164 / 278
第3章 王立魔法学校入学編
閑話 ランディ―の休日①
しおりを挟む
ランディーは朝食を済ませたあと、家に帰るため学生寮を出た。
入学してから初めての休日と言うこともあって、門の外には貴族科の生徒をのせるための馬車が列をなしていた。
「ランディー様っ!」
自分の家の馬車はどこにあるのかと探していると、ランディ―の名を呼ぶ声が聞こえる。
ランディ―を呼んでいたのはダフィル家の執事だった。
しかし、執事の周りを探してもダフィル家の馬車は見当たらない。
「おはようございます」
「うん、おはよう。ダウニーが来てくれたんだね」
ランディ―に向かって深く腰を曲げて挨拶をしてくれるダウニーに、ランディ―も挨拶を返す。
「それで馬車はどこかな?」
「そ、それが······」
途端にしどろもどろになるダウニーの様子に、ランディーはすぐにピンと来た。
「ローズだね?」
「も、申し訳ありませんっ!」
ダウニーは肯定こそしなかったが、謝罪の言葉が全てを物語っていた。
「いいよ。僕と一緒の馬車に乗りたくなかったローズが無理を言ったんだろう?義妹がすまなかったね」
「い、いえ」
ローズも同じく伯爵家の娘とはいえ、あちらは妾の娘なのだ。
本来は嫡男であるランディーをさし置いて、一人で馬車を使って帰るなど許されることではない。
本来なら。
「ダウニーが残ってくれてると言うことは、また馬車は戻ってきてくれるのかな?」
「はいっ!御者には家に到着次第、こちらに戻ってくるよう言ってありますので、すぐに戻ってくるかと」
「なら、いいよ。ここで待ってるから」
「ランディー様······」
ランディ―があっさりと許すと、ダウニーは申し訳なさそうな、あるいは悲しげな眼差しでランディーを見つめるのだった。
◇◇◇
「「「「お帰りなさいませ、ランディー様」」」」
「ただいま」
御者が急いで戻ってきてくれたお陰で、ランディーは思いの外早くに屋敷に帰ることができた。
ダウニーが扉を開くと、使用人達が揃って玄関ホールでランディ―の帰りを迎えてくれる。
一週間ぶりのランディ―の帰宅に、使用人達の表情は喜びに満ちあふれていた。
「父上は?」
帰ったからには真っ先に当主である父親に挨拶をしなくてはならない。
ランディーの問いかけに、途端に表情を曇らせる使用人達。
ランディーの質問に答えたのは執事長のバルトだった。
「旦那様はローズ様と応接間でお話し中でございます」
「そう。じゃあ、父上には後から挨拶にうかがうことにするよ」
「それが······、旦那様がランディ―様をお呼びでして」
「僕も?」
ローズとローズの母親のアイーダとの時間を何よりも大切にするジェームズが、その場所にランディーを呼び出すなど普段ならあり得ないことだった。
何かあったのかとバルトに目で問いかける。
「何やらローズ様が学校で一般科の生徒に侮辱されたとか。旦那様は非常にご立腹でして」
「ああ、僕がいながらどうしてそんな事態になったのかとお怒りなんだね」
ローズは随分と自分の都合の良いように話したようだ。
全く反省をしていない義妹に、これからのことを思って、頭が痛くなる。
ランディーはくつろぐ暇もなく、渋々ながら応接間に向かうのだった。
入学してから初めての休日と言うこともあって、門の外には貴族科の生徒をのせるための馬車が列をなしていた。
「ランディー様っ!」
自分の家の馬車はどこにあるのかと探していると、ランディ―の名を呼ぶ声が聞こえる。
ランディ―を呼んでいたのはダフィル家の執事だった。
しかし、執事の周りを探してもダフィル家の馬車は見当たらない。
「おはようございます」
「うん、おはよう。ダウニーが来てくれたんだね」
ランディ―に向かって深く腰を曲げて挨拶をしてくれるダウニーに、ランディ―も挨拶を返す。
「それで馬車はどこかな?」
「そ、それが······」
途端にしどろもどろになるダウニーの様子に、ランディーはすぐにピンと来た。
「ローズだね?」
「も、申し訳ありませんっ!」
ダウニーは肯定こそしなかったが、謝罪の言葉が全てを物語っていた。
「いいよ。僕と一緒の馬車に乗りたくなかったローズが無理を言ったんだろう?義妹がすまなかったね」
「い、いえ」
ローズも同じく伯爵家の娘とはいえ、あちらは妾の娘なのだ。
本来は嫡男であるランディーをさし置いて、一人で馬車を使って帰るなど許されることではない。
本来なら。
「ダウニーが残ってくれてると言うことは、また馬車は戻ってきてくれるのかな?」
「はいっ!御者には家に到着次第、こちらに戻ってくるよう言ってありますので、すぐに戻ってくるかと」
「なら、いいよ。ここで待ってるから」
「ランディー様······」
ランディ―があっさりと許すと、ダウニーは申し訳なさそうな、あるいは悲しげな眼差しでランディーを見つめるのだった。
◇◇◇
「「「「お帰りなさいませ、ランディー様」」」」
「ただいま」
御者が急いで戻ってきてくれたお陰で、ランディーは思いの外早くに屋敷に帰ることができた。
ダウニーが扉を開くと、使用人達が揃って玄関ホールでランディ―の帰りを迎えてくれる。
一週間ぶりのランディ―の帰宅に、使用人達の表情は喜びに満ちあふれていた。
「父上は?」
帰ったからには真っ先に当主である父親に挨拶をしなくてはならない。
ランディーの問いかけに、途端に表情を曇らせる使用人達。
ランディーの質問に答えたのは執事長のバルトだった。
「旦那様はローズ様と応接間でお話し中でございます」
「そう。じゃあ、父上には後から挨拶にうかがうことにするよ」
「それが······、旦那様がランディ―様をお呼びでして」
「僕も?」
ローズとローズの母親のアイーダとの時間を何よりも大切にするジェームズが、その場所にランディーを呼び出すなど普段ならあり得ないことだった。
何かあったのかとバルトに目で問いかける。
「何やらローズ様が学校で一般科の生徒に侮辱されたとか。旦那様は非常にご立腹でして」
「ああ、僕がいながらどうしてそんな事態になったのかとお怒りなんだね」
ローズは随分と自分の都合の良いように話したようだ。
全く反省をしていない義妹に、これからのことを思って、頭が痛くなる。
ランディーはくつろぐ暇もなく、渋々ながら応接間に向かうのだった。
11
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~
こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。
召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。
美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。
そして美少女を懐柔しようとするが……
異世界に行ったら才能に満ち溢れていました
みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。
異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
【完結】うさぎの精霊さんに選ばれたのは、姉の私でした。
紫宛
ファンタジー
短編から、長編に切り替えました。
完結しました、長らくお付き合い頂きありがとうございました。
※素人作品、ゆるふわ設定、ご都合主義、リハビリ作品※
10月1日 誤字修正 18話
無くなった→亡くなった。です
私には妹がいます。
私達は不思議な髪色をしています。
ある日、私達は貴族?の方に売られました。
妹が、新しいお父さんに媚を売ります。私は、静かに目立たないように生きる事になりそうです。
そんな時です。
私達は、精霊妃候補に選ばれました。
私達の運命は、ここで別れる事になりそうです。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。