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緊急事態宣言解除 12
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とは言っても、基本的なことについてはすでに決まっているので、その確認といったことがメインになる。私と美津子で話していたことについても矢島に伝え、基本的にはこれまで出てきたアイデアをそのまま行なうことになった。
準備としてそのお知らせのための店内用の告知ビラを作ることになる。
少なくとも1週間はお試しということになるので、文字だけで良いだろうということになり、その場合、夜の部でもやっているような本日のおすすめ的な感じのもので良い。となると、作るのにも時間を要しない。ランチタイムの後に作れば間に合う。
1号店と2号店共通のものを作成しても良いが、それぞれの店の個性もある。ここはそれぞれでということにしたが、連絡だけはしておかなければならない。私は2号店に電話をし、矢島と話したことを美津子に伝えた。美津子も同様のことを考えていたようで、2つ返事でOKだった。
時計を見ると仕込みの時間になったので、今日のランチの準備に入った。メインのメニュー自体はすでに決まっているので、こういうところの流れはいつもと同じで、矢島と手分けして手際よく準備をした。
今、客足は少ないのでアルバイトはおらず、ランチタイムは私と矢島で回している。料理の準備と共に店内の清掃・消毒をやらないといけないが、いつものパターンで行えば良いだけなので、予定通りに進んでいる。
ただ、今日は先が見えたので、何となく動きが軽いように思える。矢島は軽い鼻歌交じりだ。さすがに私はそこまではやっていないが、もし1人なら、同じことをしていたかもしれない。気分的にはそこまで軽くなっている。
11時30分、ランチタイムのスタートだ。5分ほど過ぎた頃、夜の部の常連、相沢が来店した。ランチタイムに訪れるのは珍しい。私たちは相沢の顔を見て少し驚いていた。
「いらっしゃいませ。この時間にご来店なんて珍しいですね」
私は思わず相沢に声をかけた。
「今朝、宣言解除のニュースが報道されたでしょう。これで仕事のほうも少しずつ以前に戻ってくるんじゃないかと思ってね。ランチにも顔を出させてもらったよ。これから巻き返しだね」
相沢の言葉からは店のことを気にかけてくれている様子が伝わった。
私は胸が熱くなり、うっすらと目に涙が浮かんでいた。その時、この店を愛してくれているお客様がいらっしゃる、ということを改めて実感し、これまでのマイナス分を取り戻すため、一生懸命やっていくことを改めて心に誓った。
相沢のオーダーは日替わりだったが、明日から予定している小鉢を提供し、そのプランを話した。まだ他に来店している客がいないため、相沢から感想を聞きたいという思いもあった。
もちろん、無料サービスの期間は1週間だけで、その後、有料メニューにするということも告げた。もともとこの店の味を知っている相沢の場合、きちんと告知の期間を設け、その上でメニューのレギュラー化を図るということなら良いのでは、という賛意をもらった。このことは新企画の弾みとなり、私は矢島と目を合わせ、喜んだ。
準備としてそのお知らせのための店内用の告知ビラを作ることになる。
少なくとも1週間はお試しということになるので、文字だけで良いだろうということになり、その場合、夜の部でもやっているような本日のおすすめ的な感じのもので良い。となると、作るのにも時間を要しない。ランチタイムの後に作れば間に合う。
1号店と2号店共通のものを作成しても良いが、それぞれの店の個性もある。ここはそれぞれでということにしたが、連絡だけはしておかなければならない。私は2号店に電話をし、矢島と話したことを美津子に伝えた。美津子も同様のことを考えていたようで、2つ返事でOKだった。
時計を見ると仕込みの時間になったので、今日のランチの準備に入った。メインのメニュー自体はすでに決まっているので、こういうところの流れはいつもと同じで、矢島と手分けして手際よく準備をした。
今、客足は少ないのでアルバイトはおらず、ランチタイムは私と矢島で回している。料理の準備と共に店内の清掃・消毒をやらないといけないが、いつものパターンで行えば良いだけなので、予定通りに進んでいる。
ただ、今日は先が見えたので、何となく動きが軽いように思える。矢島は軽い鼻歌交じりだ。さすがに私はそこまではやっていないが、もし1人なら、同じことをしていたかもしれない。気分的にはそこまで軽くなっている。
11時30分、ランチタイムのスタートだ。5分ほど過ぎた頃、夜の部の常連、相沢が来店した。ランチタイムに訪れるのは珍しい。私たちは相沢の顔を見て少し驚いていた。
「いらっしゃいませ。この時間にご来店なんて珍しいですね」
私は思わず相沢に声をかけた。
「今朝、宣言解除のニュースが報道されたでしょう。これで仕事のほうも少しずつ以前に戻ってくるんじゃないかと思ってね。ランチにも顔を出させてもらったよ。これから巻き返しだね」
相沢の言葉からは店のことを気にかけてくれている様子が伝わった。
私は胸が熱くなり、うっすらと目に涙が浮かんでいた。その時、この店を愛してくれているお客様がいらっしゃる、ということを改めて実感し、これまでのマイナス分を取り戻すため、一生懸命やっていくことを改めて心に誓った。
相沢のオーダーは日替わりだったが、明日から予定している小鉢を提供し、そのプランを話した。まだ他に来店している客がいないため、相沢から感想を聞きたいという思いもあった。
もちろん、無料サービスの期間は1週間だけで、その後、有料メニューにするということも告げた。もともとこの店の味を知っている相沢の場合、きちんと告知の期間を設け、その上でメニューのレギュラー化を図るということなら良いのでは、という賛意をもらった。このことは新企画の弾みとなり、私は矢島と目を合わせ、喜んだ。
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