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緊急事態宣言解除 4
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午後8時に近い頃、2号店の美津子と中村が1号店にやってきた。ほぼ予定通りだ。
現在、本来忙しくなるはずの時間は営業をやっていないので、アルバイトスタッフのシフトは調整してある。本当はそういうことはしたくないが、そもそも来店する客が少ないので、今までのようなスタッフにはなっていない。
以前、みんなで話し合った時には、何とか雇用を守るということを考えていたが、現実に営業時間が短縮され、来店者数も激減している今、営業を継続するためにはやむを得ない。
とても心が痛むことだし、私の気持ちと現実の乖離に悩む日々が続いている。
それでも宣言が解除されればこれまでの日常が取り戻せるのでは、という期待があった分、今回の宣言延長は心に重くのしかかっていた。
前回の意識のままであればアルバイトのスタッフも含めたミーティングもしただろうが、現実に人数が少ないし、この日のミーティングは急に決めたことなので、あえて主たるメンバーだけで行なうことになった。
集まったメンバーは責任者だけなので、それなりの意識を持っているであろうことはこれまでのミーティングでも分かっている。それだけに今回、再び集まってもらい、今回の宣言延長に対応して、その後の営業について意思を確認し、できれば何らかの対策のアイデアでもあれば、ということを期待していた。
「お疲れ様。今日は急に集まってもらい、すまない。でも、みんなも知っている通り、今日、宣言の延長というニュースが耳に入った。今月末までということなので、3週間以上伸びることになる。みんなの貴重なアイデアがやっとスタートし、ランチ企画も良い感じで少しずつ評判になっていくかな、と期待していた時だったけど、リモートワークが増え、ランチで訪れるお客様も少なくなっている。せっかく売り上げアップのためにと思っていたけれど、実際問題として現状維持がやっとだ。これはお客様の来店数や売り上げもみんな理解しているだろうから、想像できると思う。経営的なことについては、アルバイトスタッフには重すぎるテーマになるだろうということもあり、今回は遠慮してもらったけれど、その分、密度の濃いミーティングになればと思っている。ということで、まず、今回の延長の件とこれからについて、何か意見があれば言ってほしい。すぐに対応できることもあるかもしれないけれど、難しいこともあるだろう。おそらくそのほうが多いと思うが、まずに忌憚なく考えを出してもらい、みんなで共有したいと思う」
少し長い前フリになったが、私はみんなの顔を見ながら、現在の思いを自分なりに伝えたつもりだ。矢島とは昼前と夜の部の前、少し話すことができたので、多少は互いの心の内を理解している。でも、2号店のメンバーの様子は分からない。そういう意味では美津子や中村の意見を聞きたかった。ただそれは2号店のメンバーも同じはずだ。私の話は最初にしたが矢島の考えは2号店のメンバーは知らない。そういうことが頭によぎったので、私は矢島に視線を向けた。
矢島は私の意をすぐに理解したようで、立ち上がって話し始めた。全員、テーブルに着き、これまでのように自分の飲み物とちょっとした食べ物は用意してある。だからこそ、座った状態ではなく、きちんと立って話したかったのだろう。
「今朝、店長から夜のミーティングの話を聞きました。その前に宣言延長の話を聞いていましたので、仕事をしながら夜のミーティングで話せるようなことを考えていました。ランチのアイデアは俺から出させていただき、採用してもらいました。でも、さっき店長からお話があったように、期待していた昼の客数の伸びがリモートワークのおかげで伸びていません。でも、手間がかかるのは同じです。正直、このままの状態が続けば手間がかかる分、どんなものかと思いますが、いずれ宣言は解除されるでしょうから、短絡的な考えは無しにして、解除後のために何か工夫できればと考えていました」
現在、本来忙しくなるはずの時間は営業をやっていないので、アルバイトスタッフのシフトは調整してある。本当はそういうことはしたくないが、そもそも来店する客が少ないので、今までのようなスタッフにはなっていない。
以前、みんなで話し合った時には、何とか雇用を守るということを考えていたが、現実に営業時間が短縮され、来店者数も激減している今、営業を継続するためにはやむを得ない。
とても心が痛むことだし、私の気持ちと現実の乖離に悩む日々が続いている。
それでも宣言が解除されればこれまでの日常が取り戻せるのでは、という期待があった分、今回の宣言延長は心に重くのしかかっていた。
前回の意識のままであればアルバイトのスタッフも含めたミーティングもしただろうが、現実に人数が少ないし、この日のミーティングは急に決めたことなので、あえて主たるメンバーだけで行なうことになった。
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「お疲れ様。今日は急に集まってもらい、すまない。でも、みんなも知っている通り、今日、宣言の延長というニュースが耳に入った。今月末までということなので、3週間以上伸びることになる。みんなの貴重なアイデアがやっとスタートし、ランチ企画も良い感じで少しずつ評判になっていくかな、と期待していた時だったけど、リモートワークが増え、ランチで訪れるお客様も少なくなっている。せっかく売り上げアップのためにと思っていたけれど、実際問題として現状維持がやっとだ。これはお客様の来店数や売り上げもみんな理解しているだろうから、想像できると思う。経営的なことについては、アルバイトスタッフには重すぎるテーマになるだろうということもあり、今回は遠慮してもらったけれど、その分、密度の濃いミーティングになればと思っている。ということで、まず、今回の延長の件とこれからについて、何か意見があれば言ってほしい。すぐに対応できることもあるかもしれないけれど、難しいこともあるだろう。おそらくそのほうが多いと思うが、まずに忌憚なく考えを出してもらい、みんなで共有したいと思う」
少し長い前フリになったが、私はみんなの顔を見ながら、現在の思いを自分なりに伝えたつもりだ。矢島とは昼前と夜の部の前、少し話すことができたので、多少は互いの心の内を理解している。でも、2号店のメンバーの様子は分からない。そういう意味では美津子や中村の意見を聞きたかった。ただそれは2号店のメンバーも同じはずだ。私の話は最初にしたが矢島の考えは2号店のメンバーは知らない。そういうことが頭によぎったので、私は矢島に視線を向けた。
矢島は私の意をすぐに理解したようで、立ち上がって話し始めた。全員、テーブルに着き、これまでのように自分の飲み物とちょっとした食べ物は用意してある。だからこそ、座った状態ではなく、きちんと立って話したかったのだろう。
「今朝、店長から夜のミーティングの話を聞きました。その前に宣言延長の話を聞いていましたので、仕事をしながら夜のミーティングで話せるようなことを考えていました。ランチのアイデアは俺から出させていただき、採用してもらいました。でも、さっき店長からお話があったように、期待していた昼の客数の伸びがリモートワークのおかげで伸びていません。でも、手間がかかるのは同じです。正直、このままの状態が続けば手間がかかる分、どんなものかと思いますが、いずれ宣言は解除されるでしょうから、短絡的な考えは無しにして、解除後のために何か工夫できればと考えていました」
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