118 / 182
ギックリ腰 2
しおりを挟む
私は激痛のためにあまりしゃべれない。動けずにいる私に矢島が言った。
「近所に整形の病院がありますので、すぐ行きましょう。俺が背負います」
矢島はそう言って私の横に近づいた。
だが、その時点ではまだ背負ってもらうことすら難しいような感じだった。
「矢島君、ありがとう。まだ全然動けない感じだから、もうしばらくこのままにしておいてくれ。少しでも痛みが引いたらお願いするよ。その間、悪いけど2号店に連絡してくれないか? 先日の体調不良に続いて今度はギックリ腰になり、みんなに迷惑をかけて済まない」
今、私にできるのは矢島や周りの人たちに対する謝罪の気持ちを言葉にするくらいだ。そしてこのことを美津子に知ってもらうことで、先日のことに続いて全体をサポートしてもらうようお願いすることだけだった。
「もしもし、1号店の矢島ですが、副社長、お願いできますか?」
矢島は2号店に電話をしたが、アルバイトスタッフが出たため、美津子に代わってもらうようお願いした。何の電話か分からない美津子は用件を尋ねた。
「代わりました。あら、矢島君、何かあった?」
美津子は普通の感じで電話に出た。
「はい、実は店長がビールのケースを持った時、ギックリ腰になられて、今、動けないんです。まだ激痛のために何もできない状態ですが、痛みが引いたら近くの整形の病院に背負って行こうと思っています。今、夜の部の準備をしていたところですが、状況次第で俺がご自宅までお連れしようと思っていますが、良いでしょうか?」
思ってもいなかった矢島からの話に美津子は驚いたが、矢島の判断は正しいと考えた。
「矢島君、お店の方は臨時休業にしても良いので、今の話の通りにしてちょうだい。中村君とも話し、場合によっては私が後で病院に行き、対応することもできるから、その時はいつも通り店を空けてください。もう少ししてから電話します」
美津子はそう言って電話を切った。
矢島は私の横で電話したため、話の内容は大体把握していた。改めて内容を確認したが、2号店からの電話を待ち、うまく対応することをお願いした。多少の時間の経過が幸いしたのか、少し痛みが薄らいだので、美津子からの電話がかかってくるまで矢島と少し会話した。
「いろいろ心配かけて済まない。ギックリ腰、実は初めてではないんだ。昔経験していて、その時は治るまで1ヵ月近くかかった。その経験があったので整体に通い始め、体調管理に努めていたんだが、やっぱり先日身体を壊してまだ本調子に戻っていなかったのかもしれないな」
「そうだったんですか。それなら今度はしっかり治し、腰を労わってください。その間、俺が頑張りますよ。先日のことがあって俺も何か覚醒したみたいなので、任せてください」
矢島は力強く言った。私はこの時、その言葉に変な誇張は感じられず、この男になら任せられる、と感じていた。
「近所に整形の病院がありますので、すぐ行きましょう。俺が背負います」
矢島はそう言って私の横に近づいた。
だが、その時点ではまだ背負ってもらうことすら難しいような感じだった。
「矢島君、ありがとう。まだ全然動けない感じだから、もうしばらくこのままにしておいてくれ。少しでも痛みが引いたらお願いするよ。その間、悪いけど2号店に連絡してくれないか? 先日の体調不良に続いて今度はギックリ腰になり、みんなに迷惑をかけて済まない」
今、私にできるのは矢島や周りの人たちに対する謝罪の気持ちを言葉にするくらいだ。そしてこのことを美津子に知ってもらうことで、先日のことに続いて全体をサポートしてもらうようお願いすることだけだった。
「もしもし、1号店の矢島ですが、副社長、お願いできますか?」
矢島は2号店に電話をしたが、アルバイトスタッフが出たため、美津子に代わってもらうようお願いした。何の電話か分からない美津子は用件を尋ねた。
「代わりました。あら、矢島君、何かあった?」
美津子は普通の感じで電話に出た。
「はい、実は店長がビールのケースを持った時、ギックリ腰になられて、今、動けないんです。まだ激痛のために何もできない状態ですが、痛みが引いたら近くの整形の病院に背負って行こうと思っています。今、夜の部の準備をしていたところですが、状況次第で俺がご自宅までお連れしようと思っていますが、良いでしょうか?」
思ってもいなかった矢島からの話に美津子は驚いたが、矢島の判断は正しいと考えた。
「矢島君、お店の方は臨時休業にしても良いので、今の話の通りにしてちょうだい。中村君とも話し、場合によっては私が後で病院に行き、対応することもできるから、その時はいつも通り店を空けてください。もう少ししてから電話します」
美津子はそう言って電話を切った。
矢島は私の横で電話したため、話の内容は大体把握していた。改めて内容を確認したが、2号店からの電話を待ち、うまく対応することをお願いした。多少の時間の経過が幸いしたのか、少し痛みが薄らいだので、美津子からの電話がかかってくるまで矢島と少し会話した。
「いろいろ心配かけて済まない。ギックリ腰、実は初めてではないんだ。昔経験していて、その時は治るまで1ヵ月近くかかった。その経験があったので整体に通い始め、体調管理に努めていたんだが、やっぱり先日身体を壊してまだ本調子に戻っていなかったのかもしれないな」
「そうだったんですか。それなら今度はしっかり治し、腰を労わってください。その間、俺が頑張りますよ。先日のことがあって俺も何か覚醒したみたいなので、任せてください」
矢島は力強く言った。私はこの時、その言葉に変な誇張は感じられず、この男になら任せられる、と感じていた。
20
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる