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第5章 遅れてきた新入生
298 いくつかの変化
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フェ様が王都を旅立って一か月、秋も終わりに近づいていた。
その間に、学校生活ではいくつかの変化や事件があった。
一つはイヴァンカ先生の代理の先生が決まったことだ。最初はもう一人いる女性の先生が代理を務める案が出ていたのだけれど、自分の受け持つ授業と重なる場合があることや、すべてを一人で受け持つのは難しいと辞退した結果、代わりの先生を見つけるまでの間だけと言う条件でなんとアマリア先生が受け持つことになったのだ。
アマリア先生と言えば、以前マーティン先生をお化けと勘違いした際に、大変お世話になった先生だ。あの先生ならきっと、差別することなく教えてくれるだろうと、話を聞いた時にはほっとした。
そして、それは間違っていなかった。以前のギスギスした雰囲気はなくなり、授業が楽しいとアミーちゃん達は嬉しそうだ。「このまま、アマリア先生のままでいいのに」と臨時なことを残念がっていた。
もう一つは、アナスタシア様とは一度だけ廊下で遭遇したことだ。
金髪に緋色の瞳のアナスタシア様は、華やかな容姿も相まって、とにかく目立つ人だった。
意志の強そうな眉に、少し釣り目気味の瞳が、ともすると冷たい印象に見える。だけれど、笑うと冷たさが抜けて、ハッとするほど魅力的に見えた。
この突然の遭遇は本当に偶然だったみたいで、アナスタシア様が驚いたようにこちらを見ていたのが印象的だった。
アナスタシア様はしばらく立ち止まった後、そばにいた女子生徒が呼び止める声を振り切ってこちらに一直線で向かってきた。
私は私で、アナスタシア様が誰なのかもわからずにキレイな人だぁと見ていたら、そのキレイな人が私を見つめたまま向かってくるから、どうすればいいのかと焦っていた。
「はい、そこまで」
「殿下っ!?なぜここに?」
…焦っていたら、いつの間に現れた王太子様が、私の前に立っていた。ちょうどアナスタシア様の前に立ちふさがる形だ。
一体いつの間に!?
「なんでだろうね?」
「ちょっ…!押さないでくださいましっ!!わたくしはまだ用事がっ」
「はいはい。話は私が聞くから向こうにいこうね。プリエールも一緒においで」
「は、はい」
王太子様はあっという間にアナスタシア様を連れて、どこかに行ってしまった。声をかける間もない早業だった。
あとで、アナスタシア様の他に、ジークに聞いた王太子様の婚約者候補の一人があの場にいたことに気づいたのだけど、アナスタシア様が印象的過ぎて、どんな人だったかは思い出せなかった。
それに、タイミングよく現れた王太子様のほうが気になるところだ。
「もしかして、私って見張られてたりするのかな?」
色々とやらかしている自覚はあるので、不安になってアクアに聞いてみたら、あっさり否定された。でも、否定の理由が『そんな不届き者がいたら、わたくし達が許すはずありませんわ』だったので、ちょっと怖かったのは内緒だ。…許すはずがないって、何をするつもりだろう。
ジャスパー君が学校に復帰した時は注目の的だった
復帰したジャスパー君は、召喚学の授業に現れることはなかった。別の授業を受けることになったのだ。本来なら許されないことなんだけれど、召喚獣と契約する前だったことや、事件の当時者ということもあって、すんなり変更が許可されたようだ。
ジャスパー君は事件について聞かれても、何も話すことはなく、ケビン君達としか話をしようとはしなかった。
「助けてもらっておいて、一言もお礼を言ってこないなんて!!」とキャシーちゃん達は憤慨していたけれど、私はお礼を言ってもらいたくて助けたわけではないので、特に気にしてはいなかった。
それよりも、私が証言したことについて何か言われるんじゃないかと、そちらの方が気になったぐらいだ。
ジャスパー君はそのことについても何も言ってくることはなかった。
事件以降、すっかり大人しくなったジャスパー君に、いつしかみんなの興味は薄れていった。
その間に、学校生活ではいくつかの変化や事件があった。
一つはイヴァンカ先生の代理の先生が決まったことだ。最初はもう一人いる女性の先生が代理を務める案が出ていたのだけれど、自分の受け持つ授業と重なる場合があることや、すべてを一人で受け持つのは難しいと辞退した結果、代わりの先生を見つけるまでの間だけと言う条件でなんとアマリア先生が受け持つことになったのだ。
アマリア先生と言えば、以前マーティン先生をお化けと勘違いした際に、大変お世話になった先生だ。あの先生ならきっと、差別することなく教えてくれるだろうと、話を聞いた時にはほっとした。
そして、それは間違っていなかった。以前のギスギスした雰囲気はなくなり、授業が楽しいとアミーちゃん達は嬉しそうだ。「このまま、アマリア先生のままでいいのに」と臨時なことを残念がっていた。
もう一つは、アナスタシア様とは一度だけ廊下で遭遇したことだ。
金髪に緋色の瞳のアナスタシア様は、華やかな容姿も相まって、とにかく目立つ人だった。
意志の強そうな眉に、少し釣り目気味の瞳が、ともすると冷たい印象に見える。だけれど、笑うと冷たさが抜けて、ハッとするほど魅力的に見えた。
この突然の遭遇は本当に偶然だったみたいで、アナスタシア様が驚いたようにこちらを見ていたのが印象的だった。
アナスタシア様はしばらく立ち止まった後、そばにいた女子生徒が呼び止める声を振り切ってこちらに一直線で向かってきた。
私は私で、アナスタシア様が誰なのかもわからずにキレイな人だぁと見ていたら、そのキレイな人が私を見つめたまま向かってくるから、どうすればいいのかと焦っていた。
「はい、そこまで」
「殿下っ!?なぜここに?」
…焦っていたら、いつの間に現れた王太子様が、私の前に立っていた。ちょうどアナスタシア様の前に立ちふさがる形だ。
一体いつの間に!?
「なんでだろうね?」
「ちょっ…!押さないでくださいましっ!!わたくしはまだ用事がっ」
「はいはい。話は私が聞くから向こうにいこうね。プリエールも一緒においで」
「は、はい」
王太子様はあっという間にアナスタシア様を連れて、どこかに行ってしまった。声をかける間もない早業だった。
あとで、アナスタシア様の他に、ジークに聞いた王太子様の婚約者候補の一人があの場にいたことに気づいたのだけど、アナスタシア様が印象的過ぎて、どんな人だったかは思い出せなかった。
それに、タイミングよく現れた王太子様のほうが気になるところだ。
「もしかして、私って見張られてたりするのかな?」
色々とやらかしている自覚はあるので、不安になってアクアに聞いてみたら、あっさり否定された。でも、否定の理由が『そんな不届き者がいたら、わたくし達が許すはずありませんわ』だったので、ちょっと怖かったのは内緒だ。…許すはずがないって、何をするつもりだろう。
ジャスパー君が学校に復帰した時は注目の的だった
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ジャスパー君は事件について聞かれても、何も話すことはなく、ケビン君達としか話をしようとはしなかった。
「助けてもらっておいて、一言もお礼を言ってこないなんて!!」とキャシーちゃん達は憤慨していたけれど、私はお礼を言ってもらいたくて助けたわけではないので、特に気にしてはいなかった。
それよりも、私が証言したことについて何か言われるんじゃないかと、そちらの方が気になったぐらいだ。
ジャスパー君はそのことについても何も言ってくることはなかった。
事件以降、すっかり大人しくなったジャスパー君に、いつしかみんなの興味は薄れていった。
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