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第2章 王都へ
121 食堂
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「もう夕食の時間だね。みんなで食堂に行こうか」
談話室にある時計はあと10分程で19時になるところだった。
もうそんな時間になってたんだ。
ヒューイ先輩の声に談話室にいた先輩方も椅子から立ち上がる。
「今は休みで生徒の数が少ないから、落ち着いて食べられるけど、みんなが帰ってきたらすごい混雑で空いている席を探すのも大変なんだ」
「みんな食べる時間をずらしたり、工夫しているのよ」
食堂には出掛けていた寮生が戻ってきていて、少ないながらも賑わっていた。
「あれ?新入生?」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「ははっ。元気だなぁ。よろしく」
食堂にいた先輩方に声をかけられながら、厨房に向かう。
「このトレーに食器をのせてから、列に並ぶんだ」
ヒューイ先輩がトレーにお皿やスプーン、フォークなどを置くのをお手本にして、私たちは全く同じようにトレーに食器を置いていく。
カウンターを進むと、料理人が厨房の中から、スープを手渡してくれる。それを受け取って進むと、今度は焼きたてのパンが篭に山盛りになって置いてあった。
「パンは自分が食べられるだけ取って良いんだ。お代わりできるから最初は1、2個で様子を見てみると良いよ。おかずも料理人に言えば量の調整をしてもらえるからね」
「「「「はいっ!」」」」
パンをお皿にとり、おかずをもらうためまた進む。
「おや、新入生だね?今晩のメニューはハムのステーキとマッシュポテトだよ。ハムのステーキは何枚食べるかい?」
私たちのリボンの色に気づいた料理人が詳しく教えてくれる。
ハムのステーキは分厚くて一枚でも十分な食べごたえがありそうだ。
「俺は2枚でお願いしますっ!」
「あたしは1枚で」
「わたしも」
「私もお願いします」
お皿を渡してハムとマッシュポテトをのせてもらう。
「あとはデザートをのせておしまいだよ」
デザートはアイスクリームだった。溶けてしまわないか心配だったけど、器に魔法がかかっていて、溶ける心配がないんだって。
でも、器を持っても少しひんやりするだけで、これで溶けないなんて不思議。
王立魔法学校の凄さを感じることのできる一幕だった。
「じゃあ、席につこうっか」
「学校が始まったら、席を取る人と先に食事を取ってくる人と別れて行動した方が良いわよ」
「「「「はい」」」」
ヒューイ先輩たちと同じ席につけたのは良いけれど、困ったことがひとつ。
「マーブルのご飯をどうしよう?」
ヒューイ先輩たちは使い魔を持っている様子はなく、誰に聞けば良いのかわからなかった。
マリアさんに聞いておけば良かったのに、すっかり忘れていた。
今晩はマーブルには申し訳ないけれど、私のご飯を分けるので我慢してもらうしかないかな?
「マーブルって?」
「この子です」「くぁー」
マーブルをポシェットから出して、ヒューイ先輩たちに見せる。
マーブルは今の今まで寝てたみたいで、大きくあくびをしている。
「うわぁーっ。猫だぁ!可愛いなぁ」
「使い魔にするつもりなのか?」
ヒューイ先輩はマーブルにメロメロのため、ジョン先輩から代わりに質問される。
「はい。この子のご飯の事をマリアさんに聞くのを忘れてて。どこでもらえるか、ご存じですか?」
学校にはちゃんとマーブルの事を申請しているので、ご飯も用意してもらえるはずなんだけど、どこで受けとれば良いのかな?
「使い魔専用の食事室があって、そこでご飯をもらうの。小型の使い魔なら一緒に食堂で食べても問題ないわよ」
「そうなんですか?」
「ええ。それにまだ使い魔にはなってないんでしょう?普通の子猫をあそこで食べさせるなんて、恐怖で縮こまっちゃうわよ」
そんなに危険なところなのか不安になっていると、マーブルを触ろうとして、猫パンチを受けたヒューイ先輩が満面の笑みで教えてくれる。
「狼とか虎とかの大型の肉食獣が食べる場所を確保するために作られた経緯があるから、基本は大型の使い魔の専用になってるんだ。ただ、ご飯はそこにもらいに行かないといけないけどね。おいで、連れていってあげるよ」
「ありがとうございますっ」
「にゃん」
アミーちゃんたちにはそのまま食べていてもらい、ヒューイ先輩と急いでマーブルのご飯をもらいに行く。
先程は気づかなかったけど、厨房の近くの壁に扉がひとつあり、どうやら扉の奥が使い魔専用の部屋のようだ。
「あれ、ゲオルドとファムがいる!リチャード先輩たちも戻ってきてたんだ」
部屋の中にはグリフォンと狼がいて、仲良く生肉を食べていた。
部屋のなかはとても広く、大型の動物がいても狭さを感じない。
部屋は厨房とも繋がっていて、こちらもカウンターからご飯を受けとる仕組みになっているようだ。
「あの?」
「あ、ごめんね。知っている先輩たちの使い魔がいたから。もし食堂で見かけたら紹介するね。五年生でとても頼れる人たちなんだ!」
ヒューイ先輩の目は輝いていて、その先輩たちをとても尊敬している事がうかがえた。
「おっ。噂の新入りだね!これからよろしくな」
「にゃん♪」
「マーブルです。これからよろしくお願いします」
マーブルのご飯を受けとりに、カウンターへ向かう。
ちゃんとマーブルの事は料理人にも連絡が言っていたようで、挨拶してくれた。
部屋を出ようとしたところで、ご飯を食べ終わった狼とグリフォンがマーブルに興味を示して、こちらにやって来た。
談話室にある時計はあと10分程で19時になるところだった。
もうそんな時間になってたんだ。
ヒューイ先輩の声に談話室にいた先輩方も椅子から立ち上がる。
「今は休みで生徒の数が少ないから、落ち着いて食べられるけど、みんなが帰ってきたらすごい混雑で空いている席を探すのも大変なんだ」
「みんな食べる時間をずらしたり、工夫しているのよ」
食堂には出掛けていた寮生が戻ってきていて、少ないながらも賑わっていた。
「あれ?新入生?」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「ははっ。元気だなぁ。よろしく」
食堂にいた先輩方に声をかけられながら、厨房に向かう。
「このトレーに食器をのせてから、列に並ぶんだ」
ヒューイ先輩がトレーにお皿やスプーン、フォークなどを置くのをお手本にして、私たちは全く同じようにトレーに食器を置いていく。
カウンターを進むと、料理人が厨房の中から、スープを手渡してくれる。それを受け取って進むと、今度は焼きたてのパンが篭に山盛りになって置いてあった。
「パンは自分が食べられるだけ取って良いんだ。お代わりできるから最初は1、2個で様子を見てみると良いよ。おかずも料理人に言えば量の調整をしてもらえるからね」
「「「「はいっ!」」」」
パンをお皿にとり、おかずをもらうためまた進む。
「おや、新入生だね?今晩のメニューはハムのステーキとマッシュポテトだよ。ハムのステーキは何枚食べるかい?」
私たちのリボンの色に気づいた料理人が詳しく教えてくれる。
ハムのステーキは分厚くて一枚でも十分な食べごたえがありそうだ。
「俺は2枚でお願いしますっ!」
「あたしは1枚で」
「わたしも」
「私もお願いします」
お皿を渡してハムとマッシュポテトをのせてもらう。
「あとはデザートをのせておしまいだよ」
デザートはアイスクリームだった。溶けてしまわないか心配だったけど、器に魔法がかかっていて、溶ける心配がないんだって。
でも、器を持っても少しひんやりするだけで、これで溶けないなんて不思議。
王立魔法学校の凄さを感じることのできる一幕だった。
「じゃあ、席につこうっか」
「学校が始まったら、席を取る人と先に食事を取ってくる人と別れて行動した方が良いわよ」
「「「「はい」」」」
ヒューイ先輩たちと同じ席につけたのは良いけれど、困ったことがひとつ。
「マーブルのご飯をどうしよう?」
ヒューイ先輩たちは使い魔を持っている様子はなく、誰に聞けば良いのかわからなかった。
マリアさんに聞いておけば良かったのに、すっかり忘れていた。
今晩はマーブルには申し訳ないけれど、私のご飯を分けるので我慢してもらうしかないかな?
「マーブルって?」
「この子です」「くぁー」
マーブルをポシェットから出して、ヒューイ先輩たちに見せる。
マーブルは今の今まで寝てたみたいで、大きくあくびをしている。
「うわぁーっ。猫だぁ!可愛いなぁ」
「使い魔にするつもりなのか?」
ヒューイ先輩はマーブルにメロメロのため、ジョン先輩から代わりに質問される。
「はい。この子のご飯の事をマリアさんに聞くのを忘れてて。どこでもらえるか、ご存じですか?」
学校にはちゃんとマーブルの事を申請しているので、ご飯も用意してもらえるはずなんだけど、どこで受けとれば良いのかな?
「使い魔専用の食事室があって、そこでご飯をもらうの。小型の使い魔なら一緒に食堂で食べても問題ないわよ」
「そうなんですか?」
「ええ。それにまだ使い魔にはなってないんでしょう?普通の子猫をあそこで食べさせるなんて、恐怖で縮こまっちゃうわよ」
そんなに危険なところなのか不安になっていると、マーブルを触ろうとして、猫パンチを受けたヒューイ先輩が満面の笑みで教えてくれる。
「狼とか虎とかの大型の肉食獣が食べる場所を確保するために作られた経緯があるから、基本は大型の使い魔の専用になってるんだ。ただ、ご飯はそこにもらいに行かないといけないけどね。おいで、連れていってあげるよ」
「ありがとうございますっ」
「にゃん」
アミーちゃんたちにはそのまま食べていてもらい、ヒューイ先輩と急いでマーブルのご飯をもらいに行く。
先程は気づかなかったけど、厨房の近くの壁に扉がひとつあり、どうやら扉の奥が使い魔専用の部屋のようだ。
「あれ、ゲオルドとファムがいる!リチャード先輩たちも戻ってきてたんだ」
部屋の中にはグリフォンと狼がいて、仲良く生肉を食べていた。
部屋のなかはとても広く、大型の動物がいても狭さを感じない。
部屋は厨房とも繋がっていて、こちらもカウンターからご飯を受けとる仕組みになっているようだ。
「あの?」
「あ、ごめんね。知っている先輩たちの使い魔がいたから。もし食堂で見かけたら紹介するね。五年生でとても頼れる人たちなんだ!」
ヒューイ先輩の目は輝いていて、その先輩たちをとても尊敬している事がうかがえた。
「おっ。噂の新入りだね!これからよろしくな」
「にゃん♪」
「マーブルです。これからよろしくお願いします」
マーブルのご飯を受けとりに、カウンターへ向かう。
ちゃんとマーブルの事は料理人にも連絡が言っていたようで、挨拶してくれた。
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