私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

134 最高神官長の思惑と神官長の優しさ

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「今日は色々とありがとうございました」

帰りの馬車の中でフェ様に今日のお礼を言う。
教会を出た後、私はフェ様に王都にある料理店に連れて行ってもらった。初めて入った高級料理店はとても緊張したけれど、食べる場所が個室だったこともあって、マーブルと一緒にご飯を食べることができて、マーブルも嬉しそうだった。それに、お母さんからテーブルマナーを習っていたのが功を奏して、フェ様にも褒められたしね。えへへ!

「最高神官長から良い返事がもらえてよかったですね」
「はいっ!でも、髪留めまで買っていただいて良かったのでしょうか?」

綺麗な箱に包装されたバレッタを落とさないように横に抱え込みながら、フェ様に問いかける。
ご飯を食べた後、フェ様に連れてかれたアクセサリー店で謁見の際につけるようにとバレッタを買ってもらったのだ。
最初は遠慮したのだけど、子供が遠慮するものではないと押しきられてしまった。
バレッタには緑と白のグラデーションの造花がついていて、朝露を表現したライトストーンがキラキラ光って、とても綺麗な髪留めだった。

「そこはすでに話してご納得していただいたと思っていたのですが?」
「けど、お金なら頂いた賞金が…」
「それは何かの時のために大切にとっておきなさい。それにお詫びの意味もあるのですよ」
「お詫びですか?」

特に心当たりがなく、首をかしげる。

「今日はお友だちと王都観光に行きたかったでしょうに、それを断ってこちらを優先したそうですね」
「ご存じだったんですか?」

まさか、フェ様が知っているとは思わなくって驚くと、フェ様は誰に聞いたのか教えてくれた。

「マリアから聞きました」

…マリアさんの前で話してないのに、何で知ってるんだろう?
外出届で推測したにしては嫌に断定的だし、ちょっと気になるところではある。

「でも、神官長様との約束の方が先ですから」
「そうだとしても、自分は行けないのに友達を快く送り出すことができるとは、中々出来ることではありません。流石に日にちを変更するのは難しかったので、少しでも王都を楽しんでもらいたかったのです」

まっすぐ学校に帰らずに、ご飯を食べに行ったり、アクセサリー店で髪留めを買ってくれたのはフェ様なりのお詫びと言うことなのかな?
私のためにしてくれた事なのだから、そんな気にしなくて良いのに。

『ここは素直にもらっておきな。フェビラルも髪留めを返されても使い道がなくて困るだけさ』
「それにとてもお似合いでしたよ!返すなんて悲しいことは言わず、是非使ってください!」
「…ありがとうございます」

流石にここまで言ってもらって、返すのも逆に失礼になるかと思い、受けとることにする。
このお礼はぜひ謁見の場でお返しすることにしようと思う。そのために他力本願で申し訳ないけど、アクアには頑張ってもらわなくっちゃ!

「そう言えば、最高神官長様に謁見の際に精霊様たち全員をお呼びするように念押しされていた件ですが」

話が一段落したところで、先程の最高神官長様との件に話は移った。

「あ、はい!私も気になってたのですが、何故あんなに念押しされたのでしょう?」
「きっと国王陛下は精霊様とご一緒に謁見に望むおつもりなのでしょう。それを私に伝える意図があったのだと思います。最高神官長はサラ様が精霊様の存在をご存じなのは知りませんからね。少しでもサラ様の味方が多い方が良いと考えて下さったのでしょう」
「そう言うことだったんですね」

あの会話にそんな意図があったとは!

「あの!最高神官長様にマーブルの存在を話さなくても良かったのでしょうか?」

先程考えていたことを思いきってフェ様に伝えてみる。

「いきなりどうしてですか?」
「最高神官長様は私の事助けてくださるっていってくれたのに、私は内緒の事が多いからなんだか申し訳なくって」
「やめておいた方がよいでしょうね」

てっきり賛成してくれると思っていたのに、意外にもフェ様は反対のようだ。

「何故ですか?」
「彼女が最高神官長だからです。お優しい方ですが、教会とサラ様を天秤にかけたら教会をとるでしょうし、そうでなくてはいけない立場です。真実をすべて話す事が誠実とは限りません。最高神官長のためにも話さない方が良いのですよ」
「はい…」

フェ様に優しく諭されて、反省する。確かに、自分が心苦しいから話すって、相手の事を全く考えてないのと一緒だよね。

「 マーブル様の正体を知る相手は少なければ少ないほど良いのです。まだ幼いサラ様にはお辛いでしょうが、よほどの事がない限り、これ以上誰にも話すことのないようお気をつけください」
「はいっ」

私はフェ様の言葉にしっかりと頷くと、フェ様はほっとしたように笑った。
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