私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

98 盗賊団⑪

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トントントン

「はい」
「アランです。目的地に近づいたので、サラちゃんを連れていきたいのですが」
「わかった」

フェ様がアランさんと話している間にアミーちゃんたちから真剣な表情で注意を受ける。

「サラちゃん、無理しちゃダメだからねっ!」
「ちゃんとアランさん・・・はダメね。シーラさんたちの言うことを聞くのよ!」
「気を付けてな」
「う、うん。わかった!」

キャシーちゃんが何気にアランさんに対して酷い。
話が聞こえたのか、扉の外にいるアランさんの顔がひきつっている。

「行ってらっしゃい」
「はいっ。行ってきます!」

最後にフェ様から声をかけられ、そのまま竜籠から外に出る。
もちろん、マーブルとリードも一緒だ。
リードは竜籠にいるときより、外にいる方が楽しいみたいで、ご機嫌でついてくる。
マーブルは色々あったからか、疲れてポシェットの中で熟睡していた。
先程のロンさんのいる位置まで向かうと、シーラさんたちも既に集まっていて何故か驚愕の顔で下を見ている。何かあったのかな?

「二人ともどうした?」
「あっ、二人とも来たのね」

シーラさんが下を覗くのをやめて、こちらを振り向く。
マーヴェイさんは相変わらず下を見たままだ。
気になって、私も一緒に下を覗くと既に到着したようで、先程私が作った土の囲いと、すぐそばにハンクさんたちの姿が見える。でも、それ以外は特に気になるものはない。
何に驚いていたのかな?
不思議に思って、首をかしげていると、シーラさんが恐る恐る私に声をかけてきた。

「ねえサラちゃん、いつの間に屋根なんて作ってたの?」
「屋根ですか?盗賊の皆さんがフェリシアに怯えて可哀想だったので、屋根を取り付けてあげたんです!そうしたらフェリシアの姿も見えなくて怖くないでしょう?」
「そ、そうなのね」
「あっ!私、盗賊の皆さんに回復魔法を使ってしまいました!今解除したらハンクさんたちが危ないですっ」
 
ハンクさんたちは二手に別れていて、七人が首領を含む二十人の捕縛済みの盗賊たちの監視として先程の地点で待機していて、今ここに来ているのはハンクさんを含む八人だけなのだ。
捕まえた盗賊たちは十人いるわけだから、このまま囲いを解除したら、ハンクさんたちに襲いかかる可能性があるかも!
慌てているのは何故か私一人で、他の三人は慌てた様子がない。

「きっと、大丈夫だよ。多分そんな元気もないんじゃないかな?」
「え?」
「あ!ごめん。何でもないよっ。確かに心配だね!例えば屋根だけ先に解除する事ってできるかな?」
「できますけど」

そんな元気もないって、どう言うことか気になったけど、あまりみんなを待たせるわけにはいかないので、とりあえず魔法を解除することにした。

「解除」

アランさんの指示通り、屋根の部分だけ解除すると、囲いの中の様子がはっきりと見える。
彼らは馬と人とできれいに別れて囲いの中にいた。
盗賊たちは屋根を取り除いたのに、集団で隅に座り込んで、ピクリともしない。
どうしたんだろう?

「やっぱりな」
「ええ。これならアランが下に降りて手伝う必要もないんじゃないかしら?」

うつ向いているので、盗賊たちの表情を見ることができないのに、アランさんたちは何かを察したらしい。
そのうち盗賊たちも屋根が取り除かれたことに気づいたみたいで、眩しそうに空を見上げて、「光だっ!」と喜んだ後、一斉に悲鳴をあげる。

「り、竜だっ!やつらが戻ってきたんだ!」
「「「ヒイイイイィッ!」」」
「お、俺たちはもう盗賊をやめる!だから、もう許してくれっ!」
「もう暗闇は嫌だ~っ!」
「「おがあちゃーんっ!」」
「暗闇怖いっ!暗闇怖いっ!」


突然の盗賊たちの叫び声に驚いて、後ずさるハンクさんたち。
一緒の囲いの中にいた馬たちも盗賊たちの声に戸惑っているみたいで、しきりに足で地面を蹴っている。
盗賊たちはこちらを見上げて必死に命乞いをしている。
想像したのとは違った光景に唖然としていると、アランさんに優しく肩を叩かれる。

「アランさん?」
「あのね、屋根を取り付けたことであの囲いの中は光の差さない暗闇になっていたんだ。人は暗闇に恐怖を感じる生き物だから、よっぽど怖かったんじゃないかな?」

確かに盗賊たちの何人かは「暗いのは嫌だ~っ!」と、言い続けている。
と言うことはつまり。

「ど、どうしようっ!私、酷いことをしちゃったっ」
 「いや、すごく良い方法だと思うよ。もうこの盗賊たちは俺たちには決して逆らわないだろうし」
「最初はすごいことするなぁと思ったけど、確かに有効な手よね。マーヴェイも頑張って覚えて、実践に使いましょうよ!」
「ん」
 
意外にも三人には好評なようだ。
でも、違う!私はそんな恐ろしいことを考えてしたわけじゃない!

「ち、違うんですっ!フェリシアのことを怖がってたから姿が見えないようにしてあげようとしただけなの!」
「うん。さっき聞いたから、大丈夫だよ。」
「あ、そうよね。サラちゃんはそんなつもりじゃなかったのよね」

アランさんたちに必死で理由を説明すると、わかってると優しく頷いてくれるけど、違う意味に感じるのは何故だろう。

『まあ、無自覚で一番効果的な方法を考えつくって、ある意味才能だよなっ』

リードが余計な一言を言ってくる。

(最初に土の壁を作ればいいって教えてくれたのはリードじゃない!)

『だけど、俺は屋根をつけろなんて言ってないぜ』
「うっ」

確かにリードの言う通りなので、これ以上はなにも言えない。

『まぁ、でも俺が想像する以上に面白いことになりそうだったから、黙ってはいたけど』

そう言えば屋根をつけた時、リードは変な褒め方してたっ!
あのときに気づいていたらと、後悔してももう遅い。

「じゃあサラちゃん、土の壁も解除してもらって良いかな?」
「はい…」

言い訳する気も失せ、私は言われるがまま土の壁も解除するのだった。
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