144 / 278
第3章 王立魔法学校入学編
185 空き時間
しおりを挟む
「よし!やめっ!」
モニカ先生のかけ声が周囲に響き渡る。
「や、やったー!勝ったぞ!」
「負けたーっ!」
走っていた足を止め、みんなが思い思いに叫ぶ。
追いかける側の生徒たちの頑張りにより、逃げる側が残り12人になった時には負けることを覚悟したけれど、後半に追いかける側の体力が尽き、その隙をついて円の中に囚われていた私たちが救出された結果、逃げる側の生徒の勝ちとなった。
私も息を整えると、勝利を喜ぶ。
開始早々に捕まってしまった時はがっかりしたけれど、救出されて以降は捕まる事無く、無事に走りきることができた。
「見張りがいる中、見事に円の中にいる生徒を救出する事ができた逃げる側の勝利だな。おめでとう。だが、追いかける側の生徒も円の前で見張り役を作ったり、個々で追いかけるのではなく連携したりと、勝つために色々と工夫していたのは良かったぞ!要は追いかける側も逃げる側もよく頑張ったと言うことだな」
負けて悔しそうにしていたフィン君たちもモニカ先生に褒められ、嬉しそうだ。
最後にもう一度柔軟体操をして、運動した後の体をクールダウンさせ、授業は終了した。
「次の授業が武術の生徒は着替えなくて良いが、更衣室においてある着替えは置いたままにせず、持って食堂に向かうように」
モニカ先生はロープを回収すると、その場をあとにする。
じっと大人しく待っていたマーブルを抱き抱え、床にぺたりと座り込んでいたフィン君に近づく。
「フィン君、お疲れ様」
「お疲れー。やっぱり、時間内に全員捕まえるのは難しかったかー。最後は体力が追い付かなくって、時間切れになっちゃったよー」
逃げる側は人数が多かったので、追いかけられている時以外は休憩できたけれど、追いかける側はそういう訳にもいかず、時間一杯走っていたフィン君は少し辛そうに顔をしかめていたので、フィン君の体力が戻るまで、その場にとどまることにした。
「でも、フィンもだけどさ、選ばれた10人とも足早すぎだよなっ!追いかける側があと2人いたら、やばかったぜ」
「そうは言うけど、ハルは一度も捕まらなかったじゃないかー」
「この中だと、捕まらなかったのはハル君だけだね!わたしもアミーも結局捕まっちゃったし」
「へへっ。俺は足の早さは人並みだけど、体力には自信があるからな」
「あたしも体力には自信があったんだけどな」
「でも、アミーちゃんもキャシーちゃん長い間捕まらず、頑張って走ってたよね。私なんてすぐに捕まっちゃったんだから」
「サラちゃんは災難だったねー。最初の方で集中的に追いかけられてたの見てたよー」
「あ、あはは。足には自信があったんだけど、思い込みだったみたい。呆気なく捕まっちゃったよ」
フィン君にも見られていたとは。
こちらに話題をふられ、羞恥心で顔が勝手に赤くなってしまう。
「みんなサラちゃんを捕まえたって自慢したくて頑張っちゃったみたいだねー」
フィン君はそう言うけど、私を捕まえた位で自慢になるのかな?
「それだけ加護持ちは特別ってことよ」
アミーちゃんの言葉で思い出す。
そうだった。私はこの国に5人しかいない加護持ちだった。
私だって加護持ちは憧れの対象だったのに、いざ自分が加護持ちになって精霊様たちが日常にいるのが当たり前になってしまうと、そんな気持ちもすっかり忘れてしまっていたよ。
だって、精霊王様なマーブルは出会った当初から私が守るべき大切な家族で、まさか精霊王様だなんて思いもよらなかったし、モスたちは出会ってすぐに叱りつけると言うとんでもない所業をしたのにも関わらず、何故か加護を授かると言う不思議さ。
私が想像していた精霊様像とはかけ離れたみんなの姿に、畏怖の心なんてすっかりどこかにいってしまったんだよね。
今だって、私が落ち込んでないか心配そうに私の様子を伺うモスの姿は、偉大な精霊様にはとても見えない。
これは果たして良い事なのか、悪い事なのか、悩ましいところだなぁ。
「みんな、待たせてごめんなー。もう、大丈夫!」
密かに悩んでいたら、ずっと座っていたフィン君がみんなに声をかけ、立ち上がる。
どうやら、体力が戻ってきたようだ。
みんなで更衣室に戻るけど、次の授業が武術のアミーちゃんとハル君、フィン君は制服に着替える必要はないので、先に食堂に行ってもらうことにする。
私は4限目にしか授業がないし、キャシーちゃんは午後の授業自体ないので、急ぐ必要がないからだ。
「私たちは3限目がないから、先に食べちゃってて良いからね」
「ありがとう。じゃあ、先にいってるわね」
アミーちゃんを見送ったあと、制服に着替え始める。
「わたしはこれで授業は終わりだけど、サラはどうするの?4限目が始まるまで暇じゃない?」
「うん。でも、前から行きたいと思ってたところがあるから、そこに行こうと思って」
「行きたいところ?」
「うんっ」
確かに、この微妙な空き時間はなんの目的もないと退屈な時間になりそうだ。
でも、ずっと行ってみたかった場所があった私としては、まさに待ちに待った空き時間だった。
モニカ先生のかけ声が周囲に響き渡る。
「や、やったー!勝ったぞ!」
「負けたーっ!」
走っていた足を止め、みんなが思い思いに叫ぶ。
追いかける側の生徒たちの頑張りにより、逃げる側が残り12人になった時には負けることを覚悟したけれど、後半に追いかける側の体力が尽き、その隙をついて円の中に囚われていた私たちが救出された結果、逃げる側の生徒の勝ちとなった。
私も息を整えると、勝利を喜ぶ。
開始早々に捕まってしまった時はがっかりしたけれど、救出されて以降は捕まる事無く、無事に走りきることができた。
「見張りがいる中、見事に円の中にいる生徒を救出する事ができた逃げる側の勝利だな。おめでとう。だが、追いかける側の生徒も円の前で見張り役を作ったり、個々で追いかけるのではなく連携したりと、勝つために色々と工夫していたのは良かったぞ!要は追いかける側も逃げる側もよく頑張ったと言うことだな」
負けて悔しそうにしていたフィン君たちもモニカ先生に褒められ、嬉しそうだ。
最後にもう一度柔軟体操をして、運動した後の体をクールダウンさせ、授業は終了した。
「次の授業が武術の生徒は着替えなくて良いが、更衣室においてある着替えは置いたままにせず、持って食堂に向かうように」
モニカ先生はロープを回収すると、その場をあとにする。
じっと大人しく待っていたマーブルを抱き抱え、床にぺたりと座り込んでいたフィン君に近づく。
「フィン君、お疲れ様」
「お疲れー。やっぱり、時間内に全員捕まえるのは難しかったかー。最後は体力が追い付かなくって、時間切れになっちゃったよー」
逃げる側は人数が多かったので、追いかけられている時以外は休憩できたけれど、追いかける側はそういう訳にもいかず、時間一杯走っていたフィン君は少し辛そうに顔をしかめていたので、フィン君の体力が戻るまで、その場にとどまることにした。
「でも、フィンもだけどさ、選ばれた10人とも足早すぎだよなっ!追いかける側があと2人いたら、やばかったぜ」
「そうは言うけど、ハルは一度も捕まらなかったじゃないかー」
「この中だと、捕まらなかったのはハル君だけだね!わたしもアミーも結局捕まっちゃったし」
「へへっ。俺は足の早さは人並みだけど、体力には自信があるからな」
「あたしも体力には自信があったんだけどな」
「でも、アミーちゃんもキャシーちゃん長い間捕まらず、頑張って走ってたよね。私なんてすぐに捕まっちゃったんだから」
「サラちゃんは災難だったねー。最初の方で集中的に追いかけられてたの見てたよー」
「あ、あはは。足には自信があったんだけど、思い込みだったみたい。呆気なく捕まっちゃったよ」
フィン君にも見られていたとは。
こちらに話題をふられ、羞恥心で顔が勝手に赤くなってしまう。
「みんなサラちゃんを捕まえたって自慢したくて頑張っちゃったみたいだねー」
フィン君はそう言うけど、私を捕まえた位で自慢になるのかな?
「それだけ加護持ちは特別ってことよ」
アミーちゃんの言葉で思い出す。
そうだった。私はこの国に5人しかいない加護持ちだった。
私だって加護持ちは憧れの対象だったのに、いざ自分が加護持ちになって精霊様たちが日常にいるのが当たり前になってしまうと、そんな気持ちもすっかり忘れてしまっていたよ。
だって、精霊王様なマーブルは出会った当初から私が守るべき大切な家族で、まさか精霊王様だなんて思いもよらなかったし、モスたちは出会ってすぐに叱りつけると言うとんでもない所業をしたのにも関わらず、何故か加護を授かると言う不思議さ。
私が想像していた精霊様像とはかけ離れたみんなの姿に、畏怖の心なんてすっかりどこかにいってしまったんだよね。
今だって、私が落ち込んでないか心配そうに私の様子を伺うモスの姿は、偉大な精霊様にはとても見えない。
これは果たして良い事なのか、悪い事なのか、悩ましいところだなぁ。
「みんな、待たせてごめんなー。もう、大丈夫!」
密かに悩んでいたら、ずっと座っていたフィン君がみんなに声をかけ、立ち上がる。
どうやら、体力が戻ってきたようだ。
みんなで更衣室に戻るけど、次の授業が武術のアミーちゃんとハル君、フィン君は制服に着替える必要はないので、先に食堂に行ってもらうことにする。
私は4限目にしか授業がないし、キャシーちゃんは午後の授業自体ないので、急ぐ必要がないからだ。
「私たちは3限目がないから、先に食べちゃってて良いからね」
「ありがとう。じゃあ、先にいってるわね」
アミーちゃんを見送ったあと、制服に着替え始める。
「わたしはこれで授業は終わりだけど、サラはどうするの?4限目が始まるまで暇じゃない?」
「うん。でも、前から行きたいと思ってたところがあるから、そこに行こうと思って」
「行きたいところ?」
「うんっ」
確かに、この微妙な空き時間はなんの目的もないと退屈な時間になりそうだ。
でも、ずっと行ってみたかった場所があった私としては、まさに待ちに待った空き時間だった。
12
お気に入りに追加
4,597
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。