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第2章 王都へ
113 別れ
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「フェビラル様っ」
「げっ。サージではないかっ!」
「その言い方はなんですかっ!神官長にあるまじき発言ですぞっ!」
お城のお使いの人はフェ様よりも、うんと年上の小さいお爺ちゃんだった。
背はもしかしたら私と同じ位かも。
お爺ちゃんの周りを兵士が取り囲み、フェ様を叱っている姿を黙って見守っている。
村長さんと同じぐらいの年齢かな?
フェ様とお爺ちゃんのやり取りを見つめていると、いつの間にか側にいたアランさんから声をかけられる。
「なあ、サラちゃん」
「はい?」
「さっきから気になってたんだけど、謁見って何?今までの教会の対応と言い、お城から使いが来ることといい、神官長様って何者なのかな?」
「えっと。それは…」
何者もなにも、元王族です。
でも、それを知っているの私だけで、なぜ知っているのかと聞かれると、色々と困るわけで…。
「それにたまに神官長様ってサラちゃんのこと様付けで呼ぶよね?」
「そ、そうでしたか?」
「サラちゃんって、もしかして貴族、とか?」
「まさかっ!」
見当違いの発言に、慌てて首を振る。
「そうだよね。ごめん。俺の聞き間違いだったかな」
「い、いえ」
アランさんは照れ臭そうにそう言うと、聞くのをやめてくれた。
ほっとすると同時に、黙っていることに罪悪感を覚える。
能力鑑定を受けてから、人に言えないことが増えすぎて辛い。
でも、あともう少しで加護の事は公表できるわけだから、その時にはアランさんたちに内緒にしていたことを謝ろう。
それまでは、ごめんなさい!
「サージ、説教はそのぐらいにしてくれ」
「フェビラル様を叱る人が全くおらんから、儂が仕方なく叱っているのですぞっ!」
「わかった、わかったっ。アラン、校長宛の手紙と依頼の完了証明書を渡しておく。君たちの仕事は子供たちを学校にまで連れていく事で完了となる。一週間ご苦労だったね」
「「「ありがとうございます!」」」
アランさんはフェ様からの労いの言葉にお礼を言うと、手紙と完了書を受けとる。
フェ様の横では話を中断されたお爺ちゃんがこちらを気にした様子で、フェ様の話ががすむのを待っていた。
「では、城に向かうとするか」
「は?いやっ、まだ子供たちを紹介してもらっておりませんぞっ!」
「さあ、さっさっと行くぞっ」
「さっさとは何ですか、さっさとは!」
フェ様はそのままお爺ちゃんと馬車に乗り込み停留所から出ていく。
自己紹介をせずに行ってしまったのは、私のことを考えてだろう。
お城の人なら、私が加護持ちだって既に知っててもおかしくないもんね。
「じゃあ、俺達も出発するか」
「あ。その前にロンさんとフェリシアにお別れの挨拶をして来て良いですか?」
今度こそ本当にお別れだから、学校に行く前に挨拶しておきたかった。
「俺も一緒に行く!」
「わたしも!」
「キャシーはフェリシアに迷惑かけたんだから、しっかり謝っておきなさいよ」
「め、迷惑なんてかけてないもん!」
「最初の3日間ぐらいはよく悲鳴をあげてたじゃない。うるさくして、ごめんなさいって謝っておくのよ」
「うっ」
「返事は?」
「はーい」
「あはは。そうだね、俺達もロンさんたちに挨拶してから出発しようか?」
「そうね。盗賊団の時はお世話になったし、そのときもお礼は言ったけれど、改めて挨拶しないとね」
「ん」
ロンさんはフェリシアに水を与えているところだった。
「ロンさんっ!」
「アランか。もう行くのか?」
「ああ。でも、その前にみんなが挨拶をしたいらしくてね」
「挨拶?」
アランさんに促され、みんなでワクワクしながら、ロンさんとフェリシアの前にたつと、一斉にお礼を言う。
「「「「ありがとうございました」」」」
「みんながロンさんとフェリシアにお礼を言いたいって」
「わざわざ、俺たちにか?」
「えっと。最初の数日間、悲鳴ばっかりあげじゃって、ごめんなさい。フェリシアもうるさかったよね?」
「あの位、可愛いもんさっ!もっとすごい悲鳴をあげるご婦人はたくさんいるぜ。なぁ、フェリシア?」
「くるっ」
「そうなんだ」
自分だけではないと知って、キャシーちゃんは明るい表情になる。
ロンさんたちはフェリシアを休ませたあと、お城の中にある竜舎に戻るんだって。
「お前たちは竜に怯えることもなかったから、俺もフェリシアも一緒に旅できて楽しかったよ。またいつか一緒に旅ができると良いな」
「「「「はいっ!」」」」
ロンさんとフェリシアに別れを告げ、私たちはいよいよ学校に向かうことになった。
--
2022/2/5 一部文章を訂正しました
誤:検討違いの発言に、慌てて首を振る。
正:見当違いの発言に、慌てて首を振る。
「げっ。サージではないかっ!」
「その言い方はなんですかっ!神官長にあるまじき発言ですぞっ!」
お城のお使いの人はフェ様よりも、うんと年上の小さいお爺ちゃんだった。
背はもしかしたら私と同じ位かも。
お爺ちゃんの周りを兵士が取り囲み、フェ様を叱っている姿を黙って見守っている。
村長さんと同じぐらいの年齢かな?
フェ様とお爺ちゃんのやり取りを見つめていると、いつの間にか側にいたアランさんから声をかけられる。
「なあ、サラちゃん」
「はい?」
「さっきから気になってたんだけど、謁見って何?今までの教会の対応と言い、お城から使いが来ることといい、神官長様って何者なのかな?」
「えっと。それは…」
何者もなにも、元王族です。
でも、それを知っているの私だけで、なぜ知っているのかと聞かれると、色々と困るわけで…。
「それにたまに神官長様ってサラちゃんのこと様付けで呼ぶよね?」
「そ、そうでしたか?」
「サラちゃんって、もしかして貴族、とか?」
「まさかっ!」
見当違いの発言に、慌てて首を振る。
「そうだよね。ごめん。俺の聞き間違いだったかな」
「い、いえ」
アランさんは照れ臭そうにそう言うと、聞くのをやめてくれた。
ほっとすると同時に、黙っていることに罪悪感を覚える。
能力鑑定を受けてから、人に言えないことが増えすぎて辛い。
でも、あともう少しで加護の事は公表できるわけだから、その時にはアランさんたちに内緒にしていたことを謝ろう。
それまでは、ごめんなさい!
「サージ、説教はそのぐらいにしてくれ」
「フェビラル様を叱る人が全くおらんから、儂が仕方なく叱っているのですぞっ!」
「わかった、わかったっ。アラン、校長宛の手紙と依頼の完了証明書を渡しておく。君たちの仕事は子供たちを学校にまで連れていく事で完了となる。一週間ご苦労だったね」
「「「ありがとうございます!」」」
アランさんはフェ様からの労いの言葉にお礼を言うと、手紙と完了書を受けとる。
フェ様の横では話を中断されたお爺ちゃんがこちらを気にした様子で、フェ様の話ががすむのを待っていた。
「では、城に向かうとするか」
「は?いやっ、まだ子供たちを紹介してもらっておりませんぞっ!」
「さあ、さっさっと行くぞっ」
「さっさとは何ですか、さっさとは!」
フェ様はそのままお爺ちゃんと馬車に乗り込み停留所から出ていく。
自己紹介をせずに行ってしまったのは、私のことを考えてだろう。
お城の人なら、私が加護持ちだって既に知っててもおかしくないもんね。
「じゃあ、俺達も出発するか」
「あ。その前にロンさんとフェリシアにお別れの挨拶をして来て良いですか?」
今度こそ本当にお別れだから、学校に行く前に挨拶しておきたかった。
「俺も一緒に行く!」
「わたしも!」
「キャシーはフェリシアに迷惑かけたんだから、しっかり謝っておきなさいよ」
「め、迷惑なんてかけてないもん!」
「最初の3日間ぐらいはよく悲鳴をあげてたじゃない。うるさくして、ごめんなさいって謝っておくのよ」
「うっ」
「返事は?」
「はーい」
「あはは。そうだね、俺達もロンさんたちに挨拶してから出発しようか?」
「そうね。盗賊団の時はお世話になったし、そのときもお礼は言ったけれど、改めて挨拶しないとね」
「ん」
ロンさんはフェリシアに水を与えているところだった。
「ロンさんっ!」
「アランか。もう行くのか?」
「ああ。でも、その前にみんなが挨拶をしたいらしくてね」
「挨拶?」
アランさんに促され、みんなでワクワクしながら、ロンさんとフェリシアの前にたつと、一斉にお礼を言う。
「「「「ありがとうございました」」」」
「みんながロンさんとフェリシアにお礼を言いたいって」
「わざわざ、俺たちにか?」
「えっと。最初の数日間、悲鳴ばっかりあげじゃって、ごめんなさい。フェリシアもうるさかったよね?」
「あの位、可愛いもんさっ!もっとすごい悲鳴をあげるご婦人はたくさんいるぜ。なぁ、フェリシア?」
「くるっ」
「そうなんだ」
自分だけではないと知って、キャシーちゃんは明るい表情になる。
ロンさんたちはフェリシアを休ませたあと、お城の中にある竜舎に戻るんだって。
「お前たちは竜に怯えることもなかったから、俺もフェリシアも一緒に旅できて楽しかったよ。またいつか一緒に旅ができると良いな」
「「「「はいっ!」」」」
ロンさんとフェリシアに別れを告げ、私たちはいよいよ学校に向かうことになった。
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2022/2/5 一部文章を訂正しました
誤:検討違いの発言に、慌てて首を振る。
正:見当違いの発言に、慌てて首を振る。
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