私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第4章 王立魔法学校一年目

217 みんなの召喚獣(ジャスパー編)⑯

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ぎくしゃくした雰囲気の中、ジャスパー君の詠唱が始まる。

「我は契約を望むものなり」

「我の呼ぶ声に応えよ」

「我に姿を見せよ」

「我は契約を望むものなり」

宣言通り、ジャスパー君は詠唱を間違えることなく最後まで言い切った。
問題なく詠唱が終わったことにほっとして、詰めていた息を吐き出す。
それはみんなも同じなようで、弛緩した空気が辺りを漂う。
しかし、安心するのはまだ早かった。
あとは召喚獣が現れるのを待つだけのはずなのに、なぜかジャスパー君は両手を前に突きだしおもむろに口を開く。
ほぼ同時にレベッカ先生がジャスパー君を止めようと動き出す。
でも残念ながら、一歩遅かった。

「地獄の門番、ケルベロスよ!我が門前に姿を現せ!」

ジャスパー君は止められる前に、詠唱を完成させてしまったのだ。
本当にあっという間の出来事だった。

「やった!成功したぞ!」
「何をバカなことを!早くこちらへ」

遅れてレベッカ先生がジャスパー君を魔法陣から引き離そうと強引に手を引っ張る。

「でも、指輪がっ…」
「この魔法陣でケルベロルが呼べるはずがありませんわ!それよりも、失敗したことで行き場のなくなった魔力が暴走しないように手を打たなければ」

レベッカ先生の言葉を受けて、すぐにモニカ先生とレーガン先生が動き出す。

「今から私とレーガン先生とで結界をはる。みんな、ここから動かないように」
「結界の中は安全です。召喚獣達が結界から飛び出さないよう、しっかりと抱えていなさい」

ジャスパー君を列に戻してすぐに、先生達は私達生徒を囲むように結界を張ってくれた。
ここまで一分もかかってない。
先生達の真剣な表情に、これからどうなってしまうのかと恐ろしい想像が浮かんでは消えて、震えることしかできなかった。

『大丈夫です。いざとなれば私が御身をお守りいたします』
「にゃっ!」

そうだ、私にはマーブルとモスがいた。
二人の頼もしい言葉に、なんとか落ち着きを取り戻すことができた。

(ありがとう。その時はみんなのこともお願いできますか?)
『仰せのままに』

これで何があっても、大丈夫なはず。
しかし、いつまでたっても何も起こる様子がない。

「おかしいわね。すぐに、暴発してもおかしくないのに」

ひょっとして、最悪な事態は免れたのかも!
そう安心さえしたのに。
けれども、現実は残酷だ。

「にっ!」
「マーブル、どうしたの?」

最初に異変に気づいたのは、マーブルだった。

『どうやら召喚は成功してしまったようですね』

マーブル達は警戒した様子で魔法陣を睨み付ける。

「え?でも、魔法陣は光ってないよ?」

召喚が成功したなら光るはずだと、思わず疑問が口に出る。

「サラちゃん、いま魔法陣が光ったって言った?」
「あ、えっと」

私の声がバッチリ聞こえてしまっていたようで、隣でアミーちゃんが不安そうにこちらを見つめていた。
何て答えようと悩んでいると、列の前方がざわめきだす。

「みんな見て!魔法陣がっ!!」

キャシーちゃんの言葉に魔法陣を見ると、光の代わりに黒い靄が沸き上がっているのが見えた。
異常な光景に、生徒から次々と悲鳴が上がる。

「みんな、落ち着いて!」

モニカ先生とレーガン先生が混乱する生徒達に呼び掛けるなか、レベッカ先生は魔法陣の前で呆然と立ち尽くしていた。

「そんな!魔力量は到底足りないはずなのに、なぜ召喚が成功しているのっ!?」

信じられないと言うように、レベッカ先生は目を見開き魔法陣から湧き出てくる黒い靄を見つめる。
黒い靄はどんどん膨れ上がり、やがて一つの形をとろうとしていた。
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