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第4章 王立魔法学校一年目
220 無知の代償②
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魔法陣の結界を前足の一振りで易々と破ると、左と中央の首が揃って遠吠えをあげる。
「い、いやーーーっ!」
その姿を見た生徒の一人が悲鳴をあげる。
それを皮切りに生徒達は、ケルベロスから少しでも離れようと、一斉に逃げ惑う。
「きゃっ!」
「サラちゃん!」
そのため人混みに流され、あっという間にみんなと離ればなれになってしまった。
アミーちゃんに向かって咄嗟に伸ばした手はむなしく宙を切る。
「ど、どうしよう」
先生達が結界を張ってくれたからとすぐに行動に移さず、ジャスパー君とケルベロスの会話をのんきに聞いているだけだった自分を後悔してももう遅い。
中には先生の制止をふりきって、結界の外にでてしまう生徒もいた。
そんな大混乱の中、ケルベロスはと言うと、意外なことにその場から動くことはなく、生徒達が逃げ惑う姿を悠然と眺めていた。
「今のうちになんとかしないと」
アミーちゃん達と合流するためにも、まずはケルベロスをなんとかしないと!
ケルベロスが動いていない今がチャンスとわかっているのに、気が焦るばかりでいい方法が思い浮かばない。
焦る私とは対照的に、モスは不思議そうな顔でこちらを見ていた。
『サラ様はケルベロスが怖くないのですか?』
「え?」
どうやら、他のみんなと違ってケルベロスを怖がらないのが不思議だったようだ。
私だって怖い。
…怖いのだけど、モス達と最初に会ったときと比べれば、我慢できる怖さだったりする。
何せ初めて会う精霊様達に感動する間もなく、マーブルを返せと囲まれて至近距離で脅されたのだ。
これぐらいの恐怖なら、耐えられる!
でも、それを当人?当精霊?であるモスに言うのは憚られる。
「そ、それよりも今はケルベロスを何とかするのが先だから!」
結局、誤魔化すことにした。
ケルベロスを何とかしないといけないのは本当だしね!
モスもその通りだと納得してくれたのか、それ以上聞かれることはなかった。
前方で爆発音と火柱が上がる。
レベッカ先生がケルベロスに向かって魔法を打ち込んだのだ。
いつの間にか私の周りには人がいなくなり、魔法陣の周囲の様子がよく見えるようになっていた。
どうやらほとんどの生徒が校舎に逃げたようだ。
レーガン先生が何やら手をかざすと、ケルベロスと先生達の周りを結界で囲うのが見えた。
モニカ先生は先程まで持っていなかったはずの剣を手に持ち、ケルベロスに突きつけている。
先生達の攻撃を気にすることなく、ケルベロスは何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡していた。
『どうやら、ケルベロスは召喚主を探しているようですね』
「え?」
ケルベロスの近くにいるのは先生だけで、ジャスパー君はどこにもいなかった。
『ケルベロスがなぜ魔法陣から動かないかわかりますか?まだ契約が完了していないからです。召喚魔法は召喚獣を召喚し、契約を結ぶか、破棄することで完了します。今は途中で中断しているため、魔法陣に縛られている状態なのです』
「じゃあ、こちらに攻撃はしてこないの?」
『いえ、あそこから動けないだけなので攻撃はできます。それに、ケルベロスは魔法が使えますから、あまり意味はないかと』
「そんなっ!?」
喜んだのもつかの間、恐ろしいことを聞いてしまった。
『ですが、魔法陣のサイズに合わせて現れたため、本来の大きさよりもかなり小さくなっていますから、魔法の威力も遥かに落ちていかとは思います』
「あれで小さいのっ!?」
いまだってフェリシアと同じくらいの大きさがあるのに、本来はそれ以上大きいなんてビックリだ。
『それでも、あの者達の実力ではケルベロスを倒すことはできないでしょう』
モスの言う通り、ケルベロスに先生達の攻撃が効いている様子はまったくなかった。
前足を軽く振るうだけで魔法ははじかれ、先生達の体に無数の傷がつく。
「そんなっ!ど、どうすればいいの?」
『召喚した者を探しましょう』
「ジャスパー君を?」
『ケルベロスの試練を受けさせるのです。さすればケルベロスも満足して帰るでしょう』
「でも、試練って何をするの?」
もし怪我でもしたらと悩んでいると、モスが『サラ様』と優しく諭すような口調で話しかけてくる。
『あの者は自業自得です』
「っ!!」
『彼は度重なる忠告を無視して挑発した結果、ケルベロスの怒りを買ったのです。そしてその結果を受け止めることなく逃げた。そんな者の心配をする必要がありますか?』
「でもっ」
そう語るモスの瞳に、ジャスパー君に対する同情は一切見られなかった。
そればかりか、『あの様な者に召喚されるとは』とケルベロスに同情的ですらあった。
『彼は無知の代償を支払うべきだ』
モスのともすれば最後通告のような言葉に、私は…
「い、いやーーーっ!」
その姿を見た生徒の一人が悲鳴をあげる。
それを皮切りに生徒達は、ケルベロスから少しでも離れようと、一斉に逃げ惑う。
「きゃっ!」
「サラちゃん!」
そのため人混みに流され、あっという間にみんなと離ればなれになってしまった。
アミーちゃんに向かって咄嗟に伸ばした手はむなしく宙を切る。
「ど、どうしよう」
先生達が結界を張ってくれたからとすぐに行動に移さず、ジャスパー君とケルベロスの会話をのんきに聞いているだけだった自分を後悔してももう遅い。
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そんな大混乱の中、ケルベロスはと言うと、意外なことにその場から動くことはなく、生徒達が逃げ惑う姿を悠然と眺めていた。
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ケルベロスが動いていない今がチャンスとわかっているのに、気が焦るばかりでいい方法が思い浮かばない。
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ケルベロスを何とかしないといけないのは本当だしね!
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いつの間にか私の周りには人がいなくなり、魔法陣の周囲の様子がよく見えるようになっていた。
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先生達の攻撃を気にすることなく、ケルベロスは何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡していた。
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「え?」
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『ケルベロスがなぜ魔法陣から動かないかわかりますか?まだ契約が完了していないからです。召喚魔法は召喚獣を召喚し、契約を結ぶか、破棄することで完了します。今は途中で中断しているため、魔法陣に縛られている状態なのです』
「じゃあ、こちらに攻撃はしてこないの?」
『いえ、あそこから動けないだけなので攻撃はできます。それに、ケルベロスは魔法が使えますから、あまり意味はないかと』
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『それでも、あの者達の実力ではケルベロスを倒すことはできないでしょう』
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前足を軽く振るうだけで魔法ははじかれ、先生達の体に無数の傷がつく。
「そんなっ!ど、どうすればいいの?」
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