私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第3章 王立魔法学校入学編

159 授業1日目⑨

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「妹さん?」
「うん。僕の妹はなんと言うか…、そうだっ!君たちも召喚学の授業をとっていたよね。ジャスパー様を覚えているかな?僕の妹はジャスパー様と同じような考えの持ち主なんだ」
「「「「ああ~」」」」

すごく分かりやすい説明にみんなで納得する。

「自分の思い通りにならなかったら周りに当たり散らす困った子で。また、それを周りが容認するから増長してしまって…」
「それは…、すごいですねー」
「入学式の際に彼女が加護持ちとして注目されていたのが気に入らなかったみたいで。礼儀作法の授業は妹もとっているから、妹が何かしないかと心配なんだ」
「お前の妹なんだろう?お前が注意すればいい話じゃねぇか」
「ハル、お前ってやつは…。また、ため口になってるよー!」
「痛っ!」

フィン君がハル君を見つめ、呆れたように頭を振るとハル君の頭をポカリと叩いた。
ハル君とフィン君のやり取りが可笑しかったのか、少年は堪えきれずに笑い出す。

「あははっ!ハル君、だっけ?友達の言う通り、貴族科の生徒に話し掛けるときには言葉には気を付けた方が良いよ?僕はそういうのは気にしないけど、僕のような考え方をする貴族科の生徒は少数だろうね」
「けど、同じ学校で学んでる生徒なのに、なんで敬語を使わなくちゃいけないんだよ」

ハル君は納得ができないようで、不満げに口を尖らせている。
フィン君はそんなハル君の様子にがっくりと肩を落としてたけど、私はちゃんと自分の言いたいことが言えるハル君はすごいと思う。
私なんて謁見の時、緊張しちゃってあんなにしっかり話せなかったもん。
国王様の前で精霊様たちを説教していたことをすっかり忘れて、私はハル君を尊敬の眼差しで見つめる。

「学校の方針的には君の言う通りなんだけどね。でも、貴族って見栄をはる生き物だからさ。言葉使いを改めるだけで、余計な揉め事が回避できるならそちらの方が楽だと思うよ?」
「…わかった。いや、わかりました」

少年はハル君の言い分に怒る事なく、どうして言葉使いを改めた方が良いのか教えてくれた。ハル君もそんな少年の姿に何か思う所があったのか、今度は素直に言葉を改める。

「先程の質問の答えだけど、妹とは母親が違うんだ。だからか、あんまり僕の言うことは聞いてくれなくて、お役に立てなくてごめんね」
「「「えっ」」」
「あっ、ご、ごめんっ。俺そんなつもりで聞いたわけじゃ」

少年の家庭環境は複雑そうだ。フェアレイ様やフェアリス様と同じ双子なのかと思っていたのに、まさか同い年の異母妹だったなんて。驚く私たちと余計なことを言ってしまったと慌てるハル君を余所に、少年は「貴族ではよくあることさ」とけろっとしている。
 
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はランディー・ダフィル。君たちの名前を教えてもらっても良いかな?」
「え?」

ダフィル?

「俺はハル!ですっ」
「フィンと言います」
「エミリですぅ」
「サ、サラです」

ダフィルって、どこかで聞いた気が…?
どこで聞いた名前だった気になるところだけど、みんなの自己紹介する声に気づき、慌てて私も自己紹介する。

「やっと出てきてくれたね」
「あっ、すみませんでした」

えみりちゃんと一緒にハル君とフィン君の後ろから出て自己紹介すると、ランディー君に言われてしまった。
さすがにずっと隠れたままお話ししてたのは失礼だったかも。


「いや、頼もしい友達だね」
「はいっ!」

それは本当の事なので力強く答えると、ハル君とフィン君は照れたように頬をかいていた。

「ランディー様~!」

ランディー君を呼ぶ声が聞こえ、声の主を探すと同じく詠唱学を受けていた貴族科の生徒たちが廊下からこちらを見ていた。
どうやら、全然教室から出てこないランディー君を呼びに来たようだ。

「もう行かなきゃ。もし、僕の妹のローズが君たちに迷惑をかけるようなら僕の名前を出してみて。妹はそれでも止まらないだろうけど、きっと周りの取り巻きがローズを止めてくれるだろうから。じゃあ、失礼するよ」
「ありがとうございますっ」

ランディー君はそう言うと、その場を後にする。廊下で待っている貴族科の生徒の元に向かうランディー君のせに向かってお礼を言うと、立ち止まって手を振ってくれた。

「貴族にも良い奴がいるんだな」
「本当だねー。でも、ハルには本当にハラハラさせられたよー!今後は気を付けるんだよ!!」
「わかってるって」
「本当かなー?」
「それより!早くキャシーたちの所に行こうぜ!今いかないと確実にすれ違うぞ」

確かに!早くいかないと授業が終わっちゃう。ハル君の言葉にみんなで慌てて教室を飛び出す。怒られない程度の早足でアミーちゃんたちの元へ向かう途中で授業終了の鐘の音が響き渡る。間に合うかな?

歩きながらダフィルという名前をどこで聞いたのかを考える。

(モスはダフィルって名前に聞き覚えはある?)
『いえ、全く』
(最近聞いたんだと思うんだよね。どこだったかなぁ?)
『お役に立てず、申し訳ありません』

モスが心なしかしょんぼりしている。
どうやら私の質問に答えることができなかったのが悔しかったみたい。

(ううん!モスがいない時に聞いたんだって事がわかったよ、ありがとう!これからもよろしくね)
『はい!』

慌ててモスにお礼を言うと、無表情ながら瞳をキラキラさせて喜んでくれた。良かったー!
マーブルも特に反応を見せなかった事を考えると、マーブルも精霊様もいなかった時に聞いたのかな?
と言うことは…、わかった!謁見の間だっ!
フェ様を後見人にふさわしくないと糾弾した貴族がダフィル伯爵って呼ばれていたんだった。じゃあ、あの時の貴族がランディー君のお父さんなのかな?
私がどこで聞いた名前か思い出したと同時に教室に到着する。

「痛いっ!やめてっ!何すんのよ!」
「キャシーっ!?」
「キャシーちゃんっ!?」

教室の中からキャシーちゃんの悲鳴が聞こえ、慌てて教室に入ると、錆色の髪の少女がキャシーちゃんの髪を掴み、引っ張っていた。

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