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第2章 王都へ
117 制服の御披露目
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部屋に入ってすぐにマーブルをポシェットから出す。
「ずっと、ポシェットの中でごめんねっ」
「ににゃん♪」
マーブルはポシェットの中からでると、ふんふんと臭いをかぎながら、部屋の探索をしている。
リードはリードで窓を覗いたり、クローゼットの中にはいったりとこれから暮らす部屋のチェックに余念がなく、『全員がいるには少し狭いな』と呟いていた。
「でも、一人部屋だとみんなと気軽にお話しできるから嬉しいな」
どうしても周りに人がいると精霊様に気軽に話しかけるのは難しいし、マーブルの事がばれたらと始終気にするのは疲れちゃうから、一人部屋なのはとてもありがたい。
『へへっ。そうか、嬉しいのか…』
何故か少しにやけた顔で、リードが何かを呟いたけど、先程よりも声が小さくて聞こえない。
一人には十分な広さがあるお部屋だけど、やっぱり精霊様たちには狭いのかな?
「少し窮屈かもしれないけど、我慢してくれる?」
『おうっ!よく考えたら俺たちは別に実体があるわけでもないしな!問題ないぜっ!』
恐る恐る聞くと、意外にも快諾してくれた。思ったより部屋の狭さは気にならなかったのかな?
「さて、荷物の整理をしなくちゃねっ!」
「にゃんっ」
荷物は必要最低限しか持ってきてなかったので、片付けはあっという間に終わってしまった。
マリアさんはまだ来る様子がなかったので、寮の規則を読むことにする。マーブルを膝の上に乗せて読んでいく。規則はご飯の時間や就寝時間、洗濯物をどこに持っていくかなど様々なことが書いてあった。
「ふぁー。規則がいっぱいだねぇ」
「にー」
コンコン
「はい」
「マリアです。制服を届けに来たわ。開けてもらえる?」
「はいっ」
マリアさんの言葉に慌てて扉を開けに行く。扉の外には制服を持ったマリアさんが立っていた。
「採寸をしてあるから、大丈夫だと思うけど、一度着てもらえるかしら?」
「はいっ」
受け取った制服はとても軽く、滑らかな触り心地だった。
少し光沢のある水色のワンピースと水色のケープがセットになっていて、ケープの左胸には魔法学校の校章が付いていた。
「あら、お母様手作りのお守り?」
制服を広げて見ていると、マリアさんに首から下げていたお守り袋を指摘される。
「あ、これは」
どうやら服を脱いだときに肌着の外に出てしまったらしいお守り袋を握りしめる。袋の中にはジークから預かっているイヤーカフが入っていた。落としたら大変なので、紐付きの袋をお母さんに作ってもらって、普段は肌着の中にしまっていたのだ。
「優しいお母様ね」
「は、はいっ」
お母さんが袋を作ったのは本当なので、取り合えず頷いておく。
肌着の中にそっとしまい直して、ワンピースを着る。オーダーメイドなだけあって、私の体型にぴったりあっていた。
「大丈夫そうね。その位置で一回転してくれる?」
マリアさんの前でくるりと回転してみると、スカートがふわりと舞い上がり、その様子を見たリードが何故か口笛を吹く。精霊様って口笛が吹けるんだ。妙なところで感心してしまう。
「さあ、このリボンをつけて、革靴に履き替えてちょうだい」
マリアさんの手には水色のリボンがあった。
「このリボンの色は学年によって変わるの。二年生は赤色で、三年生は青色、四年生は緑色で、最終学年の五年生は茶色のリボンよ。貴族科の生徒たちも色は一緒なんだけれど、リボンの縁が金色になっているの」
マリアさんからリボンを受け取り、自分で取り付ける。ケープを羽織って、革靴をはいたら完成だ。
いつもの古着と違って全て新品なせいか、何だかお姫様になったみたい。嬉しくなって、部屋にあった備え付けの姿見の前で、正面や後ろ姿を見てみる。
「替えの制服がもう一着ありますから、体操服と一緒にクローゼットにいれておくわね」
「あっ!は、はいっ」
マリアさんに声をかけられるまで、鏡に夢中になっていた。その事に気づいて、恥ずかしくなる。
「ふふ。よく似合ってるわよ」
「あ、ありがとうございます」
でも、マリアさんはそんな私に気づかない振りをしてくれて、優しく褒めてくれる。
えへへ、似合ってるって。
にやけないように必死で顔を引き締める。
いけない、いけない。今のうちに聞いておかないといけないことがあったんだった。
「あの。入学式の前に何度か町に用があるのですが、その都度外出届けは必要ですか?」
寮の規則には町に外出する際は、寮母さんに外出届けを出す必要があると書いてあった。今はまだ入学してないわけだから、その場合に町に行く時はどうなるんだろう?
これから王様との謁見や後見人手続きのために町に行かないといけないので、ちゃんと確認しないとね。
「その場合も外出届けは必要になります。外出届けの紙を持ってくるから、そこに必要事項を書いてもらえるかしら」
「はい。わかりました」
外出届けに王様との謁見のためって書いていいのかな?
フェ様がいない今、誰に聞けばよいかもわからず悩む。
「外出理由は本当の事を書いて大丈夫よ」
「え?」
私が何に悩んでいるのか、わかっている様なマリアさんに戸惑う。
そんな私に気づくことなく、マリアさんは世間話をするような気軽さでさらりと言った。
「加護持ちは色々と手続きがあって大変ね」
あれ?私ってマリアさんに加護持ちな事って言った?
「ずっと、ポシェットの中でごめんねっ」
「ににゃん♪」
マーブルはポシェットの中からでると、ふんふんと臭いをかぎながら、部屋の探索をしている。
リードはリードで窓を覗いたり、クローゼットの中にはいったりとこれから暮らす部屋のチェックに余念がなく、『全員がいるには少し狭いな』と呟いていた。
「でも、一人部屋だとみんなと気軽にお話しできるから嬉しいな」
どうしても周りに人がいると精霊様に気軽に話しかけるのは難しいし、マーブルの事がばれたらと始終気にするのは疲れちゃうから、一人部屋なのはとてもありがたい。
『へへっ。そうか、嬉しいのか…』
何故か少しにやけた顔で、リードが何かを呟いたけど、先程よりも声が小さくて聞こえない。
一人には十分な広さがあるお部屋だけど、やっぱり精霊様たちには狭いのかな?
「少し窮屈かもしれないけど、我慢してくれる?」
『おうっ!よく考えたら俺たちは別に実体があるわけでもないしな!問題ないぜっ!』
恐る恐る聞くと、意外にも快諾してくれた。思ったより部屋の狭さは気にならなかったのかな?
「さて、荷物の整理をしなくちゃねっ!」
「にゃんっ」
荷物は必要最低限しか持ってきてなかったので、片付けはあっという間に終わってしまった。
マリアさんはまだ来る様子がなかったので、寮の規則を読むことにする。マーブルを膝の上に乗せて読んでいく。規則はご飯の時間や就寝時間、洗濯物をどこに持っていくかなど様々なことが書いてあった。
「ふぁー。規則がいっぱいだねぇ」
「にー」
コンコン
「はい」
「マリアです。制服を届けに来たわ。開けてもらえる?」
「はいっ」
マリアさんの言葉に慌てて扉を開けに行く。扉の外には制服を持ったマリアさんが立っていた。
「採寸をしてあるから、大丈夫だと思うけど、一度着てもらえるかしら?」
「はいっ」
受け取った制服はとても軽く、滑らかな触り心地だった。
少し光沢のある水色のワンピースと水色のケープがセットになっていて、ケープの左胸には魔法学校の校章が付いていた。
「あら、お母様手作りのお守り?」
制服を広げて見ていると、マリアさんに首から下げていたお守り袋を指摘される。
「あ、これは」
どうやら服を脱いだときに肌着の外に出てしまったらしいお守り袋を握りしめる。袋の中にはジークから預かっているイヤーカフが入っていた。落としたら大変なので、紐付きの袋をお母さんに作ってもらって、普段は肌着の中にしまっていたのだ。
「優しいお母様ね」
「は、はいっ」
お母さんが袋を作ったのは本当なので、取り合えず頷いておく。
肌着の中にそっとしまい直して、ワンピースを着る。オーダーメイドなだけあって、私の体型にぴったりあっていた。
「大丈夫そうね。その位置で一回転してくれる?」
マリアさんの前でくるりと回転してみると、スカートがふわりと舞い上がり、その様子を見たリードが何故か口笛を吹く。精霊様って口笛が吹けるんだ。妙なところで感心してしまう。
「さあ、このリボンをつけて、革靴に履き替えてちょうだい」
マリアさんの手には水色のリボンがあった。
「このリボンの色は学年によって変わるの。二年生は赤色で、三年生は青色、四年生は緑色で、最終学年の五年生は茶色のリボンよ。貴族科の生徒たちも色は一緒なんだけれど、リボンの縁が金色になっているの」
マリアさんからリボンを受け取り、自分で取り付ける。ケープを羽織って、革靴をはいたら完成だ。
いつもの古着と違って全て新品なせいか、何だかお姫様になったみたい。嬉しくなって、部屋にあった備え付けの姿見の前で、正面や後ろ姿を見てみる。
「替えの制服がもう一着ありますから、体操服と一緒にクローゼットにいれておくわね」
「あっ!は、はいっ」
マリアさんに声をかけられるまで、鏡に夢中になっていた。その事に気づいて、恥ずかしくなる。
「ふふ。よく似合ってるわよ」
「あ、ありがとうございます」
でも、マリアさんはそんな私に気づかない振りをしてくれて、優しく褒めてくれる。
えへへ、似合ってるって。
にやけないように必死で顔を引き締める。
いけない、いけない。今のうちに聞いておかないといけないことがあったんだった。
「あの。入学式の前に何度か町に用があるのですが、その都度外出届けは必要ですか?」
寮の規則には町に外出する際は、寮母さんに外出届けを出す必要があると書いてあった。今はまだ入学してないわけだから、その場合に町に行く時はどうなるんだろう?
これから王様との謁見や後見人手続きのために町に行かないといけないので、ちゃんと確認しないとね。
「その場合も外出届けは必要になります。外出届けの紙を持ってくるから、そこに必要事項を書いてもらえるかしら」
「はい。わかりました」
外出届けに王様との謁見のためって書いていいのかな?
フェ様がいない今、誰に聞けばよいかもわからず悩む。
「外出理由は本当の事を書いて大丈夫よ」
「え?」
私が何に悩んでいるのか、わかっている様なマリアさんに戸惑う。
そんな私に気づくことなく、マリアさんは世間話をするような気軽さでさらりと言った。
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