私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第4章 王立魔法学校一年目

295 お茶会からの帰り道②

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「サラ、何をっ!?」
『サラ様!?』

 ジークとモスが驚きの声を上げる。私は首元から例のお守り袋を取り出すと、ジークの目の前に差し出した。

「これ!」
「お守り、ですか?」
「そう!お母さんに作ってもらったの。この中にはジークのイヤーカフが入れてあるんですっ」
「僕の?」
「うん!!」

 不思議そうに尋ねるジークに勢いよく頷くと、お守り袋の口を開いて、中にあるイヤーカフを見せた。

「このイヤーカフを私に渡してくれた時のこと覚えていますか?あの時、ジークは困った事があったら、イヤーカフを持って、会いに来てって言ってくれました。会ったばかりの私に親身になってくれて、すごくうれしかった」
「サラ…」
「お守り袋の上からイヤーカフをぎゅっと掴むとね、すごく安心するんです。だからね、ジークは私を助けてくれてるんだよ!!」
「……」
「えっと!だから、その……」
 
 自分でも何を言っているのか、途中からよくわからなくなってきた。感謝しているのは本当なのに、うまくそれを伝えれなくて、情けなくなってくる。
 でも、私の思いはジークに伝わったようだ。
 
「…ありがとう」
「っ!!こちらこそですっ!!」

 さっきまでとは違う本物の笑顔に、うれしくってこちらも笑顔になる。良かったと胸を撫でおろしつつ、お守り袋を再び服の中に戻していると、前方からコホンと咳払いが聞こえた。わざとらしい咳払いにジークを見れば、当人はなぜか熱心に外を見つめていた。

「外に何かありました?」

 一緒になって外を覗いて見るけれど、特に珍しいものは何も見えなかった。

「いえ、何も…。えーと、サラ?」
「はい」
「あのですね、僕のためにしてくれたことは十分理解しているんです」
「?はあ…」

 回りくどい言い方に首をかしげる。結局、何が言いたいのかな?

「理解しているのですが…、それでも異性の前で服の中に手を入れるのは…」
「服?…はっ!!」
 
 私ったらジークの目の前でとんでもないことをっ!?
 学校につくまでの間、とても気まずい思いをしたのは、まさに自業自得だろう。


◇◇◇


「…まいったな」

 サラを学校に送っていた後の馬車の中で、ジークは一人呟いた。
 ジークが情けないと呟いた本当の理由は、実のところ別にあった。
 お茶会の席で、リュミエルの口からランディー・ダフィルの名前を聞いた時、すぐにサラ親子の因縁の相手であるジェームズ・ダフィルのことが脳裏をよぎった。それでも、なんとか動揺を押し殺すことに成功できたと思っていた。まさか、それをリュミエルに悟られるとは思いもよらなかった。あの場では何とか誤魔化すことに成功はしたが、自らの未熟ぶりをジークは情けなく感じていた。
 それがつい言葉に出てしまったのだ。それをサラに聞かれてしまうとは、まさに痛恨の極みであった。
 だが、マーブルに口止めされている以上、サラに言うことはできない。それに、ジェームズの息子と良好な関係を築いているのであれば、波風を立てるのは望ましくない。悩んだ末、出てきた言葉があれだった。
 だが冷静になった今ならわかる。あれもまた自分の本心であったのだと。
 要は、自分は拗ねていたわけだ。だから、サラにそんな事ないと反論され、沈んでいた心が容易く浮上した。

『ジーク、大丈夫か?』
「セヴィ様、僕はまだまだですね」

 ジークは心配げに見つめるセヴィに苦笑いで答える。だが、その瞳の中にはある決意が宿っていた。
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