私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第4章 王立魔法学校一年目

276 教室の内と外

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「全員、不合格ですわっ!!」
「不合格って…どうしてですかっ!?」

イヴァンカ先生の言葉に続いて、アミーちゃんらしき声が聞こえてくる。
話の内容から推測するに、カーテシーの実演は既に終わってしまったところのようだ。
私達は一足遅かったらしい。
でも、不合格って…
教室の中の様子が気になって、扉に近づこうとしたところで、ケリー先生に止められてしまった。
ケリー先生は身振り手振りで私達に屈むように指示をすると、自分も腰を落とした状態でジリジリと窓の前に近づいていった。
どうやらケー先生は窓から教室を覗こうと言う魂胆のようだ。
立ったままよりは目立たないにしても、誰かが窓の方に目をやれば一発でばれてしまいそうな隠れ方だ。
それでも悪びる様子もなく堂々と覗きをするケリー先生に、どうしようかとみんなで顔を見合わせる。
でも、そもそも最初から覗きが目的だったと思い出す。
中の様子も気になるし、ばれた時はばれた時と開き直って、ケリー先生に続けと窓に近づく。
ランディー君とスタンリー君はさすがに抵抗があったようで、立ち止まったままだったけれど、ケリー先生に「君達も、ほら早く」と再度促され、私達の後ろに並んだ。
「ランディー様を床に座らせるなんて」とスタンリー君は嘆いていたけれど、「なんだか、ワクワクするね」とランデイー君は少し楽しそうだ。
窓にへばりついたところで、恐る恐る目だけ覗かせると、教室の中ではイヴァンカ先生とアミーちゃん達のやり合いがヒートアップしていて、「せめて何が悪かったのかだけでも教えてほしい」とイヴァンカ先生に詰め寄っているところだった。

「どうして、ですって?前回のわたくしの授業をきちんと受けていれば、わかったはずですよ。である以上、わたくしは真面目に授業を聞いていない生徒にまで、親切に教えるつもりはございません」
「そんなっ」
「まったく。貴族科の皆さんを見習ってほしいものだわ。現に貴族科の皆様はとても忠実に再現してくれました。あなた達はなんでだ、どうしてだと不満ばかり…少しは反省なさいっ!」

真面目に聞いていないって…、そもそも質問しても教えてくれなかったのはイヴァンカ先生なのにっ!!
イヴァンカ先生のあまりにもひどい言い分に、すぐにでも教室に飛び込んでいきたかった。
でも、一番傷ついているだろうアミーちゃん達が、唇を噛んでこらえているのが見えたから、なんとか踏みとどまることだできた。

「ハル、我慢だよ」
「フィンっ、でも」
「シッ!…ここで俺達が出張っても、部外者が口出しするなと言われるだけだよ。それに、覗いていたことがばれたらどうするの?だから一般科の生徒はって、ぜったいに言ってくるよ。これ以上、隙を見せるようなことはしちゃダメだ」

くやしいけれど、フィン君の言うことはもっともなことだ。ランディー君達も「あの先生だったら、やりかねないね」と頷いている。
でも、やっぱりここでじっと見ているだけなのは、正直辛すぎる。
エミリちゃんも同じ気持ちなのか、今にも涙がこぼれそうな目でじっと教室を見つめていた。

「彼女はやりすぎたね」

自分の無力さにうちひし打ちひしがれていると、頭上からケリー先生の声が。
そうだ、ここにはケリー先生がいたんだった!
あまりにも静かすぎて、すっかり忘れていたケリー先生の存在を思い出す。

「ケリー先生、何とかならないのかよ」

ハル君がケリー先生にそう声をかけるのを、すがる思いで見つめる。
そんな中、教室では新たな展開を迎えていた。
 
「…きちんと教えてくれなかったのはあなたじゃないっ!!」
「キャシーっ!」
「んまぁぁっ!!!教師に向かってなんという口の利き方ですかっ!!」
「うるさいっ!あれだけ付きっきりで教えられれば、忠実にできるでしょうよっ!」

ついに我慢の限界が来たキャシーちゃんが、イヴァンカ先生に噛みついたのだ!

「わたし達は不真面目なんかじゃないっ!この一週間毎日カーテシーの練習をしていたんだからっ。何も知らないくせに勝手なこと言うなっ」
「なっなっなっ…」
「それにあなたのカーテシーを今日改めて見たけれど、サラの方がもっときれいだったもんっ!そっちの方が不勉強なんじゃないの?」
「キャシー、本当のことだとしても、言いすぎだからっ」
「ばかっ。アミー、それ止めてないから」
「あっ」

レイラちゃんの指摘に、アミーちゃんがはっとしたように手で口をふさぐけどもう遅い。
イヴァンカ先生の顔色は赤色を通り越して、赤黒く染まっていた。


---
イヴァンカが予想よりもひどいキャラになってしまいました。
当初はもう少しまともだったのですが(汗)
現代教育にいたら、間違いなく懲戒免職ものですね。
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