私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

文字の大きさ
上 下
203 / 278
第4章 王立魔法学校一年目

237 反省の朝

しおりを挟む
12/1 タイトルを変えました。


---

目を覚ましたら、ベッドの中だった。
勢いよくベットから起き上がると、モスがいつもと変わらない様子で挨拶してくれた。
だけど、私には挨拶を返す余裕もない。
だって、話の途中で寝てしまったのだ。

「モス!!ケルベロスは!?あの後どうなったの?」

モスにケルベロスが怒ってなかったかとベットに腰かけた状態のまま聞く。

『サラ様との話はあれで終了だったようなので、問題ありません』
「そうなの?」
『はい。ケルベロス自身もあの後すぐ……ではありませんでしたが、そう時間がたたないうちに帰りました』

『帰る時も怒った様子は見られませんでした』とモスに言われ、私はようやく安心することができた。
でも、そこでハタと気づく。

「私って、どうやって部屋まで戻ったのかな?」

モスには実体がないし、マーブルは実体があると言っても子猫だ。
私を部屋まで連れてくるのは、難しくなかったのかな?

『そこは魔法がありますから』

どうやら、マーブルが風魔法を使って私をベットまで運んでくれたらしい。
またマーブルに頼ってしまったとがっくり肩を落とす私を、モスが『これくらい頼ったうちには入りません』と慰めてくれる。

「でも、そうやって少しくらいならってマーブルに頼る機会が増えて、それが当たり前って思うようになっちゃったらどうしよう?」
『そうやって心配しているうちは大丈夫です。それにそうならないようにするため我々がいるのです』
 
『我々がサラ様に称号を与えた時のことをお忘れですか?』とモスに言われて思い出す。
そうだった。最初はモス達もケルベロスのように私とマーブルを引き離そうとしたんだった。
でも私が絶対マーブルの傍にいるんだって今回の時のように癇癪を起して、そうしたらなぜかモス達から加護をもらうことになったんだよね。
今考えてもモス達がなんで私に加護を与えようとしたのか不思議だったりする。
モスは私の前で膝をつくと、更に大きな体を曲げて私と視線の高さを合わせた。

『サラ様が精霊王様の力に頼りきりになったその時には、精霊王様がなんと言おうと我々がサラ様を諫めましょう。ですから、心配なさいますな』
「……きっとだよ?」
『必ず』

モスが力強く頷いてくれたところで、背中に暖かなものが触れていることに気づいた。
後ろを向くと、今の今まですやすやと眠っていたマーブルが私の背中にぴとりと引っ付いていた。
どうやら、私を慰めようとしてくれていたようだ。
いけない!マーブルに心配をかけるなんて、これじゃあマーブルのママ失格だ。しっかりしないと!

「マーブル、ごめんね。もう大丈夫だから!」
「にゃんっ!」

マーブルの頭を撫でると、マーブルは途端にうれしそうな顔になる。
モスにも話を聞いてくれてありがとうとお礼を言えば、『なに、これしきのこと』となんでもないことのように言う。
私もモスの十分の一でもいいから、頼りがいのある人間になりたいものだ。
うん?でも、モスは私よりすごく長生きしているはずだから、モスみたいになるのは難しいかな?
なんて考えていると、

くーーーっ

マーブルのお腹がかわいく鳴った。

「ふふっ。お腹すいちゃった?」
「に、にゃう」

恥ずかしそうに前足で顔を隠すマーブルは殺人級にかわいらしい。
思わず抱きしめたくなるけれど、今は早く着替えるのが先だとぐっとこらえる。

「すぐに着替えるからね」
「にゃん」

宣言通りに手早く着替えて、さあ部屋を出ようと一歩踏み出したところで部屋の扉をたたく音が。

「サラちゃん、起きてる?」

アミーちゃんがご飯を食べに行こうと誘いに来てくれたのだ。
急いで扉を開けるとそこにはアミーちゃんとキャシーちゃんの姿があった。
どうやら今日は私が一番お寝坊さんだったようだ。
二人に朝の挨拶をした後、一緒に食堂に向かう。

まだ、ジャスパー君の件をどうするかの問題は残っていたけれど、取りあえず食事の間だけは忘れてみんなと楽しく食事をしよう。
そう後回しにしていた私だったけれど、とある人の来襲であっという間に解決することになるのだった。

しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。