15 / 182
2020年、感染拡大前夜 15
しおりを挟む
私のその日、美津子と同様、心身もとに快調で、仕事も何の問題もなくこなせた。
いつもの時間に帰ると、美津子がちょっと先に着いていた。
「ただいま」
一昨日とは逆で、この日は私が帰宅の挨拶をした。そして、私の顔を見るなり言った。
「あら、今日はいつもよりも良い表情ね。やっぱり午前中の整体が良かったのかしら?」
「そう? 良い表情って、もしかしたら惚れ直した?」
「えっ? 違うわよ。これまでは帰ってくると、疲れたような顔をしていた時があったじゃない。今日はそんな顔じゃないし、それがいつもと違った感じで・・・」
美津子はちょっと照れ臭そうに言った。私は自然にふるまっていたつもりだが、客観的に観るといつもと違っていたようで、雰囲気にも現われていたのだろう。
その時、一昨日のことを思い出した。美津子が施術を受けた日、やはり表情が違っていた。話によると、いつもよりも忙しかったようだが、そんな感じは全くなく、むしろ元気に見えていたのだ。美津子の言葉からそのことを思い出した。
「やっぱり身体を整えるって良いんだなあ。お互い、いつもと違うように見えたということは、やっぱり疲れは溜めないようにということなんだね。今までは思い出したような感じで行っていたけれど、これからはもう少し定期的に通うようにしようか。俺たちもだんだん身体に気を付けないといけない年齢になっていくんだし、自営というのは身体が資本だからな」
私は感慨深げに言った。言いながらいつもと今日を比べると、同じように仕事したのに主観的にも疲れをあまり感じていない。もう少し仕事をしても大丈夫なような気がしている。私はそのことを美津子にも言った。
「私も一昨日のことだけどまだ効果が残っているみたい。これまでは忙しかったりすれば夜、腰が重たかったけれど、今はそんな感じじゃないから」
私たちは改めて一昨日と今日、施術を受けて良かったと実感していたのだ。
「でも、昔行っていたところは次の日、揉み返しが起こったこともあったじゃない」
美津子が思い出したように言った。
「そうそう、そういうこともあったよね。ずいぶん固くなっているから力を入れて強くやらないと、と言いながらやられて、途中でやめてくれと言いそうになったこともあったよ」
「あら、あなたもそうだったの? 私は女だからそう感じていたのかと思っていたわ」
これまでこういう話はしたことはなかったが、改めて一口に整体と言ってもいろいろあるということを感じていた。
「でも、今は良い先生を見つけられて良かったわね。痛いだけの整体って、いつか身体が壊されそうな感じがしていたし・・・」
奥田の店に通うようになって初めて感じたことだったが、優しい整体というのがあり、それがこんなに効果的ということを改めて理解できたのは比較できたからであり、そういう意味では今までの経験も悪くはなかった、と思うようにした。
「ただ、奥田先生のところも、身体の表面を擦るだけといった感じじゃないよね。しっかり奥まで圧を感じるし、だけど力んでいるような感じがしない。そういうのが技術ということなんだろうね」
この日、こんな感じの話が続き、いつものようにビールを飲みながらとはならなかったが、お互いに気分が良かったのか、リビングでそれなりの時間が過ぎていた。何気なく見た壁の時計の針がいつの間にか進んでおり、明日もあるのでこのまま休むことにした。
いつもの時間に帰ると、美津子がちょっと先に着いていた。
「ただいま」
一昨日とは逆で、この日は私が帰宅の挨拶をした。そして、私の顔を見るなり言った。
「あら、今日はいつもよりも良い表情ね。やっぱり午前中の整体が良かったのかしら?」
「そう? 良い表情って、もしかしたら惚れ直した?」
「えっ? 違うわよ。これまでは帰ってくると、疲れたような顔をしていた時があったじゃない。今日はそんな顔じゃないし、それがいつもと違った感じで・・・」
美津子はちょっと照れ臭そうに言った。私は自然にふるまっていたつもりだが、客観的に観るといつもと違っていたようで、雰囲気にも現われていたのだろう。
その時、一昨日のことを思い出した。美津子が施術を受けた日、やはり表情が違っていた。話によると、いつもよりも忙しかったようだが、そんな感じは全くなく、むしろ元気に見えていたのだ。美津子の言葉からそのことを思い出した。
「やっぱり身体を整えるって良いんだなあ。お互い、いつもと違うように見えたということは、やっぱり疲れは溜めないようにということなんだね。今までは思い出したような感じで行っていたけれど、これからはもう少し定期的に通うようにしようか。俺たちもだんだん身体に気を付けないといけない年齢になっていくんだし、自営というのは身体が資本だからな」
私は感慨深げに言った。言いながらいつもと今日を比べると、同じように仕事したのに主観的にも疲れをあまり感じていない。もう少し仕事をしても大丈夫なような気がしている。私はそのことを美津子にも言った。
「私も一昨日のことだけどまだ効果が残っているみたい。これまでは忙しかったりすれば夜、腰が重たかったけれど、今はそんな感じじゃないから」
私たちは改めて一昨日と今日、施術を受けて良かったと実感していたのだ。
「でも、昔行っていたところは次の日、揉み返しが起こったこともあったじゃない」
美津子が思い出したように言った。
「そうそう、そういうこともあったよね。ずいぶん固くなっているから力を入れて強くやらないと、と言いながらやられて、途中でやめてくれと言いそうになったこともあったよ」
「あら、あなたもそうだったの? 私は女だからそう感じていたのかと思っていたわ」
これまでこういう話はしたことはなかったが、改めて一口に整体と言ってもいろいろあるということを感じていた。
「でも、今は良い先生を見つけられて良かったわね。痛いだけの整体って、いつか身体が壊されそうな感じがしていたし・・・」
奥田の店に通うようになって初めて感じたことだったが、優しい整体というのがあり、それがこんなに効果的ということを改めて理解できたのは比較できたからであり、そういう意味では今までの経験も悪くはなかった、と思うようにした。
「ただ、奥田先生のところも、身体の表面を擦るだけといった感じじゃないよね。しっかり奥まで圧を感じるし、だけど力んでいるような感じがしない。そういうのが技術ということなんだろうね」
この日、こんな感じの話が続き、いつものようにビールを飲みながらとはならなかったが、お互いに気分が良かったのか、リビングでそれなりの時間が過ぎていた。何気なく見た壁の時計の針がいつの間にか進んでおり、明日もあるのでこのまま休むことにした。
33
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる