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店の未来を託し、転職を決意 8

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「副社長、お話は分かりました。でも、先日みたいに一時的に責任者として頑張る場合は別ですが、俺たちが店の経営だなんて、ちょっと荷が重いと思います。特に今はただでさえ舵取りが難しい時期だと思いますので、ここで任せると言われてもやっぱり不安です」
 矢島が言った。
「君の不安も分かるよ。でも、俺が休んでいる時、きちんと店を回してくれたじゃないか。そういう様子も見たことも今日の話に関係しているんだ」
 私が矢島の不安に応えるつもりで話した。
「でも、店長、それはまだ自分の上の存在があり、頼れる人がいたからです。だから、その存在が無くなったら、多分先日のような意識ではできなかったと思います」
 矢島のその言葉に中村も同意するかのような表情になっていた。
「その気持ちも分かる。俺が独立して店を持つ時も同じように不安があった。でも、それよりも自分の店を持ちたいという気持ちが強かった。そしてそういう思いを持つなら何とかなる、ということも経験してきた」
 私は矢島の心配に対して話したつもりだが、まだ心構えができていないところでは心配のほうが先に立つのだろう。矢島さらに私に言ってきた。
「でも、店長の場合は独立までいろいろ考え、その上で決心され、今のお店をオープンされたんでしょう。俺の今の状態とは比較できません」
 この話も当然だ。誰しも突然責任ある立場の話をされても戸惑ってしまう。これも立場を変えると分かることなので、私もさらにその理由について説明した。
「その意見ももっともだ。十分考えた上での決心ならば心配があってもやれるだろうが、それがまだという場合なら躊躇するのも分かる。でも、いくら俺が別の仕事をしたいからと言って勝手に決めたと思うか? 経営者として自分の補佐を決めるという時、それなりのチェックをし、その上で育てていくという意識で臨んでいる。仕事の合間に将来の夢なども尋ねたが、居酒屋をやりたいと言っていたよね。その上でこの前は俺が何日も休んでいたけれど、きちんと責任を果たしてくれた。そして、店の売り上げがダウンした時、積極的にいろいろアイデアを考え、それが今の状態に続いている。単なる飾りだけのチーフではなく、経営者としての意識の部分を見たからこそ、今回の話にもなっているんだ。そしてこれは矢島君だけじゃない。中村君も同じだ。直接様子を見れるのは俺の場合は矢島君だが、中村君のことは美津子から聞いている。だからこそさっき話した視点で責任者候補としても挙げていたんだ。ただ、ウチでのキャリアから考えると矢島君のほうを先に店長にと考えていたけれど、ミーティングの時の様子などは直接見ている。だからこそ、私たちが退いた時、そのまま1号店・2号店を全面的に任せることができると思ったんだ」
「そんな風に店長たちが見てくれていたんだ、ということは初めて知りました。過分な話に少し恐縮していますが、それでもやっぱりいきなりというのでは自分には荷が重いです」
 矢島が言った。そして中村も同じような内容を口にした。
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