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相談 4
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「そう、それがあなたの考えだったのね。まだ理解できていないこともあるけれど、仮にそのような方向に進むとして、みんなのことはどうするつもりなの? あなたが考えたことだからそのこと自体はどうこう言うつもりはない。でも、私たちは小さいけれどスタッフがいるお店を持つ身よ。責任もあるわ。あなたは体調を壊し、休んでいる間に考えたことかもしれないけれど、私を含めてお店のスタッフからすれば、身勝手と言われるかもしれないわね。新型感染症の問題で経営が厳しくなったからそこから逃避した、と思われるかもしれないわ。そうなったらこれまでみんなに言ってきたことと矛盾するんじゃないかしら?」
美津子は私の話に潜む問題点をしっかり衝いてきた。私自身、この点については悩んだところの一つだったからだ。
だが、この話をする以上、この点を自分の中でクリアにし、その上できちんと話すことが必要と理解していた。だから私は続けて言った。
「今、そのことについて話をしようとしていた。俺も単純に考えたわけじゃない。もしそうするとなればいろいろやらなくてはならないことがあるが、そういったことも今回、一生懸命考えた。一時的な感情ではないんだ」
この時、私は持っていたビールを少し強く握りしめ、しかも少し動かしたものだから少しこぼれてしまった。その様子を見て美津子は苦笑したが、ちょっと場が張り詰めた感じになっていたので、その雰囲気を好転させるきっかけになった。
「俺、ちょっと興奮したみたいだな。ごめんごめん」
「私も少し興奮して話したからね。今度はもう少し気持ちを落ち着かせて聞くわ。私が予想していなかった展開になってきたから、ちょっと言葉が強くなっていたかもしれないわ」
「それで話の続きだけど、さっきも言ったけど、居酒屋の仕事に対するやりがいを感じなくなったわけじゃない。むしろ最近のみんな意識の変化やお客様の声を耳にするようになって、その意義を強く感じるようになっている。でも、それはさっき言ったように身体の調子が良い時のことだ。そういったことから奥田先生のような仕事と居酒屋の仕事を並べて考えるのではなく、別々のものとして考えた。改めて言うほどのことじゃないと言われるかもしれないが、こういうとこは頭だけで考えるのではなく、心からそう思ってのことだし、結果的には同じようなことでもその裏側にはいろいろあると思っている。だからこの話はそういうことでの考えと理解してくれ。だから、俺が考えているのは今の店を畳んで仕事を変えるということじゃないんだ。もっとはっきり言えば、居酒屋もやる、そして整体の仕事もやる、ということなんだ。だけど俺は一人しかいない。一人の人間が2つの仕事を同時にやることはできない。そこで考えたのが1号店は完全に矢島君に任せる、ということだ。そして会社の社長職は美津子に継いでもらい、俺は会長といった感じで関わり、矢島君たちのフォローをしたいと思った。俺が体調を壊した間、彼はよくやってくれだ。そしてその時生き生きしていた。以前話しただろう、3号店を出す時は彼に店長になってもらうアイデアを。今回の俺の穴埋めを十分すぎる以上に頑張ってくれたことから任せても大丈夫と確信したんだ。もちろん、直接本人に確認したわけでもないし、まだ俺の頭の中だけのことだ。でも、こういうことまで想定しておかなければ、今話したようなことで言えない。もちろん、思った通りすんなりいくかどうかは分からないけれど、以前矢島君と話した時、居酒屋に対する気持ちをしっかり持っていた。その気持ちをしっかり活かせれば、ということも期待している。もちろん、そういうことには美津子の気持ちや考えも必要だけど、まずは考えをまとめる叩き台として話してみた」
私は美津子の目を見て、真剣に話した。美津子も今度は落ち着いて聞いてくれた様子が伺えた。
美津子は私の話に潜む問題点をしっかり衝いてきた。私自身、この点については悩んだところの一つだったからだ。
だが、この話をする以上、この点を自分の中でクリアにし、その上できちんと話すことが必要と理解していた。だから私は続けて言った。
「今、そのことについて話をしようとしていた。俺も単純に考えたわけじゃない。もしそうするとなればいろいろやらなくてはならないことがあるが、そういったことも今回、一生懸命考えた。一時的な感情ではないんだ」
この時、私は持っていたビールを少し強く握りしめ、しかも少し動かしたものだから少しこぼれてしまった。その様子を見て美津子は苦笑したが、ちょっと場が張り詰めた感じになっていたので、その雰囲気を好転させるきっかけになった。
「俺、ちょっと興奮したみたいだな。ごめんごめん」
「私も少し興奮して話したからね。今度はもう少し気持ちを落ち着かせて聞くわ。私が予想していなかった展開になってきたから、ちょっと言葉が強くなっていたかもしれないわ」
「それで話の続きだけど、さっきも言ったけど、居酒屋の仕事に対するやりがいを感じなくなったわけじゃない。むしろ最近のみんな意識の変化やお客様の声を耳にするようになって、その意義を強く感じるようになっている。でも、それはさっき言ったように身体の調子が良い時のことだ。そういったことから奥田先生のような仕事と居酒屋の仕事を並べて考えるのではなく、別々のものとして考えた。改めて言うほどのことじゃないと言われるかもしれないが、こういうとこは頭だけで考えるのではなく、心からそう思ってのことだし、結果的には同じようなことでもその裏側にはいろいろあると思っている。だからこの話はそういうことでの考えと理解してくれ。だから、俺が考えているのは今の店を畳んで仕事を変えるということじゃないんだ。もっとはっきり言えば、居酒屋もやる、そして整体の仕事もやる、ということなんだ。だけど俺は一人しかいない。一人の人間が2つの仕事を同時にやることはできない。そこで考えたのが1号店は完全に矢島君に任せる、ということだ。そして会社の社長職は美津子に継いでもらい、俺は会長といった感じで関わり、矢島君たちのフォローをしたいと思った。俺が体調を壊した間、彼はよくやってくれだ。そしてその時生き生きしていた。以前話しただろう、3号店を出す時は彼に店長になってもらうアイデアを。今回の俺の穴埋めを十分すぎる以上に頑張ってくれたことから任せても大丈夫と確信したんだ。もちろん、直接本人に確認したわけでもないし、まだ俺の頭の中だけのことだ。でも、こういうことまで想定しておかなければ、今話したようなことで言えない。もちろん、思った通りすんなりいくかどうかは分からないけれど、以前矢島君と話した時、居酒屋に対する気持ちをしっかり持っていた。その気持ちをしっかり活かせれば、ということも期待している。もちろん、そういうことには美津子の気持ちや考えも必要だけど、まずは考えをまとめる叩き台として話してみた」
私は美津子の目を見て、真剣に話した。美津子も今度は落ち着いて聞いてくれた様子が伺えた。
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