私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第3章 王立魔法学校入学編

174 悔しがる

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「結局、好意持ちの子がいるかわからなかったなぁ」

学生寮への帰り道、キャシーちゃんがポツリと呟く。

「機会がないと自分から好意持ちですって言いにくいんじゃないかなぁ」
「やっぱり授業中に自己紹介でもする時間がない限り難しいのかしら?光の精霊様の好意持ちって周りにいなかったから、もしいたら絶対に友達になりたかったのにっ」

キャシーちゃんは本当に楽しみにしていたようで、残念そうに肩を落としている。

「でも、同じ光魔法学の授業を受けている子同士、好意持ち関係なく友だちになれると良いね」
「そうね!…そうなんだけど、もう既にみんなグループを作っちゃってるのよねぇ」

私の言葉に勢いよく顔をあげたあと、目の前の光景を見てまた肩を落とすキャシーちゃん。
確かに一緒に教室を出た子たちは大体がグループを作っていて、一人で廊下を歩いている子はいなかった。

「ほ、ほら!光魔法学は私も一緒だし、一人じゃないよっ」
「光魔法学はね。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」

元気づけようとしたけれど、逆効果だったようでキャシーちゃんを余計に落ち込ませてしまう結果に…。

「そんなこと言わないで~!私も闇魔法学は誰も知り合いいないけど、新しい友達ができるよう頑張るから。キャシーちゃんも頑張ろう?」
「そ、そうね!」

それでもなんとか私のつたない励ましで、キャシーちゃんが立ち直ってくれた所で学生寮にたどり着く。

「二人ともお帰りなさい。マーブルも」
「「ただいまっ」」「にゃんっ」
「夕飯までまだ時間があるし、あたしの部屋で話す?」
「やったっ!」
「お邪魔していいの?」
「うん。マーブルもどうぞ」
「にゃん♪」


自分の部屋に荷物を置いてから、キャシーちゃんと揃ってアミ―ちゃんの部屋の扉を叩くと、アミ―ちゃんは部屋の中にいて、私たちを出迎えてくれた。
キャシーちゃんを毎朝起こすため、キャシーちゃんの部屋には何度もお邪魔してるけど、アミ―ちゃんの部屋は初めてだ。
部屋の作りはみんな一緒なのだけど、キャシーちゃんの部屋がぬいぐるみやピンク色の雑貨で可愛らしく飾り付けられているのとは対照的に、アミ―ちゃんの部屋は水色と黄色の雑貨がセンス良く置かれた、シンプルだけどとても居心地の良い部屋だった。
そんな部屋でマーブルをみんなで撫でたり、まったりと過ごしていたら、あっという間に夕飯の時間まであと少しとなっていた。

「いっけない。もうすぐ夕飯の時間よ」
「もうそんな時間?」
「そう言われたらお腹が空いてきたかも」
「にっ」
「そうそう、ハルたちが夕飯も一緒に食べようって言ってたわよ」
「本当!?じゃあ、早く行かなきゃ!」

ハル君の名前にキャシーちゃんが慌てて立ち上がると、素早い動きで扉の前に行き、こちらを振り返る。

「二人とも早く!」
「はい、はい」
「マーブルおいで」
「にゃん」

私の膝の上で寝そべっていたマーブルにポシェットの開け口を見せて、そのままポシェットに入ってもらう。


「あ!ハル君だ♪」

ハル君たちとは食堂に行く途中で合流することができた。キャシーちゃんがハル君を見つけて、嬉しそうに駆け寄る後ろをアミーちゃんと一緒についていく。


「おっ!良いところで会ったな。一緒に行こうぜ」
「うん!」
「二人ともお疲れさま―。授業はどうだった―?」
「先生が若くてビックリしちゃった!でも、空中に光る文字をサラサラって魔法で書き上げてね、凄かったよー」

フィン君に授業の感想を聞かれたので、一番印象的だった事を話す。

「へぇ!やっぱり、光魔法は他の属性とはひと味違うねー」
「四属性の魔法は誰でも使えるけれど、光属性と闇属性に関しては適正がないと使えないんだから、凄いのなんて当たり前よ!」

フィン君に誉められて、キャシーちゃんが誇らしげに答える。

「確かに回復魔法もあるし、使えたら便利よね」
「他の属性でも治癒魔法が使えるらしいわよ。もちろん、回復魔法ほど強力ではないらしいんだけどね」
「へぇ!あたしでも使えるのかしら?」
「土魔法も使えるのかっ?」
「風魔法はどうかなー?」

キャシーちゃんがサーシャ先生から聞いたことを披露するとアミ―ちゃんだけでなく、ハル君たちも興味を引かれたようだ。
私はキャシーちゃんの話で、土魔法にも治癒魔法があるのかモスに教えてもらおうと思っていた事を思いだし、モスの方を見るると、心なしかモスの眉間にシワがよっているような…。
いつもはあまり表情の変わらないモスの珍しい表情に思わずまじまじと見つめてしまう。

『治癒魔法が無くとも土魔法には攻防に優れた素晴らしい魔法がいくつもあると言うのに、あのわっぱが治癒魔法などに踊らされおって』

どうやら土魔法には治癒魔法はないようだ。
そう言ったモスの声があまりにも悔しそうで、モスに聞かないで良かったと密かに胸を撫で下ろす私だった。


―――
5/7 一部文章を修正しました。
誤:「光魔法学《わね》。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」
正:「光魔法学《はね》。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」

    
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