私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

122 荒ぶるマーブル

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「グルルッ」
「ガウッ」

二匹とも大人を背中に乗せれるほど大きく、私は二匹に見下ろされる形になる。
こんなに大きいとどこで寝泊まりするんだろう?
一緒の部屋では暮らせないよね?

考えている間に気づくと、手を伸ばせば触れるほどの至近距離まで二匹は近づいていて、私の周りをぐるぐると回りだす。

「サ、サラちゃん、じっとしてたら大丈夫だからね。普段は自分の主人にしか興味を持たないのに、どうしたんだろう?」

いつもとは違う行動を取る使い魔たちを見て、ヒューイ先輩は使い魔たちの主人を呼んできた方が良いか悩んでいるようで、私と扉を交互に見ている。
そんなヒューイ先輩を尻目に私は二匹をじっくりと観察する。
近くで見るとグリフォンの羽毛の部分はふかふかで、触ると気持ち良さそうだ。狼は毛並みが艶やかで、ぜひブラッシングをしてみたい。お願いしたら、触らせてくれるかな?

「に"っ」
「はっ!」

私の心を読んだのか、マーブルがとたんに不機嫌になる。
ポシェットの中から恨めしげにこちらをうかがっていて、これは相当にご機嫌斜めのようだ。

「違うの!いや、違わないかもだけど。マーブルが一番だから!」
「にー…」

でも、マーブルのご飯を持っているので、撫でることもできず焦っていると、突然、狼が私のポシェットの中に鼻を突っ込むとマーブルの匂いを嗅ぎ始める。
一瞬の事だったので、止める暇もなかった。

「キシャーッ!」

バリッ

「きゃんっ⁉️」
「キュピッ⁉️」
「ま、マーブルっ⁉️」

突然の暴挙に、ただでさえ機嫌の悪かったマーブルが威嚇と共に狼の鼻っ柱を思いっきり引っ掻く。
狼は前足で鼻を押さえて蹲っている。グリフォンは狼の様子を心配そうに見つめていた。

『あー。鼻を引っ掻く時に、風魔法で威力を倍増させたな。あれは痛いぞ』
 「マーブルったら、突然近づかれて驚いたのはわかるけど、狼さんに怪我させちゃダメでしょっ!」
「ふにっ!」
『姐さんにちょっかいかけたのが悪いってよ。あいつらは姐さんにってより、精霊王さんに興味があったみたいだけどな。さすがに獣には普通の猫じゃないのがわかったみたいだな』
「それだけじゃないでしょっ!私が二匹に興味を持ったのは悪かったけど、その度に相手に威嚇したり、怪我をさせるなんていけないことだよっ!ちゃんと謝りなさいっ!」
「にー…」
「もうっ!」

ふてくされたマーブルは放っておいて、狼の鼻の具合を見ようと近づくと、鼻を押さえていた狼がおもむろにお腹を見せて降参のポーズを取る。
その横でグリフォンも同じポーズを取っていた。

「きゅーん、きゅーんっ」
「キュイ、キュイっ」

すっごく可愛らしい声で、敵意がないことを見せる二匹たちの姿に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「ボクは夢でも見てるのかな?」

ヒューイ先輩はそんな二匹の姿に何度も目を擦って、見間違えじゃないか確認している。
このままここにいても、狼たちが可哀想なので、部屋を出ることにする。

「本当にごめんね。ほら、マーブルもっ」
「にゃん」
『ごめん、だってさ』

マーブルもさすがにやり過ぎたと思ったのか、二匹に鳴いて謝る。
狼に回復魔法をかけると、ひっくり返ったまま、不思議そうに鼻の頭を舐めていた。

「ヒューイ先輩、行きましょう」
「う、うん」

ヒューイ先輩を促し、部屋をあとにする。
ヒューイ先輩に狼の主人が誰か教えてもらったら、その相手にも謝らなくっちゃ。
マーブルがすぐに嫉妬しないように、何か良い手はないかなぁ。
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