはできない。
「分からない。何か他にあるの?」
「形を学ぶようになってこれまでと異なる意識に基本とは違う立ち方と運足の関係がある。基本でも移動稽古で立ち方や運足を意識してもらうが、動作としては単調だ。もちろん、細かく言えば大切なところはいろいろあるが、今はそういうことを意識するには早すぎる。だから今は、動作そのものを意識してもらうことになる。そういう視点で形も見てもらうことになるが、実はこの形の運足は右回りになっている。形を学ぶ時に確認すれば分かるが、その時に運足の方向を確認するようにしなさい」
祖父にそう言われ、うろ覚えながら昨日見た形を思い出してみると、そうだったような気もする。この時点ではそれくらいの認識だが、本格的に学ぶ段階になって改めて確認しようという気持ちが高まった。
「その表情、何となく理解したようだな。ならばもう一つだけ説明しておこう。東洋の考え方には陰と陽が合わさって太極という状態になると言われる。これが宇宙の姿だというのが東洋の考え方になるが、そう考えると四方拝には宇宙が入っていることになる」
こういう話にまで発展すると、颯玄の頭の中は何のことか分からなくなってしまった。だが、形を表面的に見ているだけでは駄目だ、ということだけは理解した。ここまでの話でお腹が一杯になった感じの颯玄は、祖父が言わんとしていることも何となく理解した。
その様子は祖父から見ても感じていたので、この日はここまで形の話は終了した。
「颯玄、今日は身体ではなく、頭のほうが疲れたろう。ここまでにしておくが、明日から形そのものを教える。そのつもりでいなさい。その時、今日話したことをお前自身で感じ、それを形に活かす、という意識で稽古するように」
その言葉を最後に祖父と一緒に家を出て帰途についたが、聞いたことを何度も頭の中で繰り返した颯玄だった。
「そうか。だから左回りなんだね」
「うむ。しかし、もう一度、形の流れの全体を思い出して見なさい。今の話に関わることで何か気付くことは無いか?」
祖父のこの問いかけに颯玄は考えた。颯玄が四方拝を見たのはたった1回だ。こういう問い掛けがあっても、すぐに答えることはできない。
「分からない。何か他にあるの?」
「形を学ぶようになってこれまでと異なる意識に基本とは違う立ち方と運足の関係がある。基本でも移動稽古で立ち方や運足を意識してもらうが、動作としては単調だ。もちろん、細かく言えば大切なところはいろいろあるが、今はそういうことを意識するには早すぎる。だから今は、動作そのものを意識してもらうことになる。そういう視点で形も見てもらうことになるが、実はこの形の運足は右回りになっている。形を学ぶ時に確認すれば分かるが、その時に運足の方向を確認するようにしなさい」
祖父にそう言われ、うろ覚えながら昨日見た形を思い出してみると、そうだったような気もする。この時点ではそれくらいの認識だが、本格的に学ぶ段階になって改めて確認しようという気持ちが高まった。
「その表情、何となく理解したようだな。ならばもう一つだけ説明しておこう。東洋の考え方には陰と陽が合わさって太極という状態になると言われる。これが宇宙の姿だというのが東洋の考え方になるが、そう考えると四方拝には宇宙が入っていることになる」
こういう話にまで発展すると、颯玄の頭の中は何のことか分からなくなってしまった。だが、形を表面的に見ているだけでは駄目だ、ということだけは理解した。ここまでの話でお腹が一杯になった感じの颯玄は、祖父が言わんとしていることも何となく理解した。
その様子は祖父から見ても感じていたので、この日はここまで形の話は終了した。
「颯玄、今日は身体ではなく、頭のほうが疲れたろう。ここまでにしておくが、明日から形そのものを教える。そのつもりでいなさい。その時、今日話したことをお前自身で感じ、それを形に活かす、という意識で稽古するように」
その言葉を最後に祖父と一緒に家を出て帰途についたが、聞いたことを何度も頭の中で繰り返した颯玄だった。
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