私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第4章 王立魔法学校一年目

279 お仕置きの時間です①

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 58-①

「……なるほど、そういう事ですか」

 フリードの連続攻撃を躱しながらシルエッタは、そう呟いた。

 ……彼女は気付いた。影魔獣に命を吸われて、死ぬ寸前だった目の前の実験動物が突如として生気を取り戻した理由を。

「吸命剣の力ね……」

 吸命剣・妖月は、斬った相手の生命力を吸い、使い手に注ぎ込む……先程、あの実験動物の少年は、私が召喚した影魔獣を妖月で刺した。

 おそらく、妖月は突き刺した影魔獣の生命力を吸い取り、あの少年に注ぎ込んだはずだ。

 ……あの実験動物の体内に入り込んだ影魔獣も、宿主が死ねば自分も消えてしまう事くらいは本能的に理解しているはずだ。あの少年に巣食う影魔獣は、宿主の生命力の代わりに……妖月を通じて流れ込んできた生命力を餌として喰らったのだ。

 そして、体内の影魔獣が宿主の生命力を喰らうのを止めた事によって、あの少年は元気を取り戻した……と、大方そんな所であろう。

「あら?」

 フリードの攻撃をひらりと躱し続けていたシルエッタだったが、とうとう壁際まで追い詰められてしまった。

「追い詰めたぞ、シルエッタ!!」

 恐竜型影魔獣、《黒王》の頭部と化したフリードの右拳が “グルル……” と低く唸る。

「おう、観念せぇコラァ!!」
「そうです、もう逃げられませんよ!!」

 武光とナジミも包囲に加わった。

 だが、シルエッタは微塵も焦る様子を見せず、静かに微笑んだ。

「な……何がおかしい!?」
「ふふ……今に分かりますよ」

 武光とフリードがシルエッタに飛びかかろうとしたその時だった。

「隊長ーーー!!」

 工房の入り口を固めていたはずのクレナ、ミナハ、キクチナの三人が大慌てで工房内に入ってきた。

「たたたた大変ですっ!!」
「どないした、クレナ!?」

 慌てふためくクレナ達を見て、シルエッタはニコリと微笑んだ。

 奴らは私を追い詰めたと思っているかもしれないが……それは違う。既にこの工房は……私の召喚した三十体もの影魔獣達によって完全に包囲されているのだ。ジワジワとなぶり殺しに──

 だが、シルエッタの思考はクレナが発した言葉によって遮られた。

「て……です……天驚魔刃団が!!」

「「……は?」」

 奇しくも、武光とシルエッタが同じタイミングで同じリアクションをした次の瞬間……


 “バコーーーーーン!!”


 工房の壁をぶち破って一つの影が飛び込んできた。

「お、お前は……!!」
「よう、本体!! 吸命剣・妖月……返してもらうぞッッッ!!」


 影光が 現れた!!
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