248 / 278
第4章 王立魔法学校一年目
282 ダブルブッキング
しおりを挟む
今日は王太子様とのお茶会の日だ。
「じゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」
「にー …」
そして、マーブルが月に一度、お仕事に出かける日でもある。
月に一度のお仕事…つまり、世界の調整をしに精霊様達の住処に戻る日だ。
既に何回も経験していることだとは言え、マーブルが私の傍を離れるのは寂しい。マーブルも同じ気持ちなのか、朝から元気がなくしょんぼりしている。
「私も頑張って来るから、マーブルも頑張ろう?」
「にゃん」
ここはママである私がしっかりしないと!
よしよしと頭を撫でながら優しく諭せば、先ほどよりも力強く返事してくれた。
私が学校に行くにあたって問題となったのは、このお出かけの日をいつにするかということだ。
私とマーブルは常に一緒だ。と言うことは、私の傍にマーブルの姿がなければが、すぐにマーブルの不在がばれてしまうわけで…。では、どうするか。
その悩みを解決してくれたのは、フェ様だ。
「学校の授業がお休みの日にしてはいかがですか?」
マーブルが出かける日は部屋にこもって、極力人と接しなければいい。それには、学校がお休みの日が最適だろう。そうフェ様から言われて、確かにと納得したのだった。
ただ、今回は私がお城に行く日とダブルブッキングしてしまうという問題が発生してしまった。
別の日にしてもらえば良かったのにって?猫が出かけるからダメですなんて王太子様に言えるわけがない!マーブルが精霊王様であることは、絶対にばれてはいけないのだ。
だからと言って、マーブルの大事なお仕事の日をずらすこともできない。
『変更は許さない』、モスの目はそう語っていた。
『ママっ!何かあったら、絶対に僕を呼ぶんだよ?すぐに戻って来るからね』
マーブルは子猫の姿から精霊王様の姿に戻ると、真剣な顔でそう言った。
お茶会で何かあるわけないのに、心配性だなぁ。…もしかしたら、私が粗相をするかもと心配してるのかな?
心配してくれるのは嬉しいのだけれど、これではどちらが保護者かわからない。それに、精霊王様の姿になったのに、お出かけする様子のないマーブルにモスの我慢もそろそろ限界のようだ。
これは不味いとマーブルに目配せするけれど、マーブルは全く気付かない。
『もしかしたら、青銀色のこんにゃく者?も来るかもしれないんでしょ?心配だなぁ。やっぱり別の日に…』
『いい加減にしなさいっ!』
ついにはマーブルの首根っこを掴むと、お説教が始まってしまった。
『放してよっ!僕の守役のくせに、僕に対しての扱いが雑すぎない?』
足をプランプランさせて怒るマーブルは殺人級の可愛さだ。けれど、モスは動じない。
『守役であればこそです。あなた様こそ、精霊王らしからぬ言動の数々を少しは反省するべきでは?そもそもあなた様には精霊王としての自覚が…』
これはお説教が長くなりそうだと思ったところで、『わかった!』とマーブルが話を遮った。
『本当にわかっていただけたのですか?』
『ちゃん仕事をしてくるから!いい加減放してよっ』
そこでようやくモスに放してもらえたマーブルは、二人のやり取りをぽかんと見つめていた私を振り返り、にっこり笑って言った。
『ママ、行ってくるねっ!!』
「う、うん。行ってらっしゃい」
そこからはあっという間だった。私が瞬きする間にマーブルは出かけて行ってしまった。前の時も思ったけれど、出かける時は本当に一瞬だ。マーブルのいたあたりをじっと見つめていると、モスに声をかけられる。
『サラ様、我々ももう部屋を出なければ…』
「あ、そうだね」
モスに促され、最後の仕上げをするべく慌てて取り出したのは…
「でも、まさかこれが、また役に立つ日が来るとは思っていなかったなぁ」
以前フェ様にいただいた、目の色以外はマーブルにそっくりの猫のヌイグルミだ。
前回私がお城に出かけた時、マーブルのことをアミーちゃんにお願いしていた。だからか、アミーちゃんは今回も当然のように預かると言ってくれた。普段だったらとても助かる話だったのだけれど、今回はマーブル自身もお出かけするわけで…。でも、アミーちゃんにお出かけするからなんて言えないので、部屋でお留守番してもらうからと言ってあるのだ。最初は一匹でお留守番なんてと心配していたアミーちゃんだったけれど、前回と違ってアミーちゃんにはお世話をするべき召喚獣がいるのだからと言って断った。
でも、最後まで心配そうだったアミーちゃんの様子からすると、マーブルの様子をこっそり見に来るのは十分にあり得る。なので、マーブルの寝床用のカゴにこのヌイグルミを入れておこうと考えたのだ。
部屋にいるときは、マーブルがこのカゴの中で眠っているのをアミーちゃんも知っているので、扉からのぞくくらいなら誤魔化せるはず!アミーちゃんなら眠っているのを無理に起こすこともないだろう。
目の色が見えないようかつ、眠っているように見せるのは少し難しかったけれど、なんとかそれらしくできたところで、ようやく私も部屋を出る。
目指すのは門の前だ。馬車がそこで待っているはずなのだけれど、すぐにわかるかな?
「じゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」
「にー …」
そして、マーブルが月に一度、お仕事に出かける日でもある。
月に一度のお仕事…つまり、世界の調整をしに精霊様達の住処に戻る日だ。
既に何回も経験していることだとは言え、マーブルが私の傍を離れるのは寂しい。マーブルも同じ気持ちなのか、朝から元気がなくしょんぼりしている。
「私も頑張って来るから、マーブルも頑張ろう?」
「にゃん」
ここはママである私がしっかりしないと!
よしよしと頭を撫でながら優しく諭せば、先ほどよりも力強く返事してくれた。
私が学校に行くにあたって問題となったのは、このお出かけの日をいつにするかということだ。
私とマーブルは常に一緒だ。と言うことは、私の傍にマーブルの姿がなければが、すぐにマーブルの不在がばれてしまうわけで…。では、どうするか。
その悩みを解決してくれたのは、フェ様だ。
「学校の授業がお休みの日にしてはいかがですか?」
マーブルが出かける日は部屋にこもって、極力人と接しなければいい。それには、学校がお休みの日が最適だろう。そうフェ様から言われて、確かにと納得したのだった。
ただ、今回は私がお城に行く日とダブルブッキングしてしまうという問題が発生してしまった。
別の日にしてもらえば良かったのにって?猫が出かけるからダメですなんて王太子様に言えるわけがない!マーブルが精霊王様であることは、絶対にばれてはいけないのだ。
だからと言って、マーブルの大事なお仕事の日をずらすこともできない。
『変更は許さない』、モスの目はそう語っていた。
『ママっ!何かあったら、絶対に僕を呼ぶんだよ?すぐに戻って来るからね』
マーブルは子猫の姿から精霊王様の姿に戻ると、真剣な顔でそう言った。
お茶会で何かあるわけないのに、心配性だなぁ。…もしかしたら、私が粗相をするかもと心配してるのかな?
心配してくれるのは嬉しいのだけれど、これではどちらが保護者かわからない。それに、精霊王様の姿になったのに、お出かけする様子のないマーブルにモスの我慢もそろそろ限界のようだ。
これは不味いとマーブルに目配せするけれど、マーブルは全く気付かない。
『もしかしたら、青銀色のこんにゃく者?も来るかもしれないんでしょ?心配だなぁ。やっぱり別の日に…』
『いい加減にしなさいっ!』
ついにはマーブルの首根っこを掴むと、お説教が始まってしまった。
『放してよっ!僕の守役のくせに、僕に対しての扱いが雑すぎない?』
足をプランプランさせて怒るマーブルは殺人級の可愛さだ。けれど、モスは動じない。
『守役であればこそです。あなた様こそ、精霊王らしからぬ言動の数々を少しは反省するべきでは?そもそもあなた様には精霊王としての自覚が…』
これはお説教が長くなりそうだと思ったところで、『わかった!』とマーブルが話を遮った。
『本当にわかっていただけたのですか?』
『ちゃん仕事をしてくるから!いい加減放してよっ』
そこでようやくモスに放してもらえたマーブルは、二人のやり取りをぽかんと見つめていた私を振り返り、にっこり笑って言った。
『ママ、行ってくるねっ!!』
「う、うん。行ってらっしゃい」
そこからはあっという間だった。私が瞬きする間にマーブルは出かけて行ってしまった。前の時も思ったけれど、出かける時は本当に一瞬だ。マーブルのいたあたりをじっと見つめていると、モスに声をかけられる。
『サラ様、我々ももう部屋を出なければ…』
「あ、そうだね」
モスに促され、最後の仕上げをするべく慌てて取り出したのは…
「でも、まさかこれが、また役に立つ日が来るとは思っていなかったなぁ」
以前フェ様にいただいた、目の色以外はマーブルにそっくりの猫のヌイグルミだ。
前回私がお城に出かけた時、マーブルのことをアミーちゃんにお願いしていた。だからか、アミーちゃんは今回も当然のように預かると言ってくれた。普段だったらとても助かる話だったのだけれど、今回はマーブル自身もお出かけするわけで…。でも、アミーちゃんにお出かけするからなんて言えないので、部屋でお留守番してもらうからと言ってあるのだ。最初は一匹でお留守番なんてと心配していたアミーちゃんだったけれど、前回と違ってアミーちゃんにはお世話をするべき召喚獣がいるのだからと言って断った。
でも、最後まで心配そうだったアミーちゃんの様子からすると、マーブルの様子をこっそり見に来るのは十分にあり得る。なので、マーブルの寝床用のカゴにこのヌイグルミを入れておこうと考えたのだ。
部屋にいるときは、マーブルがこのカゴの中で眠っているのをアミーちゃんも知っているので、扉からのぞくくらいなら誤魔化せるはず!アミーちゃんなら眠っているのを無理に起こすこともないだろう。
目の色が見えないようかつ、眠っているように見せるのは少し難しかったけれど、なんとかそれらしくできたところで、ようやく私も部屋を出る。
目指すのは門の前だ。馬車がそこで待っているはずなのだけれど、すぐにわかるかな?
13
お気に入りに追加
4,597
あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。