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内弟子物語 第Ⅳ話 怪我14

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 休憩が終わり、次の稽古になった。前半の疲れは大体解消している。そして、後半の組手に気持ちが集中している状態だ。
 全員、藤堂のそばに集合した。闘志むき出しで、すぐにでも身体を動かしたいという気持ちが表に表れている。藤堂は全員の顔を一通り見た上で、この日の組手稽古の注意点を説明した。
「これから組手を行なう。1回2分の時間を基本とするが、いずれかが1本を取るまで続ける。今回は間に1分間のインターバルを設けるが、極まらなければその繰り返しを何回も行なう。疲れないうちにしっかりと1本取るように」
 内弟子たちはお互いに顔を見合わせた。1本取るまでエンドレス、というところに全員、より闘志を掻き立てられたのだ。
「先生、1本取るまでは本当に何度もやるんですか?」
 龍田が質問した。何度も組手ができるかもしれないというところに、大変興味を示したからだ。龍田の場合、喧嘩の延長のような感じでイメージしているのかもしれないが、基本的には戦いを好む性格だ。これまでの組手稽古では同じ相手と続けて行うことはなく、相手を替えながら行なっていたので、きちんと決着が付くまで戦うという点に、これまでとは違う闘志を掻き立てられたのだ。
 全員防具を着けた。組手は防具付のルールで行われ、防具がなければ倒れているだろうと思える場合を1本とする。
 ただ、ここで付ける防具というのは、頭部はともかく、胴に関してはかなり薄く、実際にはとりあえず着けている、という感じだ。だから、防具付とは言っても、何も着けていないに等しい。それだけに、しっかりと身体を鍛えておくことも大切で、また打撃時の瞬間的な締めができることも必要になる。そのために、毎回のことながら、防具を着ける時には何とも言えない緊張感が走る。特に今日の場合、1本取るまでエンドレスというルールだから、いつも以上に緊張している。
 各自、独特の緊張感の中、組み合わせ行われた。組手を行う人数は少ないが、組み合わせの公平を図るため、くじ引きで決めることになった。内弟子は5人いるので1人はシードの形になる。大会などでは嬉しいことだが、稽古ではなるべくたくさんやりたい、というのが本心なので、実は一番引きたくないのがそのくじだった。
 結果は御岳と松池、高山と堀田の組み合わせになり、龍田が1回休みとなった。一番戦いたいと思う者がシードとなるのは皮肉だが、これもくじの結果だ。龍田は瞬間的には悔しいといった顔をしたが、すぐに平静さを取り戻した。
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