86 / 278
第2章 王都へ
131 王都の教会②
しおりを挟む
神官様たちの案内で教会の中を進んでいく。教会の中は今まで行った教会と特に変わったところはなかったけれど、それも奥部に進むまでのことだった。教会の奥部にある扉の前で神官様たちが立ち止まる。扉の両側には神官服と少し趣が異なる衣装を身にまとい武装した男性が二人立っていた。
「彼らは最高神官長を守る神官騎士です。戦える神官とでも覚えておいてください」
神官様が彼らと話している間に興味津々で彼らを見つめていたら、フェ様が彼らの事を教えてくれた。
最高神官長様を守るだけでなく、巡回する神官様の護衛やアンデットが発生したときに神官様たちが浄化するまで戦ったりすることもあるんだって。とっても凄い人たちなんだなぁ。
神官騎士様の検問を受け、扉の奥に進む。
最奥部にある扉の前にも神官騎士様がいて、今までの教会にない厳重な守りにさすが教会本部だと感心する。先程と同じやり取りをした後、神官騎士様の一人が扉に向かって声をかける。
コンコン
「フェビラル神官長とクルル村のサラがお越しです」
「うむ。入りなさい」
扉を開くとそこは能力鑑定を受けた部屋に似た作りだった。赤い絨毯が一直線に敷かれた先に台ではなく大きな椅子があり、そこに一人の老婦人が座っていた。
白髪の長い髪を三つ編みで一つにまとめて、片側にたらしていた。真っ白な神官服には金の縁取りがされ、特別な神官服なのがわかった。
彼女の座っている場所や彼女の周りを数人の神官様が控えている様子から、彼女が最高神官長様なのがわかった。
紺の瞳が私とフェ様の姿をとらえると、ふと目元が優しく細められる。
「私が今代の最高神官長のルシアです。サラさんにお会いできて嬉しいわ。フェビラルはお久しぶりね」
「は、初めましてサラです」
「お久しぶりでございます」
フェ様と二人で最高神官長様にご挨拶する。優しそうな人で良かった。
「椅子に座ったままでごめんなさいね。もう年なものだから。本当はこんな謁見の間じゃなくて、応接間でみんなで座りながらお話ししてもいいんじゃないかと思うんだけど」
「規則ですので」
最高神官長様の言葉にすかさず釘を刺す神官様。他の神官様も同意見のようでうんうんと頷いている。
「もう!みんな頭が固すぎるわっ。フェビラルもそう思うわよね?」
頬を膨らませ神官様に文句を言う姿は少女のように可憐だった。
「相変わらずのようですね。お元気で安心しました」
フェ様はニコニコしながら最高神官長樣と神官様たちのやり取りを見ている。
「体はよぼよぼですけどね!さて、本題に入りましょうか。謁見理由はサラさんの事だとお聞きしてるけれど?」
「はい。新たな加護持ちが現れたことは既にご存じの事だと思いますが、その新たな加護持ちが彼女なのです」
「まあ!」
ざわっ!
フェ様の言葉に最高神官長様と神官様たちが驚いたようにざわめく。
「まあ!まあ!私も国王陛下との謁見の際に立ち会う予定ですから、少しは聞いていますけれど貴女がそうだったの。国王陛下ったら複数の精霊様のご加護持ちってことしか教えてくださらなかったのよ。余計な情報を入れずに貴女を見て欲しいと言われて」
「おや、陛下はそんなことを言ってましたか。では、陛下の意向を無視するかたちになってしまいましたね」
フェ様は最高神官長様の言葉に面白そうにニヤリと笑ってるけど、フェ様の言う通り、国王様に逆らってしまったことになるんだよね。
ど、どうしようっ⁉️
「おほほっ。どうせわかってて此方に来たのでしょう?貴方のその顔を見れば丸わかりですよ」
「はっはっは!最高神官長にはお見通しでしたか」
何故かワタワタしてるのは私だけで、二人は楽しそうに笑いあっている。
「まあでも、サラさんと直接会うのを禁止されたわけではありませんからね。国王陛下の意向を無視したことにはなりません。と言うことにしておきましょう」
最高神官長様はいたずらっぽく笑うとはっきりと言い切った。
「貴方たちも良いわね?」
「最高神官長の仰せのままに」
神官様たちは誰も反対することなく、最高神官長様に向かって一斉にこうべを垂れる。
命令するわけでもなく、それでも神官様たちが従う姿は圧巻の一言で、さすが最高神官長様と感動する。
最高神官長様ならマーブルの秘密を明かしても、助けてくれるかな?
その頼もしい姿にマーブルの入ったポシェットにそっと手を当てながら考えるけれど、私一人では答えを出すことはできなかった。
---
1/29 一部文章を訂正しました。
正:他の神官様も《同意権》のようでうんうんと頷いている。
誤:他の神官様も《同意見》のようでうんうんと頷いている。
誤:《貴女》のその顔を見れば丸わかりですよ
正:《貴方》のその顔を見れば丸わかりですよ
「彼らは最高神官長を守る神官騎士です。戦える神官とでも覚えておいてください」
神官様が彼らと話している間に興味津々で彼らを見つめていたら、フェ様が彼らの事を教えてくれた。
最高神官長様を守るだけでなく、巡回する神官様の護衛やアンデットが発生したときに神官様たちが浄化するまで戦ったりすることもあるんだって。とっても凄い人たちなんだなぁ。
神官騎士様の検問を受け、扉の奥に進む。
最奥部にある扉の前にも神官騎士様がいて、今までの教会にない厳重な守りにさすが教会本部だと感心する。先程と同じやり取りをした後、神官騎士様の一人が扉に向かって声をかける。
コンコン
「フェビラル神官長とクルル村のサラがお越しです」
「うむ。入りなさい」
扉を開くとそこは能力鑑定を受けた部屋に似た作りだった。赤い絨毯が一直線に敷かれた先に台ではなく大きな椅子があり、そこに一人の老婦人が座っていた。
白髪の長い髪を三つ編みで一つにまとめて、片側にたらしていた。真っ白な神官服には金の縁取りがされ、特別な神官服なのがわかった。
彼女の座っている場所や彼女の周りを数人の神官様が控えている様子から、彼女が最高神官長様なのがわかった。
紺の瞳が私とフェ様の姿をとらえると、ふと目元が優しく細められる。
「私が今代の最高神官長のルシアです。サラさんにお会いできて嬉しいわ。フェビラルはお久しぶりね」
「は、初めましてサラです」
「お久しぶりでございます」
フェ様と二人で最高神官長様にご挨拶する。優しそうな人で良かった。
「椅子に座ったままでごめんなさいね。もう年なものだから。本当はこんな謁見の間じゃなくて、応接間でみんなで座りながらお話ししてもいいんじゃないかと思うんだけど」
「規則ですので」
最高神官長様の言葉にすかさず釘を刺す神官様。他の神官様も同意見のようでうんうんと頷いている。
「もう!みんな頭が固すぎるわっ。フェビラルもそう思うわよね?」
頬を膨らませ神官様に文句を言う姿は少女のように可憐だった。
「相変わらずのようですね。お元気で安心しました」
フェ様はニコニコしながら最高神官長樣と神官様たちのやり取りを見ている。
「体はよぼよぼですけどね!さて、本題に入りましょうか。謁見理由はサラさんの事だとお聞きしてるけれど?」
「はい。新たな加護持ちが現れたことは既にご存じの事だと思いますが、その新たな加護持ちが彼女なのです」
「まあ!」
ざわっ!
フェ様の言葉に最高神官長様と神官様たちが驚いたようにざわめく。
「まあ!まあ!私も国王陛下との謁見の際に立ち会う予定ですから、少しは聞いていますけれど貴女がそうだったの。国王陛下ったら複数の精霊様のご加護持ちってことしか教えてくださらなかったのよ。余計な情報を入れずに貴女を見て欲しいと言われて」
「おや、陛下はそんなことを言ってましたか。では、陛下の意向を無視するかたちになってしまいましたね」
フェ様は最高神官長様の言葉に面白そうにニヤリと笑ってるけど、フェ様の言う通り、国王様に逆らってしまったことになるんだよね。
ど、どうしようっ⁉️
「おほほっ。どうせわかってて此方に来たのでしょう?貴方のその顔を見れば丸わかりですよ」
「はっはっは!最高神官長にはお見通しでしたか」
何故かワタワタしてるのは私だけで、二人は楽しそうに笑いあっている。
「まあでも、サラさんと直接会うのを禁止されたわけではありませんからね。国王陛下の意向を無視したことにはなりません。と言うことにしておきましょう」
最高神官長様はいたずらっぽく笑うとはっきりと言い切った。
「貴方たちも良いわね?」
「最高神官長の仰せのままに」
神官様たちは誰も反対することなく、最高神官長様に向かって一斉にこうべを垂れる。
命令するわけでもなく、それでも神官様たちが従う姿は圧巻の一言で、さすが最高神官長様と感動する。
最高神官長様ならマーブルの秘密を明かしても、助けてくれるかな?
その頼もしい姿にマーブルの入ったポシェットにそっと手を当てながら考えるけれど、私一人では答えを出すことはできなかった。
---
1/29 一部文章を訂正しました。
正:他の神官様も《同意権》のようでうんうんと頷いている。
誤:他の神官様も《同意見》のようでうんうんと頷いている。
誤:《貴女》のその顔を見れば丸わかりですよ
正:《貴方》のその顔を見れば丸わかりですよ
13
お気に入りに追加
4,597
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。