89 / 182
新企画立案 6
しおりを挟む
「弁当販売となると、そのオペレーションを考えなければなりません。ランチタイムの忙しさの集中はみんな経験しているはずだし、その中できちんとしたクオリティを守りつつ、時間のない来店しているお客様を待たせずにサービスできるかを考えなければならないのではないでしょうか?」
今度は1号店のアルバイト、椎名からの意見だった。
これまでのみんなの話を聞きながら、そのシーンを頭の中で描き、考えていたらしい。
「俺も弁当のアイデア自体は賛成だけど、実際にランチタイムの様子を経験している身として、解除後、来店されるお客様の数を増えた時、どうしてもそちらの方に手がかかってしまうことように思う。そうすると今度はお弁当を買いに来られたお客様を待たせることになるだろうし、結果的に両方にご迷惑をかけないか心配しています」
この意見はもっともだ。弁当を買いに来る客がどれくらいになるかは全く分からないが、良い噂が広がってくればそちらの数字も大きくなるだろう。しかし、それで手が足りなくなり、全体的なサービスの低下となれば、味のことと同じくらい評判に影響する。
「椎名君、ありがとう。今の意見は大切だよね。だからこれは経営者として判断しなければならないけれど、忙しくなって手が足りないとなれば、ランチタイムだけのパートの人を雇うことが必要になる。それはそのまま人件費として跳ね返ってくるが、要はそれが気にならないくらいの売り上げになれば良いだけだ。忙しさと売り上げの様子を見た上でこの点は対応することにしよう。それでまた仲間が増えることになるだろうが、そういう時は先輩としてよろしく頼む」
人手の問題はまさしく経営者の仕事なので、弁当企画が軌道に乗りそうだったらその時点で対応することをみんなの前で約束した。
ただ、その話は具体的に接客する立場からの話であり、弁当やランチメニューを作る厨房の話ではない。いくらホールのスタッフが増えても、料理を提供する側が手薄であれば問題だ。だが、厨房の人手の問題は、単に人を増やせば解決するものではない。確かにレシピもあり、盛り付けなどについてもマニュアルがあればある程度解決できるだろうが、そこにはそれなりの調理経験が必要だし、パートで雇うということでは難しい。夜の場合、客の滞在時間が長さや、飲み物の提供で料理の時間は稼げるが、時間勝負という要素が入るランチの場合、一人で厨房をこなすのは難しいという場合が懸念されるのだ。味を売る店としてはこの点は妥協できない。
となれば、ここは1号店・2号店を問わず、店長とチーフが一緒に厨房に入り、ホールは他のスタッフで回していく、ということにならざるを得ない。
この話は私の方からしたが、弁当企画がスタートしてからのシミュレーションも含め、大方はまとまってきた。
もっとも、こういった新しい企画はスタートしてからでないと分からないことが多い。これは企画の内容だけでなく、それ自体が地域に合っているかどうかということも関係するからだ。1号店も2号店も駅のそばにある分、人の流れがそれなりで、同業の飲食店だけでなく、オフィスもそれなりにあり、駅から離れれば住宅街も広がっている。このような立地ならば弁当の企画もそれなりの需要があるのではと思っているが、この時点ではその数字は読めない。
だが、せっかくの企画提案をこのままにしておくのはせっかくのミーティングの時間が無駄になるし、それが流れたりすれば、今後行なう同様の話し合いでの活性化は期待できない。
だからこそ、ここは経営者としての判断が重要になるが、まずは現時点でできる限り実践し、そこでの経験の上で先ほどの懸念項目について対処していくことにした。
今度は1号店のアルバイト、椎名からの意見だった。
これまでのみんなの話を聞きながら、そのシーンを頭の中で描き、考えていたらしい。
「俺も弁当のアイデア自体は賛成だけど、実際にランチタイムの様子を経験している身として、解除後、来店されるお客様の数を増えた時、どうしてもそちらの方に手がかかってしまうことように思う。そうすると今度はお弁当を買いに来られたお客様を待たせることになるだろうし、結果的に両方にご迷惑をかけないか心配しています」
この意見はもっともだ。弁当を買いに来る客がどれくらいになるかは全く分からないが、良い噂が広がってくればそちらの数字も大きくなるだろう。しかし、それで手が足りなくなり、全体的なサービスの低下となれば、味のことと同じくらい評判に影響する。
「椎名君、ありがとう。今の意見は大切だよね。だからこれは経営者として判断しなければならないけれど、忙しくなって手が足りないとなれば、ランチタイムだけのパートの人を雇うことが必要になる。それはそのまま人件費として跳ね返ってくるが、要はそれが気にならないくらいの売り上げになれば良いだけだ。忙しさと売り上げの様子を見た上でこの点は対応することにしよう。それでまた仲間が増えることになるだろうが、そういう時は先輩としてよろしく頼む」
人手の問題はまさしく経営者の仕事なので、弁当企画が軌道に乗りそうだったらその時点で対応することをみんなの前で約束した。
ただ、その話は具体的に接客する立場からの話であり、弁当やランチメニューを作る厨房の話ではない。いくらホールのスタッフが増えても、料理を提供する側が手薄であれば問題だ。だが、厨房の人手の問題は、単に人を増やせば解決するものではない。確かにレシピもあり、盛り付けなどについてもマニュアルがあればある程度解決できるだろうが、そこにはそれなりの調理経験が必要だし、パートで雇うということでは難しい。夜の場合、客の滞在時間が長さや、飲み物の提供で料理の時間は稼げるが、時間勝負という要素が入るランチの場合、一人で厨房をこなすのは難しいという場合が懸念されるのだ。味を売る店としてはこの点は妥協できない。
となれば、ここは1号店・2号店を問わず、店長とチーフが一緒に厨房に入り、ホールは他のスタッフで回していく、ということにならざるを得ない。
この話は私の方からしたが、弁当企画がスタートしてからのシミュレーションも含め、大方はまとまってきた。
もっとも、こういった新しい企画はスタートしてからでないと分からないことが多い。これは企画の内容だけでなく、それ自体が地域に合っているかどうかということも関係するからだ。1号店も2号店も駅のそばにある分、人の流れがそれなりで、同業の飲食店だけでなく、オフィスもそれなりにあり、駅から離れれば住宅街も広がっている。このような立地ならば弁当の企画もそれなりの需要があるのではと思っているが、この時点ではその数字は読めない。
だが、せっかくの企画提案をこのままにしておくのはせっかくのミーティングの時間が無駄になるし、それが流れたりすれば、今後行なう同様の話し合いでの活性化は期待できない。
だからこそ、ここは経営者としての判断が重要になるが、まずは現時点でできる限り実践し、そこでの経験の上で先ほどの懸念項目について対処していくことにした。
20
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり


おしゃれ老人
kozocya@gmail.com
現代文学
29歳の平凡な青年教師が偶然出会った86歳の不思議な老人に魅了され交流を深めていく。青年は老人の人生観やライフスタイルに感化され教育について深く考え始める。さらに青年はあらゆるものに対して研究熱心となり向上心が増していく。青年の探求心は、社会・政治・宇宙の真理にまで及び老人の考えを傾聴する。やがて老人に魅力を感じる者たちが仲間となり、共通の夢に向かって旅立つことになる。果たしてその夢とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる