私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第4章 王立魔法学校一年目

236 真夜中の密会⑥

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ケルベロスの言う封印とは、創世時代に施された封印のことだった。
ケルベロスはある理由から、その封印を一生をかけて守り抜くと神に誓っていた。

「にゃ!?」

封印が破られたのかと驚くマーブルに、三つ首が首を揃って横に振る。

『まさかっ!僕達がいるんだから、そう易々と破らせるつもりはないよ。でも、今回の件はそいつらが関与している可能性があってね』

右の首が言うには、彼らが召喚されている最中に、その連中は封印の場所を辿ろうとしていたと言う。

『まあ、そいつらはもうこの世にはいないけれどね』

逆にそれを利用して、そいつらの場所を辿ってやったのだと右の首は嗤う。
その右の首の表情から察するに、彼らはすでにこの世に存在しないのだろう。
マーブルがそう考えている横で、右の首は彼らを見つけたときの状況を思い出していた。
暗い地下のような場所で、黒い祭服を着た集団は魔方陣を取り囲んでいた。
その場所には魔方陣の他に祭壇のようなものがあり、そこには……。

『もしかしたら……』と右の首は続けた後で、『いや、なんでもない』とすぐに言葉を濁す。
何を言いたかったのか気になったマーブルが何度問いかけても、『憶測でしかないから』とそれ以上話すことはなかった。

『とにかく、封印を解こうと考える連中がそいつらだけとは考えにくい。僕達も今以上に気を付けるつもりだけど、君も今の状況に浮かれて世界の調整を怠るような状況を二度作らないでくれよ』

しかも、そうくぎを刺されてしまっては、前科のあるマーブルは黙って頷くことしかできなかった。
しぶしぶ頷くマーブルを見て、右の首は密かに胸を撫でおろす。
そんな自分を左の首と中央の首が『言わなくて良いのかと』と言うように見つめてくるが無視する。
今の所はすべてが憶測と推測の域を出ていないのだ。
そうである以上、口に出すのははばかられた。
それに、今回犯行に及んだ連中と彼らが潜んでいた建物はすべて壊滅させたが、これが最後だとは到底思えない。
であるなら、精霊王に言うのはもう少し探ってからでも遅くはないだろう。
右の首はすやすやと眠るサラをちらりと見た後、そう考える。
マーブルやサラにくぎを刺しはしたが、右の首の本心としては精霊王に甘える相手ができたことを喜んでいたのだ。
せっかく楽しく過ごしているところを憶測で不安にさせることもないだろうと、黙っていることにする。

『さあ、言いたいことも言えたし、僕達はそろそろ帰らせてもらうよ』

右の首は腰を上げると、そうマーブルにそう伝える。
途端、早く帰れ帰れと急かすマーブルに右の首は思わず笑ってしまう。
以前会った精霊王よりも、今回の精霊王は随分子供っぽいようだ。
まあ、生まれ変わったばかりのようだから仕方がないのかもしれない。
もうすでにサラしか目に入らない様子のマーブルに、右の首は『最後に一つ』ともう一度くぎを刺すことにした。
なんだ?と見つめるマーブルをよそに、右の首は中央の首に顔を向ける。
すると、中央の首が厳かな声で語りだす。

『我が主の傷は今だ深く、かの御方の眠りも深い。しかし、どちらかあるいは両者が目覚めるその時、我らは選択を迫られるだろう。
それまでは我らもそなたも約定通り……』

まるで託宣のような言葉に、さすがのマーブルもモスと一緒に黙って聞いている。
その神妙な様子にケルベロスは満足げに頷くと、黒い靄となって暗闇にとけて消えた。
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