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幼き修行 3

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「お前は修行から逃げた。空手の道は長く、続ければもっと苦しいことが待っている。この段階で逃げ出すようなお前には、将来の期待は持てない。いくら頼んでも無駄だ」

 祖父から言われた言葉だ。

 意識が変わった颯玄にとって、祖父の言葉はとても高い、超えられそうにない壁に思えた。言われた時はとても衝撃的で、もう空手の修行はできないのかと、とても落ち込んだ。他に教えてくれる先生がいたら、そこで教わろうかとも考えた。

 祖父のもとを訪れてから数日経ち、いろいろな人に聞いた先生のところを回ってみた。

 だが、まだ11歳の颯玄の入門を認めてくれるところはない。祖父の下で稽古していたことを話したなら入門できたかもしれないが、それは伏せていた。子供ながらに祖父の評判を落としたくない、という気持ちがあったのだ。

 ただ、入門希望について、その願いを聞いてもらえそうなところも無いことはなかった。でも、稽古の様子を見せてもらったら、子供の颯玄からしても空手の稽古には見えないような状態であり、自ら断った。祖父から教わっていた空手とはずいぶん違っていたのだ。

 稽古を始めた時は何をやらされているのか分からなかったことばかりだったが、喧嘩をした時、攻撃を躱せたのは、多少なりとも空手の技を教わっていたからだ。見学した道場の稽古では、その時と比較してこれでは強くなれない、ということを子供ながらに直感したのだ。

 そういう場面をいくつか見ると、やはり教わるのは祖父からしかない、と強く思うようになった。

 だから再度、颯玄は祖父のところへ再入門を願いに行った。

 祖父の家は颯玄の家から歩いて30分ほどのところにある。適切な交通手段がないため、歩いて行かなければならない。

 だが、先日のこともあり、祖父は家にも入れてくれない。だから、門の所で待つことにした。

 その時、颯玄は単に待つだけではなかった。反省の気持ちを示すため、正座で待っていたのだ。

 颯玄がやってきたことを知っている祖父は、その様子を陰から見ていた。祖父も鬼ではない。かわいい孫だ。だから、颯玄が本当に改心したならと、じっと観察していたのだ。

 しかし、1回や2回くらいで再開させては、また同じことを繰り返すかもしれない、という懸念があった。

 そこで祖父はその見極めに、時間をかけることにした。

 少し酷な気もするが、再開するとなるとこれまで以上の厳しさで臨まなければならない。そして、この意識は祖父自身にも言っている。

 颯玄の来訪は晴れた日だけではない。雨の日もある。学校に通う時間もあるので、時間としては夕方になる。両親には祖父の家に行ってくると話しているが、詳しくは話していないため、ずぶ濡れになって帰ってきた時は心配もされる。

 まさか雨の日でも門のところで正座している、ということは言えないし、もし話したら祖父のところに行くと言っても反対されるのは颯玄にも分かっている。だからそういう時は上手くごまかしたが、何度も使える手ではない。それでも何とか稽古に戻りたいという気持ちが強かったので、子供ながらも必死に考えたのだった。

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