私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

145 真実

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良い区切りが見つからず、いつもより長文になってしまいました(汗)
なので、今日の投稿はこの一回にします。

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精霊様に会えたらお聞きしようとずっと思っていたのだ。
何故、フェ様の前に姿を現してくれなかったのかって。
フェ様は嫌われているからだって言ってたけど、全然違う理由からかもしれないし。
でも、もしフェ様の予想通りだとしたら、フェ様を無駄に傷つけてしまうだけなので、アクアにこっそり聞いてもらう手筈になってたんだけど、聞いてくれたかな?

(アクア、フェ様の件、精霊様に聞いてくれたかな?)
『はいっ!聞いておりますわ!』
(ありがとう!じゃあ、教えてくれる?)

フェ様のためにも納得できる理由だといいんだけどなぁ。

『なんでも、ラブュはフェビラルに嫌われてるそうですの』
「え?」

予想外の言葉に思わず声が出る。

「どうしましたか?」
「い、いえ!何でもないです!」

フェ様に聞かれて、慌てて否定するけれど頭のなかにはハテナマークで一杯だ。フェ様が嫌われてるんじゃなくて、逆に嫌ってる?精霊様に会ったことがないとあんなに寂しそうに笑っていたフェ様が?まさかっ!

(フェ様本人が精霊様におっしゃったの?)
『いえ、違いますわ。フェビラルが物心つくまではよく会いに行っていたそうです。けれど、フェビラルが大きくなってから全然会えなくなって、疑問に思っていたら教えてもらったと』
(教えてもらったって、誰に?)
『名前はなんでしたかしら?そうそう、パウエルですわ!』
「パウエル?」

その人が精霊様に嘘を教えていたの?
でも、何でそんな嘘をつく必要があったのかな?

「今、パウエルと言いましたか?」
「あ!いえ、その!…精霊様からそのお名前が出たので、神官長様のお知り合いですか?」

気づかない内に、また声に出していたらしい。一瞬否定をしようかと思ったけれど、フェ様ならその人を知っているかもと思い直し、さりげなく(?)聞いてみる。すると、フェ様から聞いたパウエルさんの正体は驚くものだった。





「パウエルは前国王陛下の御名ですよ」
「へっ!?」   

前国王様って言ったら、フェ様のお兄さん、…だよね?
そんな人が何で嘘なんか…。
 
「ラブュ様がパウエルの話をしたのか?」

私とフェ様の会話を黙って聞いていた国王様から話しかけられる。けれど、その声はとても低くて冷たかった。
思わず国王様のお顔を見ると、先程の穏やかな顔とは一転、顔が強張り眉をつり上げた様はとても怖かった。思わす後ずさってしまう。

「陛下、父君を呼び捨てするのは…」  
「あんな人呼び捨てで構いませんっ!ラブュ様にもパウエルの話は聞きたくないと言っておいたのに!」            

国王様はそう言うと、精霊様がいるであろう辺りをキッと睨み付ける。
怒りの矛先が精霊様に向かいそうだったので、慌てて止める。

「あの!申し訳ありません!わたしが精霊様に質問してしまったからで、精霊様は悪くないんです」
「質問?」
「は、はい!あの…」

一瞬、話していいものか悩んだけれど、フェ様が嫌われたわけではないとわかった今、秘密にする必要はないかと思い直す。

「━と言うことなんです」
「私はラブュ様に嫌われていたわけではないんだな」

フェ様は初めて知った真実に呆然している。

「あの男はろくなことをしないっ!」

国王様はすごく怒っていた。実のお父さんなのに仲が悪いのかな。

「ですが、お祖父様は何故そんな嘘を?」
「リュミエル、あの男の事をお祖父様など呼ばなくてよい。どうせ、ラブュ様が叔父上と仲良くなることを恐れたのだろう。自分の王位継承を揺るぎないものにしたかったのだ。ふんっ!昔から悪知恵だけは働く」

怒りでじっとしていられないのか、国王様が部屋の中を歩き回る。
私と王太子様はどうすることもできず、国王様を見つめることしかできなかった。

「陛下、いや、アル落ち着きなさい。お前の剣幕に子供たちが怯えている」
「…叔父上、すみません。あなたの方がショックだったでしょうに。リュミエルとサラもすまなかったね」

私ったら、とんでもないことをしてしまったんじゃ…、と後悔していたので、国王様が落ち着きを取り戻してくれてほっとする。

「いえ、私こそすみませんでした。以前、神官長様から精霊様に会った事がないとお聞きしたことがあって、どうして会ってくれないのか理由を知りたくって」
「では、私のために?」
「本当は内緒で聞くつもりだったのに、大事にしてしまってごめんなさい」
「いえ、聞けて良かったよ。叔父上も何故教えてくれなかったのですか。私だったらすぐにラブュ様にお聞きすることができたのに」
「いや、アルが物心ついたときにはすでに王族を離れていて、決してお会いすることはできなくなっていたからね。今さら聞くことでもないかと」
「そんな!ラブュ様もショックを受けてますよ。知っていたら、王族を離れるのも反対したって」
「ラブュ様がそんなことを?ラブュ様、ありがとうございます」

フェ様は精霊様の言葉を国王様から聞いて嬉しそうに笑った。

『お互いに嫌い合っていたわけではないのに、会える機会を逃してしまうなんてなんだか切ないお話ですわね』

アクアが切な気に囁く。

(うん。称号をもう一度授けたりはできないの?)
『ラブュは最初の寵愛者との契約によって縛られた制約があって、自分の好きに称号を授けることができないのです』
『あら、アクアったら。あれは契約なんかじゃないわ!ラブュは自分が愛した人間の願いを忠実に守っているのよ。素敵よねぇ!』
『もう少し融通をきかせてもいいと思うけどな』

精霊様たちの話によれば、ラブュの最初の寵愛者はラーミル国の初代国王様で、彼を愛していた精霊様は当初、彼の血縁者すべてに寵愛を授けたそうだ。
しかし、それは精霊様への負担が大きいものだったらしい。それを心配した初代国王様は寵愛は直系の王族のみにするよう精霊様にお願いしたんだって。また、王族全員が寵愛持ちと知った他国や貴族に利用されることのないよう王家の中の秘密としたそうだ。

『サラ様、ラブュが礼を言いたいと言っております』
「お礼?」
『はい。フェビラルの気持ちを知ることができて良かったと』
「そっか。余計なことをしちゃったかと思ってたから、精霊様にそういってもらって嬉しいですって伝えてくれる?」
『畏まりました』

モスに精霊様への伝言を頼んでいると、王太子様に声をかけられる。

「サラ、先程は父上がすまなかったね」
「いえ。私が不用意な発言したのがいけなかったので」
「サラのせいではないよ。父上にお祖父様の話は禁句なんだ。僕が生まれる前後に色々と合ったらしくって、僕はお祖父様に会ったこともないんだよ」
「そうなんですか!?」
「生まれたばかりの頃はあったことがあるようだけど、僕は覚えてないからね」

まさかそこまで根深いものだったとは、いったい何が原因なんだろう。
王太子様が生まれた頃と言うことは12年前と言うことでしょ?
ん?12年前…?
私の中で何かが頭をかすめる。
でもそれが何か思い出す前に、王太子様に声をかけられ、すっかり消えてわからなくなってしまった。  
 
「サラ?ぼんやりして大丈夫かい?疲れてしまった?」
「あ、いえ」
「今日はすでに色々あったのだ。お疲れなのも仕方あるまい。そろそろ、学校に帰してやりたいのだが」
「そうですね。気づかず申し訳ない。いま、馬車の用意をさせます」

国王様がベルを鳴らすと、数分もたたない内に宰相様が現れる。

「お呼びでしょうか?」
「馬車を一台用意してくれ。まだ諦めきれずに残っている貴族たちに見つからないようにな」
「畏まりました」
「サラ、また学校でね」
「はいっ。失礼します」
「また、サーズ町に帰る前に会いに来る」
「叔父上、絶対ですよ!サラ、何か問題があったら、リュミエルを頼ってくれ。後見人は叔父上だが、王家も全面的に君の味方だからね」
「あ、ありがとうございます。王妃様たちにもよろしくお伝えください」

国王様たちにお別れの挨拶をして部屋を出ると、宰相様についていく。

「ダフィル伯爵はまだ城に残っているのか?」
「いえ、謁見が終わったら急いで城を出ていきましたよ。他の貴族たちもです。きっとどこかで密談でもしているのでしょう。しかし、諦めきれず居座っている貴族も数人おりますので、帰りは寄り道せず帰ることをおすすめします」
「わかった」

帰りの馬車は行きの豪奢な馬車と違って、シンプルな馬車だった。
見慣れた馬車にほっとする。

「貴族の目をごまかすため、申し訳ありませんがこちらの馬車でお帰りください」

馬車に乗り込みお城をあとにする。何台か豪奢な馬車とすれ違いドキドキしたけれど、呼び止められることはなかった。
まさかこの馬車に私たちが乗っているとは思わなかったみたいだ。


「あと三日ほどで入学式ですね」
「はいっ!学生寮にも続々と人が来て、賑やかで楽しいです」
「それは良かった」
「フェ様はいつまで王都にいれるんですか?」
「クリスから帰ってこいコールがかかるまでですかね」
「大丈夫なんですか?」
「クリスは優秀なので、大丈夫でしょう!」

フェ様はとてもいい笑顔で答える。
私が言いたかったのは、副神官長様に怒られないかって言う意味だったんだけど、大丈夫かな?
確実に副神官長様からお説教を受けるであろうフェ様を心配していると、フェ様が突然、真剣な顔でこちらを見る。


「サラ様、今日はありがとうございました」
「え?」
「ラブュ様の事です。今までラブュ様と会えなかったことを気にしてないつもりでしたが、やはりずっと意識の片隅に合ったようです。真実を知って、今はなんだか晴れやかな心地です」
「…神官長様が物心つく前はよく会っていたと仰ってましたよ」
「そうでしたか…」

フェ様はしばらく無言で窓の外を見つめていた。なんだかこの雰囲気を壊したくなくて、私も無言で窓を見つめる。

今度マーブルにフェ様とラブュ様を会わせてあげれないか聞いて見ようかな。
 私は窓を見ながらそんなことを考えていた。


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2/6  不自然な空白部分を訂正しました。

一部、不自然な改行や空白部分があったので訂正しました。
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