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第3章 王立魔法学校入学編

閑話 ランディ―の休日①

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ランディーは朝食を済ませたあと、家に帰るため学生寮を出た。
入学してから初めての休日と言うこともあって、門の外には貴族科の生徒をのせるための馬車が列をなしていた。

「ランディー様っ!」

自分の家の馬車はどこにあるのかと探していると、ランディ―の名を呼ぶ声が聞こえる。
ランディ―を呼んでいたのはダフィル家の執事だった。
しかし、執事の周りを探してもダフィル家の馬車は見当たらない。

「おはようございます」
「うん、おはよう。ダウニーが来てくれたんだね」

ランディ―に向かって深く腰を曲げて挨拶をしてくれるダウニーに、ランディ―も挨拶を返す。

「それで馬車はどこかな?」
「そ、それが······」

途端にしどろもどろになるダウニーの様子に、ランディーはすぐにピンと来た。

「ローズだね?」
「も、申し訳ありませんっ!」

ダウニーは肯定こそしなかったが、謝罪の言葉が全てを物語っていた。

「いいよ。僕と一緒の馬車に乗りたくなかったローズが無理を言ったんだろう?義妹がすまなかったね」
「い、いえ」

ローズも同じく伯爵家の娘とはいえ、あちらは妾の娘なのだ。
本来は嫡男であるランディーをさし置いて、一人で馬車を使って帰るなど許されることではない。
本来なら。

「ダウニーが残ってくれてると言うことは、また馬車は戻ってきてくれるのかな?」
「はいっ!御者には家に到着次第、こちらに戻ってくるよう言ってありますので、すぐに戻ってくるかと」
「なら、いいよ。ここで待ってるから」
「ランディー様······」

ランディ―があっさりと許すと、ダウニーは申し訳なさそうな、あるいは悲しげな眼差しでランディーを見つめるのだった。

◇◇◇

「「「「お帰りなさいませ、ランディー様」」」」
「ただいま」

御者が急いで戻ってきてくれたお陰で、ランディーは思いの外早くに屋敷に帰ることができた。
ダウニーが扉を開くと、使用人達が揃って玄関ホールでランディ―の帰りを迎えてくれる。
一週間ぶりのランディ―の帰宅に、使用人達の表情は喜びに満ちあふれていた。

「父上は?」

帰ったからには真っ先に当主である父親に挨拶をしなくてはならない。
ランディーの問いかけに、途端に表情を曇らせる使用人達。
ランディーの質問に答えたのは執事長のバルトだった。

「旦那様はローズ様と応接間でお話し中でございます」
「そう。じゃあ、父上には後から挨拶にうかがうことにするよ」
「それが······、旦那様がランディ―様をお呼びでして」
「僕も?」

ローズとローズの母親のアイーダとの時間を何よりも大切にするジェームズが、その場所にランディーを呼び出すなど普段ならあり得ないことだった。
何かあったのかとバルトに目で問いかける。

「何やらローズ様が学校で一般科の生徒に侮辱されたとか。旦那様は非常にご立腹でして」
「ああ、僕がいながらどうしてそんな事態になったのかとお怒りなんだね」

ローズは随分と自分の都合の良いように話したようだ。
全く反省をしていない義妹に、これからのことを思って、頭が痛くなる。
ランディーはくつろぐ暇もなく、渋々ながら応接間に向かうのだった。
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