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相談 5

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「そう、あなたの考えは分かったわ。みんなのことも考えていたということも・・・。でも、まだ肝心の矢島君には何も話していないでしょう」
「うん、まずは美津子に話さないといけないと思っているし、第一まだ店に行っていない。だから話す機会はない」
「考えてみればそうね。でも話してくれて良かったわ。私もこの話、きちんと考えてみる。今はまだ聞いたばかりだから、はい、そうですかとは言えないけれど、明日、2号店に行く前にちょっと1号店によって、あなたの近況を話す中で、さりげなく矢島君に将来のことも聞いてみるわ。でも、あなたも思い切ったことを考えたわね」
 この時点で美津子の気持ちは落ち着いていた。それは表情にも表れており、話がスタートした時よりも柔和になっている。
 私もそれは同様で、最初の時は理解してもらおうと一生懸命になりすぎ、言葉も強くなっていたかもしれないという思いがあった。会話というのはお互いの気持ちがぶつかることもあるので、それが出た場合、本来ならば穏やかなテーマであってもつい熱くなり、外から見れば喧嘩しているように見えることがある。今晩の話は喧嘩のような感じまでは行かなかったと思うが、外から見れば分からない。でも、今は穏やかな感じになっているので、そういった心配は無用だろう。話に一生懸命になり、ずっと缶ビールを握りっぱなしだったのでまた温くなっていることが手の感触で分かる。このまま捨てて新しいビールを用意しても良いがちょっともったいない気もするのでそのまま飲み干し、美津子に冷蔵庫から新しいものを持ってきてもらった。私が持ってきても良かったのだが、そこは美津子が気を利かした。そこからは話が和らいだ方向で進んでいった。
「それで、腰の調子はどう?」
「うん、おかげさまで普通の状態では痛みはない。でも、ある姿勢になると腰の芯のほうに違和感を少し感じる。だから明日、また奥田先生のところに行ってこようと思っている。この前お世話になった時も念のため、ということをおっしゃっていたしね。もし先生に時間がありそうだったら、今話したことについて尋ねてみようと思う」
「それ良いわね。今は外から見ているだけで整体の仕事がどんなものなのかは分からないことが多いと思うし、もし本気ならそういうところもきちんと聞いておかなくてはならないしね。でも、まだ予約していないんでしょう」
「明日電話しようと思っている。今は時間の融通が利くから、先生の予定に合わせて伺おうかと思っている。ただ、次の予約があるような時には話は聞けないだろうし、もし美津子も話を聞きたいということなら、申し訳ないけど施術の後に時間を取ってもらえそうなところを予約するけど、とりあえず明日は腰の調子の改善のほうを意識する。さりげなく話を伺おうとは思っているけれど、きちんと聞くならやっぱり2人揃ってのほうが良いだろうから」
 まだ話が決まったり進んでいるわけではないが、美津子に話したことがどこまで実現性があるかどうかを確認する必要がある。そういった情報を集め、その上で最終決断をしても遅くはない。その前段階については今晩話したばかりだが、ここをスタートラインにし、今後のことを考えたいと改めて思った。やはり一人で考えるだけでなく、きちんと相談することで見えなかったことが見えるようになり、具体的な行動にもつながる、ということを実感した時間になった。
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