151 / 174
内弟子物語 第Ⅶ話 解決7
しおりを挟む
中途半端に言葉が途切れると、余計に気になるものだ。御岳は藤堂に尋ねた。
「『ただ…』、何ですか?」
強い口調ではなかったが、ここはきちんと尋ねなければならないと思い、しっかりした口調での質問だ。
「うむ。空手のことだ。体力について、普通の生活ということならもう大丈夫だろう。しかし、内弟子として続ける場合の武術の稽古のほうなんだ、問題は…。体力的なことを考えて、今は一般生の稽古にのみ参加してもらっているが、それもなかなか難しいようだね。内弟子稽古は一般部より激しくなるので、今の状態で継続できるかという問題が出てくる。基本的に『活殺自在』を意識した部分が内弟子修業の根底にあるからね。『活』は問題なくても、もう一つの学び、『殺』とのバランスがある。内弟子修業の場合、両者の微妙なバランスの習得という目的があるが、その一方が難しいとなると、一度考えてみなければならない、ということだ」
藤堂は内弟子の意味を、しっかり目を見ながら改めて御岳に話した。
話を聞きながら、実は御岳のほうも、空手の稽古で自分の身体が以前のように動かないことに大変なもどかしさを覚えていたことを、改めて心の中で確認していた。内弟子の長男格としての立場もある。それが後輩たちに不甲斐ない姿を見せていることに、自分自身にもやりきれないものを感じていたのだ。もちろん、それはガンのためにこれまでの体力が戻っていないことが原因であり、決して御岳の問題ではないことは藤堂も理解している。御岳もそのことを理由に一方の学びを軽視するつもりもない。
そのため御岳自身、藤堂のもとで内弟子として続けていきたい、という気持ちはあるものの、もう一方では限界かもしれない、という気持ちも芽生えていた。藤堂もその辺りの気持ちを何となく感じていたこともあって今回の話になったのだが、そういう意味では御岳も大きなショックを受けたということはない。
「『ただ…』、何ですか?」
強い口調ではなかったが、ここはきちんと尋ねなければならないと思い、しっかりした口調での質問だ。
「うむ。空手のことだ。体力について、普通の生活ということならもう大丈夫だろう。しかし、内弟子として続ける場合の武術の稽古のほうなんだ、問題は…。体力的なことを考えて、今は一般生の稽古にのみ参加してもらっているが、それもなかなか難しいようだね。内弟子稽古は一般部より激しくなるので、今の状態で継続できるかという問題が出てくる。基本的に『活殺自在』を意識した部分が内弟子修業の根底にあるからね。『活』は問題なくても、もう一つの学び、『殺』とのバランスがある。内弟子修業の場合、両者の微妙なバランスの習得という目的があるが、その一方が難しいとなると、一度考えてみなければならない、ということだ」
藤堂は内弟子の意味を、しっかり目を見ながら改めて御岳に話した。
話を聞きながら、実は御岳のほうも、空手の稽古で自分の身体が以前のように動かないことに大変なもどかしさを覚えていたことを、改めて心の中で確認していた。内弟子の長男格としての立場もある。それが後輩たちに不甲斐ない姿を見せていることに、自分自身にもやりきれないものを感じていたのだ。もちろん、それはガンのためにこれまでの体力が戻っていないことが原因であり、決して御岳の問題ではないことは藤堂も理解している。御岳もそのことを理由に一方の学びを軽視するつもりもない。
そのため御岳自身、藤堂のもとで内弟子として続けていきたい、という気持ちはあるものの、もう一方では限界かもしれない、という気持ちも芽生えていた。藤堂もその辺りの気持ちを何となく感じていたこともあって今回の話になったのだが、そういう意味では御岳も大きなショックを受けたということはない。
10
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・
白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。
その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。
そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる