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内弟子物語 第Ⅳ話 怪我9

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 これは藤堂が外国人を多数指導した経験に基づくもので、技術も大切だが、もう一つ、文化的な側面を理解してもらうことで、より深い意識の形成ができると考えている。これから海外での指導もありえる内弟子の場合、そういう意識で学んでもらいたいところもあり、なるべく面白い話になるよう工夫している。
 ただ、そうなると松池のように空手道以外の経験者は、気持ちが上がらない懸念がある。
 藤堂はそれを見越して日本本土に渡来したところから、他武道についての話も入れるようになった。
 例えば、合気道の開祖、植芝盛平師範のエピソードや合気道の思想にも触れた。空手道史の講義と銘打っても、内弟子には他武道から来ている者いる。そういうケースに対する配慮だ。ここで話された話には裏話的なものもあり、松池の興味も大いにそそった。
 また、技術的な関連性についても言及した。例えば、伸筋を意識した身体の使い方という、合気道と空手道の意外な共通点があるなど、松池が学んできたことがここでも活きる、といった内容になっていた。
 実際、藤堂が教える技の中には、およそ空手道の技には見えないものもある。相手の力をうまく受け流したり、身体の反射を活用するなどは、松池が学んできた合気道にも通じる。
 一同は講義が進む中、内弟子として入門する前のことと重ね合わせていた。いつしか勉強嫌いだったはずの龍田までが、きちんと講義を聴くようになっている。
「龍田君、久々の座学、どうだい」
 講義の途中で藤堂が尋ねた。
「はい。最初はちょっと退屈でしたけど、だんだんおもしろくなってきました。英語とか数学の勉強は大嫌いでしたけど、やっぱり興味のあることについての勉強は座学でもちゃんと聴けます」
 スタートした頃とは違い、表情が明るくなっている。うまく自分の興味のある部分とリンクしたのだろう。
「そうか。それは良かった。でも、もし龍田君が外国で空手をやりたいとか思った時、それが英語圏であれば英語の勉強も必要なんだよ」
 改めて、諭すような感じて言った。
「その時は英語もしっかりやります」
 勢いでつい龍田の口から出た言葉に一同、爆笑した。
 その後、スポーツ化する空手道に対する藤堂の考えと、内弟子として学んでいる武道としての空手道の違いの講義になり、この日の座学は終了した。
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