私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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1巻

1-2

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 なのでサマンサさんにお願いして、マーブルを今日一日預かってもらう予定でいた。ところが、マーブルが私と離れたくないと必死になってしがみついてきたのだ。結局、降参したのは私達のほうだった。
 あんなうるうるの瞳で見られたら、仕方がないよね。
 今はご機嫌にのどを鳴らすマーブルを見て、やっぱり連れてきてよかったと思うのだった。
 そうしてやっと私達の番がやってきた。
 お父さんが門番さんに身分証を渡すと、彼は驚いたようにそれとお父さんの顔を交互に見つめる。

「冒険者カードですね。B級とはすばらしい! しばらくこの町にご滞在されるのですか?」
「いや、とっくの昔に冒険者稼業は引退していてね。今はククル村の防衛団で働いている。たまに魔物を引き渡しにギルドに行くから、カードはそのまま使えるようにしているんだ」
「それは失礼しました。では、本日はどのようなご用件で?」
「今日は娘の能力鑑定を受けに来た」

 お父さんがこちらを見たので、お母さんと一緒に門番さんにペコリとお辞儀する。
 お父さんのカードのおかげか、すんなりと町の中に入ることができた。

「お父さんって、すごいんだねっ」
「あー。まぁ、ここらあたりは辺境だからな。魔物を倒せる冒険者は優遇してくれるんだ。王都に近いところは、もっと審査が厳しいぞ」

 すごい、すごいとはしゃいでいると、お父さんが照れ臭そうに鼻の頭をかきながら、種明かしをしてくれた。 
 門番さんの様子を見れば、それだけが理由じゃないのは私でもわかるのにお父さんったら。でも、変に偉ぶらないのがお父さんらしい。 
 門の近くにある預かり所で、馬のメアリーと馬車を預かってもらうと、あとはもう教会に向かうだけだ。
 お父さん達はこの町の教会に行ったことがあるのか、迷うそぶりもなく歩き出す。
 私はマーブルをケープのポケットの中に入れて、はぐれないように二人と手をつないだ。
 しばらく歩いていると、子供連れの家族が周りに増えてくる。
 私と同じ年くらいの子ばっかりだ。みんな教会に行くのかな?
 そんなふうに周りをキョロキョロ見回していたら、二人の足が止まった。

「サラ、ご覧。教会が見えてきたぞ」

 あわてて正面を向いた私の目に飛び込んできたのは、白くて大きな建物。
 ククル村の教会とは比べものにならない大きさに唖然とする。 
 教会の入り口に近づくと、すぐに全身に真っ白な衣装をまとった神官様がこちらに気づいてくれた。
 服装はククル村の神官様と同じで、少しほっとする。いつ見ても汚れが目立ちそうな衣装だ。

「能力鑑定をご希望ですか?」

 神官様に、お父さんが頷く。

「はい。ククル村からやってきました。娘の名はサラです」
「では、こちらへ」

 すぐに中へ案内しようとしてくれた神官様に、お母さんが声をかけた。

「神官様、教会の中に猫を連れていっても大丈夫でしょうか?」
「猫ですか?」

 私はあわててポケットからマーブルを出して、神官様によく見えるように目の前に差し出す。

「この子なんです。名前はマーブル。まだ小さいから家に置いてくるのがかわいそうで……一緒に連れていってもいいですか?」

 神官様は私の手の中にいるマーブルを見るため、わざわざかがんでくれた。

「おや、本当にまだ小さい子だ。大丈夫だよ。ひかえ室でご両親と一緒に待っていてもらおうね」
「ありがとうございます!」
「にゃーん」

 よかった! どうやら問題なく、マーブルも一緒に入ることができるみたい!
 神官様の案内で、私達は教会の中を進んでいく。一定の間隔をけてお花が飾られた廊下には赤い絨毯じゅうたんが敷かれている。白い廊下にえてとってもきれい。

「こちらがひかえ室になります」

 神官様が立ち止まり、部屋の扉を開けてくれる。その中では、何組かの親子がすでに座って待っていた。

「子供達は順番にお呼びいたします。能力鑑定が終わりましたら戻ってきますので、ご両親はそれまでの間、こちらでお待ちください」
「わかりました。ご案内ありがとうございます」

 神官様は必要な説明がすむと、最後にマーブルをひとでしてから部屋を出ていった。
 どうやら、神官様もマーブルの魅力にはあらがえなかったようだ。
 ひかえ室に置かれた長椅子にはあまりきがなく、どこに座ろうか悩んでいたら、近くに座っていた親子が声をかけてくれた。ありがたくお言葉に甘えて、隣に座らせてもらうことにする。
 声をかけてくれた男性は、ハッサンさんというらしい。この町で宿屋を営んでいるのだと自己紹介してくれた。
 奥さんの名前はエミナさんで、黒髪に茶色の瞳の女の子がアミーちゃん。
 キリッとした眉と吊り上がり気味の目が印象的な彼女は、初対面でもまったく物怖ものおじしないで話しかけてくれて、同い年なのにとても頼りになるお姉さんみたいな子だ。
 アミーちゃんにマーブルを見せてあげたら、瞳をキラキラさせてとってもかわいいって言ってくれた。

「――じゃあサラちゃんは、この町に来たのは今回が初めてなんだ」
「うん。ずっと村から出たことがなくって。だから、昨日はなかなか眠れなかったの」

 すっかりアミーちゃんと仲よくなった私は、お母さん達にも言っていなかった話まで打ち明けていた。
 馬車の中で何度も欠伸あくびをしていたから、お母さん達にはバレバレだったかもしれないけど。

「あたしも父ちゃんの仕事が仕事だから、この町から出たことがないのよね。能力鑑定を受けるのもこの町の教会でしょう? 鑑定の魔道具が違う場所にあったら、宿の仕事も休むことができたのに、がっかりよ」

 アミーちゃん達が教会にいる間は、叔母おばさんが店番をしてくれているんだって。
 だから、能力鑑定が終わったらすぐに家に戻らないといけないと残念そうに話してくれた。
 アミーちゃんはお宿の仕事を継ぐ気はないそうで、王立魔法学校への入学を狙っているらしい。

「王都にある王立魔法学校は優秀な子供達しか入学できない、まさに特別な学校なの。卒業生の中には有名な冒険者や、平民から貴族になった人もいるのよ。鑑定結果によってはこの王立魔法学校に試験なしで入学できるらしいから、あたしはこのチャンスにかけているの」
「またお前はそんな夢物語のようなことを言っているのか!」

 アミーちゃんの話が聞こえたのか、ハッサンさんがとがめるような口調で口を挟んできた。

「あたしは本気だから。もし能力鑑定で入学が認められたら入ってもいいって言ったの、忘れないでよね」
「期待しすぎてあとで泣くことになっても、父ちゃんは知らんからな」

 アミーちゃんはこの件で何度もハッサンさんと衝突していて、つい最近になってやっと入学許可をもぎ取ることに成功したらしい。
 そのかわり、入学許可証をもらえなかったら宿を継ぐことになるそうで、アミーちゃんのこの能力鑑定にかける思いは相当強いようだ。
 王立魔法学校かぁ。
 アミーちゃんの話を聞いて、私は将来のことなんてまったく考えていなかったことに気づく。
 神官様がカイお兄ちゃんの話をしたのも、そんな私を見透かしていたからかもしれない。
 神官様ごめんなさい。目先の能力鑑定のことで頭がいっぱいで何も考えていませんでした。
 心の中でククル村の神官様に謝っていると、いつの間にか神官様がやってきて、私とアミーちゃんの名前が呼ばれる。 
 いよいよ私達の番だ!

「行こう、サラちゃん」 
「うん!」 

 アミーちゃんの差し出した手をつかんで、立ち上がる。 
 すると、今まで私の膝で大人しくしていたマーブルが、私の服に爪をたてて離されまいと必死でしがみついてきた。

「フミーッ!」
「マーブル、いい子だからお母さんと一緒にここで待ってて。ね?」

 すぐに戻ってくるからとマーブルをなだめてなんとかお母さんにたくすと、アミーちゃんと神官様のもとへ向かう。
 私達以外にもう一人、桃色の髪の女の子も一緒だ。
 私達三人は神官様に連れられ、教会の奥に向かって進んでいった。
 廊下はしんと静まりかえっていて、私達の足音だけが響く。

「さぁ。着きましたよ」

 神官様が扉を開くと、中にいたたくさんの神官様達が私達を迎えてくれた。
 部屋の正面奥には台があり、その上には透明な水晶玉が置いてある。
 不思議なことに、水晶玉はあわく光り輝いていて、幻想的な雰囲気をかもしていた。
 あれが神官様の言っていた魔道具なのかな?
 その向こうには、白髪はくはつで紫の瞳の神官様が立っている。

「では、アルム村のキャシー、台の前に立ちなさい」
「はい」

 白髪はくはつの神官様がよく響く声で名前を呼ぶと、桃色の髪の女の子が返事をして台の前まで歩いていった。
 あの子の名前はキャシーちゃんっていうんだ。

「水晶玉に手を置いて」

 神官様の指示通りキャシーちゃんが水晶玉に手を置く。すると突然、彼女の目の前に透明な板が現れた!

「「きゃっ!」」
「大丈夫ですよ。あの板に能力鑑定の結果が表示されるのです」

 突然のことに驚いて叫んでしまった私達に、ここまで案内してくれた神官様が教えてくれた。
 キャシーちゃんの前に立った白髪はくはつの神官様は、板を見ながらなにやら紙に書いている。

「君は光の精霊様から好意を持たれているね。光の精霊様が好意を持つことはめったにないことだよ。魔力も十分あるし、他の精霊様達との相性もいいようだ。将来、他の精霊様からも好意を持たれる可能性が高い。とてもすばらしい鑑定結果だ」

 白髪はくはつの神官様が書き終わった紙を見ながら笑顔で説明した。

「ありがとうございます!」
「こちらが鑑定書だ。ご両親に見せなさい」

 神官様から紙を渡されて、キャシーちゃんがこちらに戻ってくる。
 キャシーちゃんはほっぺたを赤く染めて、嬉しそうだ。桃色の瞳がキラキラと輝いていて、とてもかわいい。
 次にアミーちゃんが呼ばれ、水晶玉に手を置くと、さっきと同じように板が現れる。

「君は火と水の精霊様に好意を持たれているね。相反する属性の精霊様両方に好意を持たれるとは珍しい。魔力量は普通だが、十歳ですでに二つの属性の精霊様から好意を持たれていることは、すばらしいことだよ」
「ありがとうございます」

 アミーちゃんがほっとした顔でこちらに戻ってきた。私と目が合うと、笑顔を見せてくれる。
 次はいよいよ私の番だ。緊張するよーっ!

「ククル村のサラ、台の前へ」
「はっ、はい~っ」

 緊張のせいか、変な声が出ちゃった。ガチガチに固まった足をなんとか前に出す。
 アミーちゃん達がとてもいい鑑定結果だったから、自分だけ悪い結果が出たらとまた不安になる。
 ダメ、ダメ! 結果なんて気にしないって数日前に決めたでしょ!
 不安な気持ちを打ち消して水晶玉に手を置くと、前の二人の時と同じように板が一瞬で目の前に現れた。
 近くで見た板は水晶玉のようにキラキラしていて、こちらからでは何が書いてあるかわからない。
 白髪はくはつの神官様のほうからは読めるみたいで、板に目を通しつつ、紙にすらすらと文字を書いていった。
 私はドキドキしながら神官様のお言葉を待つ。
 すると、板に書かれていたことをすべて書き留めたらしい神官様から、驚きの声が上がった。

「こっこれは!」

 予想外の反応に戸惑いながら、神官様の次の言葉を待つ。そんな私にかけられた言葉は思いがけないものだった。

「……なんであろう?」
「……へ?」

 困惑している様子の神官様には申し訳ないけれど、私に聞かれても困る。こっちからはなんて書いてあるのかわからないんだもん。
 こんなことはめったにないのだろう。周りにいる神官様達も戸惑っているみたい。

「あ、あの? 私の鑑定結果が何か?」

 いつまでも結果を伝えてくれないことが我慢できなくて、白髪はくはつの神官様に話しかけてしまう。
 でも白髪はくはつの神官様には私の声が聞こえなかったみたいだ。神官様はなにやらぶつぶつと独り言をつぶやくだけで、私の問いかけには答えてくれなかった。

「相性度は……おそらく高いのだ。しかし、これは……」

 白髪はくはつの神官様は突然がばっと顔を上げ、真剣なまなざしで私を見つめる。

「……ところで、君にひとつ質問をしたいのだが、いいかな?」
「はい!」

 質問ってなんだろう? 鑑定結果と関わりのあることかな?
 結果を教えてくれるなら、なんでもお話しします! そんな気持ちで神官様の質問を待つ。

「君は……、いや。あなた様は人間なのでしょうか?」
「はへっ⁉」
「フェビラル様っ⁉」

 白髪はくはつの神官様のとんでもない質問に、周りにいた神官様達もさすがに騒ぎ出す。
 私もわけがわからず大混乱だ。私って人間じゃないの?
 いやいや、お父さんもお母さんも人間だし、私はお祖父様似だってお母さんも言ってたもん。
 わたし、にんげん、だいじょうぶ。

「フェビラル様、いったいどうしたと言うのですかっ」
「そうですよ。お早く鑑定結果を――」
「鑑定では人間なのだ。しかし、称号が……」

 他の神官様に急かされて、白髪はくはつの神官様がようやく私の鑑定結果について話し出す。私はそのつぶやくような言葉を聞き逃さなかった。

「私にも称号があるんですか⁉」

 神官様がこんな変な反応をするなんて、いったい私にどんなおかしな称号がついているというのか。じらさずに早く教えて~!


「称号は……精霊王の母親、と」


 せいれいおう? 精霊おう……、精霊王⁉

「「「「「「……はぁーっ⁉」」」」」」

 みんなの心がひとつになった瞬間だった。
 私が精霊王様の母親⁉ 普通の精霊様にもお会いしたことがないのに、なれるものなのっ⁉
 神官様達が私の鑑定書を囲んで絶句する様子を、私はぼんやりと眺めることしかできなかった。


 その後、アミーちゃん達とは別れ、私だけ別室に連れていかれた。
 アミーちゃんとキャシーちゃんは鑑定結果が認められたらしく、帰りがけに王立魔法学校の入学許可証を受け取っていた。しかし、さっきとは違って二人の顔に笑顔はなかった。
 キャシーちゃんは先程とは打って変わって、なぜかふてくされたように唇をとがらせていたし、アミーちゃんは神官様に退出をうながされても、すぐには部屋を出ずにこちらを心配そうに見つめていた。
 アミーちゃんを安心させるためになんとか笑顔をつくったけれど、ひきつっていたかもしれない。
 私だけが通された部屋は、能力鑑定をした部屋やひかえ室より狭く、窓がひとつもない。なんだか息苦しい部屋だ。
 そこでお父さん達が来るのを待っているんだけど、神官様達は誰も一言ひとことも話さずに私をキラキラした目で見つめてくる。正直、とても居心地が悪い。
 それにしても、好意持ちと加護持ち以外にも称号が存在するなんて驚きだ。
 神官様達も初めて聞く称号のようだし、そんなものを私がさずかっているなんて思いもよらなかった。
 それに精霊王様かぁ。王様って言うくらいだから、精霊様の中で一番偉いんだよね?
 そんな精霊王様から、なぜ私が称号を……しかも母親なんていうよくわからない称号をさずかったのか、いくら考えても答えは見つからなかった。
 ひょっとして私が人より魔法を使えるのは、この称号のおかげなのかな?

「「サラっ‼」」

 尽きることのない疑問に一人で頭を抱えていると、青い顔をした二人が神官様に連れられてやってきた。

「お父さん! お母さん!」

 椅子から立ち上がりお母さんに抱きつくと、お父さんがお母さんごと抱き締めてくれた。

「いったい何があったんだ?」
「顔色が悪いわ。大丈夫?」

 お父さん達も詳しい説明はされずに連れてこられたみたい。
 二人にいっぱい心配されて、しっかり抱き締めてもらい、ようやく安心することができた。
 私達が落ち着くのを待って、白髪はくはつの神官様が話しかけてくる。

「サラ様はご無事です。ですが、私共も初めて聞く称号を精霊様より与えられておりまして……」
「「サラ様?」」

 神官様が私を様付けで呼んだことに、二人が首をかしげる。
 そうだよね! おかしいよね!
 この部屋に来るまでに何度もやめてほしいと伝えたのに、「精霊王様の母上様を呼び捨てすることはできない」と、絶対に呼び方を変えてくれなかったのだ。

「事情をご説明しますから、まずはおかけください」

 お父さんとお母さんに、能力鑑定をしてくれた白髪はくはつの神官様が椅子をすすめる。
 確か名前はフェなんとか様! 名前が難しくって覚えられなかったので、私の心の中ではフェ様と呼んでおこう。
 ……決して、様付け呼びの仕返しではないと言っておく。

「こちらをご覧ください」

 私達三人が座ると、フェ様が紙を目の前に置いた。
 先程の鑑定結果の紙だ。私もまだ内容を見ていなかったので、両親と一緒になってのぞき込む。
 いったい、どんなことが書いてあるんだろう。あの変な称号以外は普通でありますように!


  名前 サラ
  種族 人間
  年齢 十歳
  レベル 一
  体力 三〇+一〇
  魔力 二〇〇+一〇〇〇
  各属性との相性度
    火  SSS
    水  SSS
    風  SSS
    土  SSS
    炎  SSS
    氷  SSS
    嵐  SSS
    大地 SSS
    光  SSS
    闇  SSS
    聖光せいこう SSS
    闇黒あんこく SSS
    空間 SSS
    時空 SSS
    ――以下略――
  習得魔法 全属性
  スキル 家事手伝い、無詠唱、魔法無効、効果増幅、超回復
  称号 精霊王の母親


「「「……」」」

 読んでみたはいいけど、他の人の鑑定書を見たことがないので、私にはこの結果がいいものなのか、悪いものなのかわからない。
 SSSって、いいの? 悪いの?
 それに鑑定書に以下略なんて言葉、出てくるものなのかな?
 すべての能力を教えてくれるんじゃないの?
 体力と魔力量の欄に書いてある、プラスの数字もよくわからない。
 気になるところを上げればきりがないので、私は自分で考えることをあきらめ、お父さん達を見上げて…………後悔した。
 お父さんは口を大きく開けたまま、時が止まってしまったかのように動かないし、お母さんは口を手でおおって目を見開いている。こちらも動かない。
 フェ様達を見ると、全員がなぜか頷いている。「その気持ち、よくわかるよ」とでも言いたげだ。
 ……誰か私に説明してください。
 そう思いながら、とりあえずフェ様とは別の神官様がいれてくれたお茶を飲み、一息つく。
 お父さん達もお茶を飲んで、少し落ち着いたみたい。
 フェ様も二人の様子を見て大丈夫だと思ったのか、再び口を開く。

「鑑定結果には私共も非常に驚いております。なぜなら、私共も初めて見る内容が多くあるからです」
「あのっ。俺、いや、私は無学なもので、もしかしたらおかしなことを聞くかもしれませんが、よろしいですか」
「こちらもすべてにお答えできるかわかりませんが、どうぞ」

 お父さんの言葉に、フェ様が優しく答える。

「たくさんの属性との相性度が書かれていますが、十歳の娘にこんなにたくさんの属性との相性度が現れるものなんですかね?」
「ふむ」
「私が十歳の頃は火、水、風、大地の相性度が表示されたくらいで、高いものでもランクはBでした。それに私が知っている最高ランクはSです。しかし、ここにはSが三つ並んでいる。これはどういった意味なんでしょうか?」

 私もこれがどういう意味なのか知りたい。


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