私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第5章 遅れてきた新入生

303 聞きたくなかった

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 ルーク君が光魔法を使えるようになった原因が、まさか私にあるとは驚きである。
 知らないうちにやらかしてしまったと顔を青ざめる私に、ティネは何を勘違いしたのか、慌てたように言い募る。

『もちろん、すごいのはサラ様ですわ!何と言ったって、最上級魔法を使たのはサラ様ですもの!光の精霊達もサラ様の周りを取り囲んで鬱陶しかったと、リードが言ってましたわ』

 …いや、別にそこはどうでもいいんだけどね?

『本当は称号を授けたかったようですけれど、サラ様の腕の中にいる精霊王様とその傍にいるリードに気づいて、ほとんどの光の精霊が、慌ててその場から逃げたのですって。ふふっ♪無駄にプライドの高い光の精霊が無様に逃げ惑ったなんて、一目見てみたかったですわぁ』
「……」

 無駄にプライドが高くて、美形好き…。私の中の、光の精霊様に対するイメージがドンドン崩れていくのですが。

『負けずに残った上級精霊は、精霊王様にサラ様へ加護を授けさせてくださいと懇願したそうですわ。でも、精霊王様がそんな事をお許しになるはずがありません。最後にはそいつらも泣いて逃げ帰ったそうですわ』
「……」
 
 あーっ、聞こえない、聞こえない!私は何も聞いていない。マーブルがどや顔でこちらを見てるけど、それも見えてないったら、見えてないの!

「サラちゃん、どうしたの?」
「はっ!!」

 ティネとの会話に集中するあまり、周りへの注意が疎かになっていたようだ。アミーちゃん達はこちらを不思議そうに見つめていた。

「ううん。何でもないよ!」
「そう?」

 アミーちゃんの視線から逃れるように、手元のご飯に集中する。すでに、みんなは食事を食べ終わっており、私が食べ終わるのを待っている状態だ。

「ルークは4限目が始まるまでどうするんだ?」
「逆に聞きたいんだけど、みんなは空き時間はどうしているの?」

 いつの間にか光魔法の話も終わっていて、3限目の授業がないルーク君がみんなにおすすめの時間のつぶし方を尋ねる。でも…

「わたしはうまい具合に空いた時間がなかったのよね」
「俺も!」
「ごめんなさい、あたしもだわ」

 キャシーちゃんとハル君、アミーちゃんの三人は時間割の都合で、空き時間はない。なので、必然的に答えるのは私とフィン君の二人となった。

「前までは校庭の中を探索したりとかしてたんだけど、今はリプカのブラッシングしてることのが多いかなー」
「うっ!…ソルテがいつもごめんね」

 キャシーちゃんが気まずそうに謝るのには訳がある。
 隙あらばリプカの尻尾を枕代わりにするソルテがいるので、気づくとリプカの尻尾はヨダレやら寝ぐせやらですごいことになっているのだ。その尻尾を悲しげに見つめるリプカのため、フィン君はブラッシングに余念がない。
 …ブラッシングが終わっても、ふもふになった尻尾をまたソルテが枕にして寝るので、イタチごっこだったりするのだけど。

「気にしなくていいよー。リプカも本当に嫌ならもっと抵抗するだろうし。どうも、それを言い訳にブラッシングしてもらうのを楽しみにしてるみたいだから」
「そうなの?」
「きゅーん…」

 リプカを見れば図星だったのか、恥ずかしそうに前足で顔を隠した。かわいいなぁ。

「それにしても、四人もいながら、何の参考にもならない情報ばっかりだな!」
「あら、まだサラちゃんがいるわよ」

 アミーちゃんの言葉に、みんなの視線が一斉にこちらを向く。

「サラさんもマーブルのブラッシング?」
「そういう時もあるけど…」

 どうしよう?一つ心当たりはあるけれど、はたしてルーク君に提案してもいいものなのか。
 悩む私の頭の中には、とある女性が「かわいい子は大歓迎よーっ♪」と叫ぶ姿がはっきりと思い浮かぶのだった。 


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6/20  文章を修正しました。
   しっぽ→尻尾
   よだれ→ヨダレ
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