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緊急事態宣言解除 5
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今日の今日といった感じだったので、前回のランチのアイデアのような感じではなかったが、昼から何か考えていたのは分かった。具体的なアイデアはこれから出てくるかもしれないが、私は他の人の話も聞きたかった。
そう思っていると、中村が立ち上がった。
「俺も2号店で今日のミーティングの話を伺った時から、ちょっと考えていたことがあります。確かに今、矢島さんがおっしゃった通り、ランチも夜もお客様があまりお見えにならず、どうすれば売り上げを上げられるか、ということを考えていました。ただ、お越しになるお客様の数字はどうしようもありません。そうなると客単価をいかに上げられるか、ということを考えなくてはならないと思います。夜は時間短縮を求められていますので、お酒にしてもおつまみにしてもなかなか数字を上げることは難しいのではないかと考えています。でも、・・・」
中村は何か言おうとしたが、途中で言葉が詰まった。
「どうしたの?」
美津子が心配して声をかけた。中村は2号店のチーフなので美津子が心配するのは当然だが、途切れた言葉の先に何があるのか全員興味があった。
中村はテーブルに置いてあったウーロン茶で喉を潤し、再び話し始めた。
「すみません。考えていたことを話そうとした時、うまく話の筋がまとまらなくて言葉が詰まってしまいました。でも今、一息ついて話せそうですので聞いてください」
申し訳なさそうに話す中村だが、プレゼンをやっているわけではない。仲間内でのミーティングなので気を遣う必要はないのだが、前回のミーティングでランチ企画の話が矢島から出たことをどこか気にしていたのかもしれない。だから今度は自分が少しでも店のためにということを考えるあまり、言葉が詰まったのではと私は勝手に解釈していた。
「さっきの話の続きですが、2つのアイデアがあります。以前、矢島さんがランチ企画を出し、そのままうまくいくかなと思っていましたが状況が変化しましたので、そこに加えて少しでも売り上げアップに貢献できればと考えました。具体的には通常のランチメニューに複数の小鉢を付ける、というものです。定食屋さんでもやっているようなことですが、メインのメニューにもう1品、というわけです。そのメニューについては居酒屋ですからそこから適切な品と価格設定します。お客様の好みでいろいろな組み合わせができますので、自分だけのランチになるわけです。特に今のお客様の好みには多様性があるようですから、あえてこの点はお客様に選んでいただき、それが通常の価格に上乗せされることになります。少しだけかもしれませんが、チリも積もれば、ということです」
一息ついたからだろうか、中村の表情には余裕があった。それは聞いている私たちの表情が良いところに目を付けた、といった状態になっているからかもしれないが、今日考えたような感じでなかった。そこで次に気になるのがもう一つのアイデアだった。
「それで中村君、もう一つは?」
私よりも先に美津子が質問した。
「はい、今度は夜の部の話ですが、組み合わせ割引のアイデアです。原価計算した上で2品、あるいは3品の組み合わせメニューを作って選択していただくことで、1品だけのオーダーよりも数字が上がりやすくなるのでは、と思いました。もちろん、これまで通り単品でのご注文も結構なのですが、組み合わせで割引価格を設定する、というものです。その具体的な組み合わせ例は考えていませんが、結果的に数字を上げるには、やはりオーダーの品数を増やすことだと思いますので、こういったアイデアはどうかと考えていました」
言いたいことを言った、という満足感が表情に表れている。前回のこともあるので、良い意味でのライバル意識が芽生えた結果なのかと思える一幕であった。
そう思っていると、中村が立ち上がった。
「俺も2号店で今日のミーティングの話を伺った時から、ちょっと考えていたことがあります。確かに今、矢島さんがおっしゃった通り、ランチも夜もお客様があまりお見えにならず、どうすれば売り上げを上げられるか、ということを考えていました。ただ、お越しになるお客様の数字はどうしようもありません。そうなると客単価をいかに上げられるか、ということを考えなくてはならないと思います。夜は時間短縮を求められていますので、お酒にしてもおつまみにしてもなかなか数字を上げることは難しいのではないかと考えています。でも、・・・」
中村は何か言おうとしたが、途中で言葉が詰まった。
「どうしたの?」
美津子が心配して声をかけた。中村は2号店のチーフなので美津子が心配するのは当然だが、途切れた言葉の先に何があるのか全員興味があった。
中村はテーブルに置いてあったウーロン茶で喉を潤し、再び話し始めた。
「すみません。考えていたことを話そうとした時、うまく話の筋がまとまらなくて言葉が詰まってしまいました。でも今、一息ついて話せそうですので聞いてください」
申し訳なさそうに話す中村だが、プレゼンをやっているわけではない。仲間内でのミーティングなので気を遣う必要はないのだが、前回のミーティングでランチ企画の話が矢島から出たことをどこか気にしていたのかもしれない。だから今度は自分が少しでも店のためにということを考えるあまり、言葉が詰まったのではと私は勝手に解釈していた。
「さっきの話の続きですが、2つのアイデアがあります。以前、矢島さんがランチ企画を出し、そのままうまくいくかなと思っていましたが状況が変化しましたので、そこに加えて少しでも売り上げアップに貢献できればと考えました。具体的には通常のランチメニューに複数の小鉢を付ける、というものです。定食屋さんでもやっているようなことですが、メインのメニューにもう1品、というわけです。そのメニューについては居酒屋ですからそこから適切な品と価格設定します。お客様の好みでいろいろな組み合わせができますので、自分だけのランチになるわけです。特に今のお客様の好みには多様性があるようですから、あえてこの点はお客様に選んでいただき、それが通常の価格に上乗せされることになります。少しだけかもしれませんが、チリも積もれば、ということです」
一息ついたからだろうか、中村の表情には余裕があった。それは聞いている私たちの表情が良いところに目を付けた、といった状態になっているからかもしれないが、今日考えたような感じでなかった。そこで次に気になるのがもう一つのアイデアだった。
「それで中村君、もう一つは?」
私よりも先に美津子が質問した。
「はい、今度は夜の部の話ですが、組み合わせ割引のアイデアです。原価計算した上で2品、あるいは3品の組み合わせメニューを作って選択していただくことで、1品だけのオーダーよりも数字が上がりやすくなるのでは、と思いました。もちろん、これまで通り単品でのご注文も結構なのですが、組み合わせで割引価格を設定する、というものです。その具体的な組み合わせ例は考えていませんが、結果的に数字を上げるには、やはりオーダーの品数を増やすことだと思いますので、こういったアイデアはどうかと考えていました」
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