私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第3章 王立魔法学校入学編

190 マーティン先生は人見知り

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「これからは身だしなみにも気を付けてくださいませんと!マーティン先生、わかりましたね!」
「はぃ······」
「さあ、貴方達も席につきなさい」
「「「「「「はい」」」」」」

クリーム色の髪にオレンジ色の瞳の先生が叱りつけながら、マーティン先生の身だしなみを整えていく。
あとから聞いたら、その先生は舞踏の先生で、名前はアマリア先生。
たまたま職員室にいたところを泣きながら駆け込んできた私たちのためにここまでやって来てくれたのだ。
それにしても、まさかお化けの正体が闇魔法学の先生だったなんて。
ナタリア先生の手によって、マーティン先生の顔を覆っていた髪が後ろに撫でつけられ、顔がはっきりと見えるようになった。
落ち窪んだ目にこけた頬、黒いマントで全身を覆い隠した姿ははっきり言って怖いという感想しか思い浮かばない。

「じゃあ、誤解は解けたのだから、もう大丈夫ですね。私はもう戻りますよ」

はっきり言って、全く大丈夫ではないのだけど、さすがにマーティン先生の目の前でそんなことを言う勇気はなく、私たちは泣く泣く、ナタリア先生を見送る。

「······」
「「「「「「······」」」」」」

ナタリア先生が出ていったあと、しばらく沈黙が続く。
マーティン先生は何度か口をパクパクと動かしたあと、ようやく絞り出すように話し始めた。

「は、初めま······て。マーティンで······す」

挨拶で既にいっぱいいっぱいの様子のマーティン先生に、はたして授業を続けることができるのか心配になる私たちだった。


しかし、それは意外にも杞憂に終わった。授業が始まると、マーティン先生は今までのおどおどした態度が嘘のように落ち着きを取り戻し、問題なく授業を進めていく。
丁寧な解説に、生徒の質問にも詰まることなく噛み砕いて答えてくれた。マーティン先生の真摯な態度は好感が持てた。これで、私たちの目を見て話してくれたらもっと良かったのになぁ。
マーティン先生の人見知りっぷりは、外見から想像がつかないほどひどかった。
マーティン先生は誰かと目が合うと、途端に挙動不審になり、授業を中断させて教壇の裏に隠れてしまうのだ。それを何度か繰り返したあと、私たちは決して先生と視線を会わせないようにしようと心に誓った。

キーンコーンカーンコーン

「でっ、では、授業はここまでで」

マーティン先生は終了の鐘が鳴るや否や、あっという間に教室を出ていってしまった。

「なんだか、すごい先生だったな」
「最初はすごく怖かったけれど、先生の方がもっとおどおどしてたから、なんだか怖がるのがバカらしくなっちゃった」
「でも、顔が怖いよね」
「あれで、教師が勤まるのかしら?」

教室ではすごい勢いで帰ってしまったマーティン先生の話で持ちきりだった。
次回は私たちになれてくれると良いけど、難しそうかなぁ?
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