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学校見学 1
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次の日の朝8時30分、私は奥田から紹介してもらった学校に電話をした。電話口に受付の女性が出た。私はすぐに用件を伝えた。
「もしもし、私は雨宮と申しますが、奥田先生からのご紹介でお電話を差し上げました。整体術に興味がありまして、講座の説明会などの日程などをお尋ねしたいのですが・・・」
「お電話ありがとうございます。説明会の日程ですか? 少しお待ちください、確認いたします・・・。今週は満席ですので、来週の土曜日の夕方4時ならば空席がございます」
この返事に私は驚いた。今、整体に興味がある人がそんなにいるのか、というところについてだ。思わず私はそのことを質問したが、その返事は意外なものだった。
「はい、確かに今週は満席ですが、もともと1回あたりの定員が4名になっており、少ないんです。これは参加者の方のご質問やご相談にきちんとお答えしたいという藤堂の考えからです」
私のミスだったが、奥田との会話の中で「先生」という呼び方になっていたため、つい名前を聞くことを忘れていた。聞いていた本も購入したいと思っていたが、名前も知らないようであれば失礼だと考えたので、あたかも知っていたかのように振舞う自分がいた。そのことに少し自己嫌悪気味になったが、ここではっきり名前を知ることができ、説明会に出席する時までにはしっかり読んでおこうと考えた。時間的には夜の部の開店近くになるが、そこは何とか都合をつけて出席したいと考え、出席希望の旨を伝えることにした。
「そうですか。それは大変ありがたいです。それでは来週の土曜日の枠で予約したいんですが、よろしいでしょうか? できれば家内も一緒にと思っているのですが、それは大丈夫でしょうか?」
そもそも少ない定員のところに2人で参加しても良いのか、という思いで尋ねたが、受付の女性は即答せず、誰かと相談しているような感じだった。
「お電話代わりました。代表の藤堂です。お電話、ありがとうございました。奥様と一緒に説明会に参加したいということでしたが、講座は開業希望の方を対象にしており、そのご相談などもお受けできるよう人数を絞っています。ですから、もし、軽い気持ちでのご参加であればご遠慮いただいております」
まさか藤堂本人が電話に出てくれるとは思っていなかったので大変驚いた。そして、私の質問に対して本気の度合いを確認し、その上で出席の是非の話になるというところにも驚いた。いくら技術にこだわりを持っていると言っても、学校も商売だろう、という気持ちがあったからだ。そしてそうならば、定員を4名に絞るということではなく、入れるだけ入れ、一方的な説明に終始するのではということも考えていた。奥田の話からはこだわりのある先生と聞いていたが、現実の商売の部分は違うのでは、という思いが少しあったからだ。
しかし、藤堂の言葉からはそういう雰囲気は感じられない。私も長年商売をやっているので人を見る目は持っているつもりだし、物事へのこだわりの気持ちも強い。藤堂の初対面の人に対するはっきりした物言いから、一瞬で信用した。奥田からの施術経験や会話というフィルターはかかっているものの、こういった考え方が技術そのものに反映しているのだろう、ということを改めて思いながらきちんと返事した。
「はい、今回お電話したのは奥田先生からのご紹介で、私も整体の道に入れればという思いがあります。そのことは家内とも話しており、だからこそ一緒に話を伺えればと考えたんです」
先ほど受付の女性には奥田からの紹介ということを伝えたが、藤堂の耳には入っていなかったようで、紹介者の名前を聞いて藤堂の声が変わった。奥田からの紹介であれば大丈夫、といった感じになったのだ。
「そうですか。では、奥様とご一緒にお越しください。私はこの後9時から授業になりますので、詳しいことはお越しになった時にお話ししましょう」
藤堂はそう言って再び受付の女性に電話を代わった。
「雨宮様、失礼いたしました。では、来週の土曜日、お2人ということでご予約承りました。当日、お気をつけてお越しください」
「もしもし、私は雨宮と申しますが、奥田先生からのご紹介でお電話を差し上げました。整体術に興味がありまして、講座の説明会などの日程などをお尋ねしたいのですが・・・」
「お電話ありがとうございます。説明会の日程ですか? 少しお待ちください、確認いたします・・・。今週は満席ですので、来週の土曜日の夕方4時ならば空席がございます」
この返事に私は驚いた。今、整体に興味がある人がそんなにいるのか、というところについてだ。思わず私はそのことを質問したが、その返事は意外なものだった。
「はい、確かに今週は満席ですが、もともと1回あたりの定員が4名になっており、少ないんです。これは参加者の方のご質問やご相談にきちんとお答えしたいという藤堂の考えからです」
私のミスだったが、奥田との会話の中で「先生」という呼び方になっていたため、つい名前を聞くことを忘れていた。聞いていた本も購入したいと思っていたが、名前も知らないようであれば失礼だと考えたので、あたかも知っていたかのように振舞う自分がいた。そのことに少し自己嫌悪気味になったが、ここではっきり名前を知ることができ、説明会に出席する時までにはしっかり読んでおこうと考えた。時間的には夜の部の開店近くになるが、そこは何とか都合をつけて出席したいと考え、出席希望の旨を伝えることにした。
「そうですか。それは大変ありがたいです。それでは来週の土曜日の枠で予約したいんですが、よろしいでしょうか? できれば家内も一緒にと思っているのですが、それは大丈夫でしょうか?」
そもそも少ない定員のところに2人で参加しても良いのか、という思いで尋ねたが、受付の女性は即答せず、誰かと相談しているような感じだった。
「お電話代わりました。代表の藤堂です。お電話、ありがとうございました。奥様と一緒に説明会に参加したいということでしたが、講座は開業希望の方を対象にしており、そのご相談などもお受けできるよう人数を絞っています。ですから、もし、軽い気持ちでのご参加であればご遠慮いただいております」
まさか藤堂本人が電話に出てくれるとは思っていなかったので大変驚いた。そして、私の質問に対して本気の度合いを確認し、その上で出席の是非の話になるというところにも驚いた。いくら技術にこだわりを持っていると言っても、学校も商売だろう、という気持ちがあったからだ。そしてそうならば、定員を4名に絞るということではなく、入れるだけ入れ、一方的な説明に終始するのではということも考えていた。奥田の話からはこだわりのある先生と聞いていたが、現実の商売の部分は違うのでは、という思いが少しあったからだ。
しかし、藤堂の言葉からはそういう雰囲気は感じられない。私も長年商売をやっているので人を見る目は持っているつもりだし、物事へのこだわりの気持ちも強い。藤堂の初対面の人に対するはっきりした物言いから、一瞬で信用した。奥田からの施術経験や会話というフィルターはかかっているものの、こういった考え方が技術そのものに反映しているのだろう、ということを改めて思いながらきちんと返事した。
「はい、今回お電話したのは奥田先生からのご紹介で、私も整体の道に入れればという思いがあります。そのことは家内とも話しており、だからこそ一緒に話を伺えればと考えたんです」
先ほど受付の女性には奥田からの紹介ということを伝えたが、藤堂の耳には入っていなかったようで、紹介者の名前を聞いて藤堂の声が変わった。奥田からの紹介であれば大丈夫、といった感じになったのだ。
「そうですか。では、奥様とご一緒にお越しください。私はこの後9時から授業になりますので、詳しいことはお越しになった時にお話ししましょう」
藤堂はそう言って再び受付の女性に電話を代わった。
「雨宮様、失礼いたしました。では、来週の土曜日、お2人ということでご予約承りました。当日、お気をつけてお越しください」
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