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第4章 王立魔法学校一年目
282 ダブルブッキング
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今日は王太子様とのお茶会の日だ。
「じゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」
「にー …」
そして、マーブルが月に一度、お仕事に出かける日でもある。
月に一度のお仕事…つまり、世界の調整をしに精霊様達の住処に戻る日だ。
既に何回も経験していることだとは言え、マーブルが私の傍を離れるのは寂しい。マーブルも同じ気持ちなのか、朝から元気がなくしょんぼりしている。
「私も頑張って来るから、マーブルも頑張ろう?」
「にゃん」
ここはママである私がしっかりしないと!
よしよしと頭を撫でながら優しく諭せば、先ほどよりも力強く返事してくれた。
私が学校に行くにあたって問題となったのは、このお出かけの日をいつにするかということだ。
私とマーブルは常に一緒だ。と言うことは、私の傍にマーブルの姿がなければが、すぐにマーブルの不在がばれてしまうわけで…。では、どうするか。
その悩みを解決してくれたのは、フェ様だ。
「学校の授業がお休みの日にしてはいかがですか?」
マーブルが出かける日は部屋にこもって、極力人と接しなければいい。それには、学校がお休みの日が最適だろう。そうフェ様から言われて、確かにと納得したのだった。
ただ、今回は私がお城に行く日とダブルブッキングしてしまうという問題が発生してしまった。
別の日にしてもらえば良かったのにって?猫が出かけるからダメですなんて王太子様に言えるわけがない!マーブルが精霊王様であることは、絶対にばれてはいけないのだ。
だからと言って、マーブルの大事なお仕事の日をずらすこともできない。
『変更は許さない』、モスの目はそう語っていた。
『ママっ!何かあったら、絶対に僕を呼ぶんだよ?すぐに戻って来るからね』
マーブルは子猫の姿から精霊王様の姿に戻ると、真剣な顔でそう言った。
お茶会で何かあるわけないのに、心配性だなぁ。…もしかしたら、私が粗相をするかもと心配してるのかな?
心配してくれるのは嬉しいのだけれど、これではどちらが保護者かわからない。それに、精霊王様の姿になったのに、お出かけする様子のないマーブルにモスの我慢もそろそろ限界のようだ。
これは不味いとマーブルに目配せするけれど、マーブルは全く気付かない。
『もしかしたら、青銀色のこんにゃく者?も来るかもしれないんでしょ?心配だなぁ。やっぱり別の日に…』
『いい加減にしなさいっ!』
ついにはマーブルの首根っこを掴むと、お説教が始まってしまった。
『放してよっ!僕の守役のくせに、僕に対しての扱いが雑すぎない?』
足をプランプランさせて怒るマーブルは殺人級の可愛さだ。けれど、モスは動じない。
『守役であればこそです。あなた様こそ、精霊王らしからぬ言動の数々を少しは反省するべきでは?そもそもあなた様には精霊王としての自覚が…』
これはお説教が長くなりそうだと思ったところで、『わかった!』とマーブルが話を遮った。
『本当にわかっていただけたのですか?』
『ちゃん仕事をしてくるから!いい加減放してよっ』
そこでようやくモスに放してもらえたマーブルは、二人のやり取りをぽかんと見つめていた私を振り返り、にっこり笑って言った。
『ママ、行ってくるねっ!!』
「う、うん。行ってらっしゃい」
そこからはあっという間だった。私が瞬きする間にマーブルは出かけて行ってしまった。前の時も思ったけれど、出かける時は本当に一瞬だ。マーブルのいたあたりをじっと見つめていると、モスに声をかけられる。
『サラ様、我々ももう部屋を出なければ…』
「あ、そうだね」
モスに促され、最後の仕上げをするべく慌てて取り出したのは…
「でも、まさかこれが、また役に立つ日が来るとは思っていなかったなぁ」
以前フェ様にいただいた、目の色以外はマーブルにそっくりの猫のヌイグルミだ。
前回私がお城に出かけた時、マーブルのことをアミーちゃんにお願いしていた。だからか、アミーちゃんは今回も当然のように預かると言ってくれた。普段だったらとても助かる話だったのだけれど、今回はマーブル自身もお出かけするわけで…。でも、アミーちゃんにお出かけするからなんて言えないので、部屋でお留守番してもらうからと言ってあるのだ。最初は一匹でお留守番なんてと心配していたアミーちゃんだったけれど、前回と違ってアミーちゃんにはお世話をするべき召喚獣がいるのだからと言って断った。
でも、最後まで心配そうだったアミーちゃんの様子からすると、マーブルの様子をこっそり見に来るのは十分にあり得る。なので、マーブルの寝床用のカゴにこのヌイグルミを入れておこうと考えたのだ。
部屋にいるときは、マーブルがこのカゴの中で眠っているのをアミーちゃんも知っているので、扉からのぞくくらいなら誤魔化せるはず!アミーちゃんなら眠っているのを無理に起こすこともないだろう。
目の色が見えないようかつ、眠っているように見せるのは少し難しかったけれど、なんとかそれらしくできたところで、ようやく私も部屋を出る。
目指すのは門の前だ。馬車がそこで待っているはずなのだけれど、すぐにわかるかな?
「じゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」
「にー …」
そして、マーブルが月に一度、お仕事に出かける日でもある。
月に一度のお仕事…つまり、世界の調整をしに精霊様達の住処に戻る日だ。
既に何回も経験していることだとは言え、マーブルが私の傍を離れるのは寂しい。マーブルも同じ気持ちなのか、朝から元気がなくしょんぼりしている。
「私も頑張って来るから、マーブルも頑張ろう?」
「にゃん」
ここはママである私がしっかりしないと!
よしよしと頭を撫でながら優しく諭せば、先ほどよりも力強く返事してくれた。
私が学校に行くにあたって問題となったのは、このお出かけの日をいつにするかということだ。
私とマーブルは常に一緒だ。と言うことは、私の傍にマーブルの姿がなければが、すぐにマーブルの不在がばれてしまうわけで…。では、どうするか。
その悩みを解決してくれたのは、フェ様だ。
「学校の授業がお休みの日にしてはいかがですか?」
マーブルが出かける日は部屋にこもって、極力人と接しなければいい。それには、学校がお休みの日が最適だろう。そうフェ様から言われて、確かにと納得したのだった。
ただ、今回は私がお城に行く日とダブルブッキングしてしまうという問題が発生してしまった。
別の日にしてもらえば良かったのにって?猫が出かけるからダメですなんて王太子様に言えるわけがない!マーブルが精霊王様であることは、絶対にばれてはいけないのだ。
だからと言って、マーブルの大事なお仕事の日をずらすこともできない。
『変更は許さない』、モスの目はそう語っていた。
『ママっ!何かあったら、絶対に僕を呼ぶんだよ?すぐに戻って来るからね』
マーブルは子猫の姿から精霊王様の姿に戻ると、真剣な顔でそう言った。
お茶会で何かあるわけないのに、心配性だなぁ。…もしかしたら、私が粗相をするかもと心配してるのかな?
心配してくれるのは嬉しいのだけれど、これではどちらが保護者かわからない。それに、精霊王様の姿になったのに、お出かけする様子のないマーブルにモスの我慢もそろそろ限界のようだ。
これは不味いとマーブルに目配せするけれど、マーブルは全く気付かない。
『もしかしたら、青銀色のこんにゃく者?も来るかもしれないんでしょ?心配だなぁ。やっぱり別の日に…』
『いい加減にしなさいっ!』
ついにはマーブルの首根っこを掴むと、お説教が始まってしまった。
『放してよっ!僕の守役のくせに、僕に対しての扱いが雑すぎない?』
足をプランプランさせて怒るマーブルは殺人級の可愛さだ。けれど、モスは動じない。
『守役であればこそです。あなた様こそ、精霊王らしからぬ言動の数々を少しは反省するべきでは?そもそもあなた様には精霊王としての自覚が…』
これはお説教が長くなりそうだと思ったところで、『わかった!』とマーブルが話を遮った。
『本当にわかっていただけたのですか?』
『ちゃん仕事をしてくるから!いい加減放してよっ』
そこでようやくモスに放してもらえたマーブルは、二人のやり取りをぽかんと見つめていた私を振り返り、にっこり笑って言った。
『ママ、行ってくるねっ!!』
「う、うん。行ってらっしゃい」
そこからはあっという間だった。私が瞬きする間にマーブルは出かけて行ってしまった。前の時も思ったけれど、出かける時は本当に一瞬だ。マーブルのいたあたりをじっと見つめていると、モスに声をかけられる。
『サラ様、我々ももう部屋を出なければ…』
「あ、そうだね」
モスに促され、最後の仕上げをするべく慌てて取り出したのは…
「でも、まさかこれが、また役に立つ日が来るとは思っていなかったなぁ」
以前フェ様にいただいた、目の色以外はマーブルにそっくりの猫のヌイグルミだ。
前回私がお城に出かけた時、マーブルのことをアミーちゃんにお願いしていた。だからか、アミーちゃんは今回も当然のように預かると言ってくれた。普段だったらとても助かる話だったのだけれど、今回はマーブル自身もお出かけするわけで…。でも、アミーちゃんにお出かけするからなんて言えないので、部屋でお留守番してもらうからと言ってあるのだ。最初は一匹でお留守番なんてと心配していたアミーちゃんだったけれど、前回と違ってアミーちゃんにはお世話をするべき召喚獣がいるのだからと言って断った。
でも、最後まで心配そうだったアミーちゃんの様子からすると、マーブルの様子をこっそり見に来るのは十分にあり得る。なので、マーブルの寝床用のカゴにこのヌイグルミを入れておこうと考えたのだ。
部屋にいるときは、マーブルがこのカゴの中で眠っているのをアミーちゃんも知っているので、扉からのぞくくらいなら誤魔化せるはず!アミーちゃんなら眠っているのを無理に起こすこともないだろう。
目の色が見えないようかつ、眠っているように見せるのは少し難しかったけれど、なんとかそれらしくできたところで、ようやく私も部屋を出る。
目指すのは門の前だ。馬車がそこで待っているはずなのだけれど、すぐにわかるかな?
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