88 / 182
新企画立案 5
しおりを挟む
柏木は続けて言った。
「私は接客時、お客様がテーブルでこのメニューが会社で頂けたらいいね、といった話を耳にしたことがあります。その時から考えていたことですが、今、矢島さんからお弁当企画の話が出たので、そのようなお客様のリクエストにお応えできるのではと思いました。実は私、お客様の話を耳にした時、お弁当を出しているお店の様子を見て回りました。例えば、軽くお昼を済ませる時の定番の一つの牛丼屋さんですが、お弁当もありますが、汁物は付きません。もし必要であれば別注になります。でも、ウチの場合、汁物にもこだわってるわけですし、スープやお味噌汁が美味しいというお客様もいらっしゃいます。ならば、そこまで含めてお弁当にできれば、他との差別化もできるのではと考えています」
現場で耳にしたことと、自分でやったリサーチの結果を踏まえた話には説得力があった。この話にも全員が頷いていたが、そこに中村が意見を言った。同じ2号店のスタッフ同士ということもあるが、どんな話をするか、全員の意識がその言葉に集中した。
「俺も原則的には賛成です。俺もそういう店で汁物を付けていないことは知っています。店内で食べれば無料で出るところもあれば、そこでも別料金、というところもあります。もともと店の中でも別料金のところでは違和感はないでしょうが、ウチのようにはじめからセットになっている場合、別注文になるというのは高くなったイメージがつくのではと思います。となれば、弁当の場合でもそのままセットにする、ということが望ましいと思いますが、容器代というコストがかかります。また、持ち帰りの時にこぼしたりする可能性もありますので、その点も考えなければなりません。持ち帰りのための袋や汁物の固定のためのものなどの原価率に関係してくると思いますので、この点は社長の判断になるのではと思っています」
この話から中村にも経営者の視点からの考え方が見受けられたわけだが、この傾向も良い。これまではこういう話は矢島のほうから出ることが多かったが、そう言ったことが中村にも影響を与え、考え方が違ってきたのだろう。こういう点は緊急事態宣言といった初めての体験が関係しているのだろうが、雨降って地固まる的な感じに受け取っている。
「確かにコスト的なことは俺たちが考えなければならないことだが、その出費で売り上げが伸びれば問題ない。今、柏木さんが話してくれたことや、俺が相沢さんなどから聞いていることを考えれば、なるべくお店で出している条件のままのほうが味のファンが増えてくるように思う。容器の仕入れについては業者との交渉になるが、そこはコスト削減のために俺たちが頑張る。だからみんなは今のようなアイデアをたくさん出してくれ」
私はコストのことなどで意見が出しにくくなることの方が気になった。その点は経営者として考えることだし、みんなには自由に発想・発言してほしかったのだ。もっとも、明らかにコスト高になると判断される場合はブレーキをかけるつもりでいたが、そのようなことはチーフである矢島や中村であれば理解していることだ。だから私が言う前に彼らから話が出るだろうが、こういう点は最近の言動からの信用だ。経営者的な発想ができるようになれば、3号店のことや彼らの独立なども現実化してくる。独立の場合、私としては痛手だが、チェーン店としてやってくれる場合、共同仕入れなどでコストを下げることもできるし、それは経営する立場では共に助かることだ。今はそこまで話をするだけの状況ではないが、将来のことを考えた場合の視点の一つになる。ある意味、今日のミーティングはそういうところにも関係する内容になっていった。
「私は接客時、お客様がテーブルでこのメニューが会社で頂けたらいいね、といった話を耳にしたことがあります。その時から考えていたことですが、今、矢島さんからお弁当企画の話が出たので、そのようなお客様のリクエストにお応えできるのではと思いました。実は私、お客様の話を耳にした時、お弁当を出しているお店の様子を見て回りました。例えば、軽くお昼を済ませる時の定番の一つの牛丼屋さんですが、お弁当もありますが、汁物は付きません。もし必要であれば別注になります。でも、ウチの場合、汁物にもこだわってるわけですし、スープやお味噌汁が美味しいというお客様もいらっしゃいます。ならば、そこまで含めてお弁当にできれば、他との差別化もできるのではと考えています」
現場で耳にしたことと、自分でやったリサーチの結果を踏まえた話には説得力があった。この話にも全員が頷いていたが、そこに中村が意見を言った。同じ2号店のスタッフ同士ということもあるが、どんな話をするか、全員の意識がその言葉に集中した。
「俺も原則的には賛成です。俺もそういう店で汁物を付けていないことは知っています。店内で食べれば無料で出るところもあれば、そこでも別料金、というところもあります。もともと店の中でも別料金のところでは違和感はないでしょうが、ウチのようにはじめからセットになっている場合、別注文になるというのは高くなったイメージがつくのではと思います。となれば、弁当の場合でもそのままセットにする、ということが望ましいと思いますが、容器代というコストがかかります。また、持ち帰りの時にこぼしたりする可能性もありますので、その点も考えなければなりません。持ち帰りのための袋や汁物の固定のためのものなどの原価率に関係してくると思いますので、この点は社長の判断になるのではと思っています」
この話から中村にも経営者の視点からの考え方が見受けられたわけだが、この傾向も良い。これまではこういう話は矢島のほうから出ることが多かったが、そう言ったことが中村にも影響を与え、考え方が違ってきたのだろう。こういう点は緊急事態宣言といった初めての体験が関係しているのだろうが、雨降って地固まる的な感じに受け取っている。
「確かにコスト的なことは俺たちが考えなければならないことだが、その出費で売り上げが伸びれば問題ない。今、柏木さんが話してくれたことや、俺が相沢さんなどから聞いていることを考えれば、なるべくお店で出している条件のままのほうが味のファンが増えてくるように思う。容器の仕入れについては業者との交渉になるが、そこはコスト削減のために俺たちが頑張る。だからみんなは今のようなアイデアをたくさん出してくれ」
私はコストのことなどで意見が出しにくくなることの方が気になった。その点は経営者として考えることだし、みんなには自由に発想・発言してほしかったのだ。もっとも、明らかにコスト高になると判断される場合はブレーキをかけるつもりでいたが、そのようなことはチーフである矢島や中村であれば理解していることだ。だから私が言う前に彼らから話が出るだろうが、こういう点は最近の言動からの信用だ。経営者的な発想ができるようになれば、3号店のことや彼らの独立なども現実化してくる。独立の場合、私としては痛手だが、チェーン店としてやってくれる場合、共同仕入れなどでコストを下げることもできるし、それは経営する立場では共に助かることだ。今はそこまで話をするだけの状況ではないが、将来のことを考えた場合の視点の一つになる。ある意味、今日のミーティングはそういうところにも関係する内容になっていった。
20
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
Last Recrudescence
睡眠者
現代文学
1998年、核兵器への対処法が発明された以来、その故に起こった第三次世界大戦は既に5年も渡った。庶民から大富豪まで、素人か玄人であっても誰もが皆苦しめている中、各国が戦争進行に。平和を自分の手で掴めて届けようとする理想家である村山誠志郎は、辿り着くためのチャンスを得たり失ったりその後、ある事件の仮面をつけた「奇跡」に訪れられた。同時に災厄も生まれ、その以来化け物達と怪獣達が人類を強襲し始めた。それに対して、誠志郎を含めて、「英雄」達が生れて人々を守っている。犠牲が急増しているその惨劇の戦いは人間に「災慝(さいとく)」と呼ばれている。
眠れない夜の雲をくぐって
ほしのことば
恋愛
♡完結まで毎日投稿♡
女子高生のアカネと29歳社会人のウミは、とある喫茶店のバイトと常連客。
一目惚れをしてウミに思いを寄せるアカネはある日、ウミと高校生活を共にするという不思議な夢をみる。
最初はただの幸せな夢だと思っていたアカネだが、段々とそれが現実とリンクしているのではないだろうかと疑うようになる。
アカネが高校を卒業するタイミングで2人は、やっと夢で繋がっていたことを確かめ合う。夢で繋がっていた時間は、現実では初めて話す2人の距離をすぐに縮めてくれた。
現実で繋がってから2人が紡いで行く時間と思い。お互いの幸せを願い合う2人が選ぶ、切ない『ハッピーエンド』とは。
微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)
犬束
現代文学
夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。
夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。
“大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”
好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。
《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。
読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる